坂の上社労士事務所

2021年8月20日4 分

職場内で濃厚接触者と推定される従業員の勤務をどう判断するか

最終更新: 2021年8月21日

新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。コロナ感染者については都道府県知事による就業制限が課されますが、濃厚接触者の場合はどのような判断をすれば良いか迷うケースが多々あります。今回は、濃厚接触者の就業制限について、当事務所の考え方を解説します(あくまでも考え方であり、実際は各企業様がご判断下さい)。

1.就業制限・自宅待機期間の原則

①感染者

⑴症状あり

発症日から10日間(症状が悪化した場合は、期間を延長。症状悪化とは、熱が出る、以前の症状とは別の症状が出始めた、など)

⑵症状なし

検査日から10日間(症状が出始めた場合は、期間を延長)

※各自治体、各保健所で判断が若干異なる場合があります。

②濃厚接触者

感染者との最終接触日から14日間

2.就業制限の法的根拠・拘束力

①感染者

感染症法に基づいて都道府県知事が就業制限や入院勧告を行うことになります。この場合、会社は当該従業員に就労を命じることができなくなります。つまり、実質的に、就業が制限されることになり、法的な拘束力を伴うことになります。

②濃厚接触者

感染症法の適用外となりますので、あくまでも就業制限の協力依頼にとどまります。法的な拘束力はありません。

3.保健所による濃厚接触者の特定

以前は、保健所が濃厚接触者を特定し、自宅待機等の指示(実際は法的拘束力がないのでお願いベースにはなります)を行っていました。現在は、保健所が濃厚接触者を調査・特定するようなことは行っておらず、同居の家族についてのみ指示を出しています。よって、同居の家族以外の濃厚接触者をどのように扱うかは、各企業の判断となります。

4.就業させるか否かの判断

①同居の家族

同居の家族については、普段、マスクをせずにリビングなどの共有部分で会話や食事などをしていることから、感染の可能性が高い濃厚接触者と位置付けられます。従業員の配偶者、父母、子などが新型コロナ感染と判定された場合は、直ちに原則のルールに則り自宅待機とすべきでしょう。念の為、PCR検査も実施し、陽性か陰性かの判定も行うべきです。

②同僚

同じ社内の従業員で感染者が発生した場合、従業員同士であれば、普段マスクや消毒等をしながら接することが多いということと、家族などに比べて接触の機会が少ない為、同居の家族よりも感染の可能性が低い濃厚接触者と位置付けられます。

⑴PCR検査による判断

PCR検査を実施し、陽性か陰性かで就業させるか否かの判断を行います。

⑵症状による判断

現在の感染はデルタ株が主流です。感染力の強いデルタ株の特徴は、発症から2、3日後にほぼ確実に症状が出るということです。つまり、感染者との最終接触日から2、3日経過しており、かつ、症状が無ければ、感染の可能性が極めて低いと判断できます。その場合は、会社の経営状況や運営体制にもよりますが、仮に就業させたとしてもその判断に瑕疵はないものと考えます。ただし、症状を定期的に確認し、健康観察を怠ることのないようにしましょう。

☛ご参考

濃厚接触者の定義(国立感染症研究所)

・同居あるいは長時間の接触(車内・航空機内等を含む)

・適切な感染防護なしに新型コロナウイルス感染症患者を診察、看護もしくは介護した

・患者の痰や体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い

・手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、陽性者と15分以上の接触があった者(周囲の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断されます)

※ただし、これはあくまでも基準を示したものですので、個別の状況や程度(会話時の声の大きさ、会話の頻度、会話していた時の立ち位置(対面など)、会話時の空間(密閉されていたか)等)を考慮することになります。

☛ご参考

従業員を休業させた場合の給付金・助成金のまとめ

⑴従業員が感染者の場合

業務外での発症⇒社会保険の傷病手当金

業務上での発症⇒労災保険の休業補償給付

⑵従業員が濃厚接触者の場合

本人が就業できる状態であり、かつ、休業手当を支払った場合⇒雇用調整助成金

本人が就業できない状態⇒社会保険の傷病手当金(業務上であれば労災保険の休業補償給付)