top of page

【社労士前田が斬る】高支持率の高市早苗首相は本当に名宰相か?女性初の総理が女性支持を得られない?全世帯の半数以上が生活「苦しい」と回答、特に母子世帯で顕著~厚労省「国民生活基礎調査」から読み解く3つの視点と実務戦略~

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 7月16日
  • 読了時間: 9分
高市早苗首相

日本初の女性総理大臣として高い内閣支持率を維持する高市早苗政権。一部では「名宰相」と持ち上げる声すら聞こえるが、国民の足元の暮らしを直視したとき、その呼び名はあまりにも残酷な皮肉として響く。厚生労働省が取りまとめた「2025年(令和7年)国民生活基礎調査」の結果は、1世帯当たりの平均所得金額が575万2000円(対前年増減率7.3%増)と過去最高の伸びを記録したとする一方で、全世帯の55.4%が生活を「苦しい」(「大変苦しい」「やや苦しい」の合計)と回答する異常な乖離を浮き彫りにした。  

なかでも深刻なのが、子どもがいる世帯で61.5%、母子世帯に至っては82.1%という圧倒的な割合が「苦しい」と悲鳴を上げている事実である。世帯構造の推移をみても、児童のいる世帯は全世帯の16.7%(917万4000世帯)と減少傾向にあり、そのうち子どもが1人だけの世帯が50.1%と初めて半数を超えた。  

賃上げの波が報じられる中で、なぜ国民の過半数、とりわけ子育て世代やシングルマザーがこれほどの生活難に喘いでいるのか。女性や生活者をこれほどの困窮に放置したまま、彼女は本当に「名宰相」と呼べるのだろうか。本稿では、社会保険労務士の専門的な知見から、統計結果を「3つの視点」で分析し、企業が採るべき実務上の対策や今後の展望を詳解する。


マクロ所得上昇と「名宰相」の虚像

調査結果が示す数字の構造的矛盾を整理すると、政治の無策が浮き彫りになる。平均所得金額575万2000円という数字は、経済が好循環に向かっているように錯覚させる。しかし、所得を低い順に並べた中央値は451万円にとどまり、平均所得を下回る世帯は61.5%に達している。一部の高所得者が平均値を大きく押し上げているだけで、過半数の実態は極めて厳しい。  

さらに、生活意識の年次推移をみると、「苦しい」とする割合は前回調査の51.3%から4.1ポイントも上昇した。児童のいる世帯における母親の「仕事あり」の割合は81.2%と過去最高を更新したものの、母親の8割以上が働いているにもかかわらず母子世帯の8割超が苦しむ現状は、労働と報酬のバランスが完全に崩壊していることを示している。この構造的貧困を前にしての「高支持率」とは、いったい誰のためのものなのだろうか。  


社労士が読み解く「3つの視点」と制度の課題

1.実質賃金の壁と「母子世帯82.1%苦しい」が示す女性活躍の欺瞞

「初の女性総理」として女性の期待を集める高市政権だが、現実の労働市場における女性の待遇は過酷である。全体の相対的貧困率が15.0%であるのに対し、「子どもがいる現役世帯で大人が1人」の世帯員における貧困率は44.7%と極めて高い水準で高止まりしている。  

母親が働いていても貧困から抜け出せないワーキングプア状態が生じる最大の理由は、非正規雇用としての就労割合の高さである。母親の就業状況(仕事あり81.2%)の内訳をみると、正規の職員・従業員は34.7%であるのに対し、非正規の職員・従業員は35.8%と非正規が上回っている。非正規雇用における時間給の引き上げは進んでいるものの、物価高騰のスピードには到底追いついていない。「女性活躍」を声高に叫びながら、母子世帯の82.1%が生活苦に陥る現状を放置して、「名宰相」を気取るのは滑稽でさえある。働いても自立できない構造を放置する政権に、真の女性支援は存在するのだろうか。  

2.円安の野放しが物価高を加速させ、国民から奪われた「生活のゆとり」

世帯の生活を極限まで圧迫している最大の要因は、政府の無策とも言える「極端な円安の野放し」と、それがもたらす物価高の加速である。一部の大企業が過去最高の利益を上げる裏側で、輸入に依存する食料品やエネルギー価格は跳ね上がり、国民から「生活のゆとり」が残酷なまでに奪われている。

その実態は、民間調査(ミクステンド調べ)にも顕著に表れている。2026年の夏休みに海外旅行を予定している人はわずか8.7%にとどまり、その断念理由のトップは「円安で割高に感じる」(35.2%)、「旅行先の物価が高い」(35.2%)であった。さらに、45.9%が「はじめから国内旅行・帰省・近場の外出」を選び、41.2%に至っては「いずれも検討していない」と回答している。外出先でのファストパス利用すら「利用しない」(26.8%)や「500〜1000円未満」(25.8%)に留まるほど、家計の防衛本能は限界に達している。

国民からささやかな余暇の楽しみすら奪い、日々の生存だけで手一杯にさせているこの経済状況を生み出したトップを、「名宰相」と呼ぶのは強烈な皮肉でしかない。

3.単身35.4%・高齢者31.9%時代における企業労務と社会保障の破綻

世帯構造の崩壊も国家の屋台骨を揺るがしている。単独世帯が全世帯の35.4%、高齢者世帯が31.9%に達し、ともに過去最高を更新した。高齢者世帯の所得構成では「公的年金・恩給」が61.3%を占め、年金収入のみの世帯も41.3%に上る。社会保障給付費の際限ない膨張は現役世代の負担を重くし、労働者は物価高と社会保険料負担の板挟みとなっている。  

さらに、企業労務においては「介護離職」が死活問題である。要介護者等の主な介護者が「同居」している割合は46.1%に上り、その介護時間について「ほとんど終日」と答えた割合が15.8%を占める。同居の終日介護者の64.6%は配偶者、28.9%は子どもが担っており、中核社員が親の介護で離職するリスクが急増している。こうした事態に対し、抜本的な対策を打てないまま高支持率に胡座をかいているとすれば、名宰相という評価は後世の歴史家によって冷酷に覆されるだろう。  


これからの労務戦略

一部の支持者が「名宰相」という虚像に酔いしれ、政府が有効な手立てを打たない間にも、企業は自ら従業員を守るための自衛策を講じなければならない。以下に実務上のアクションプランを提示する。

1. 手取り額向上に直結する「手当・賃金制度の抜本的再設計」

インフレによって従業員の実質賃金が目減りする中、単純な基本給の引き上げだけに頼らない戦略的な報酬設計が求められる。

  • 属人的手当から役割・生産性給へのシフト

    単独世帯が35.4%を占める時代において、配偶者や子どもの有無によって支給額が左右される属人的な家族手当は不公平感を生みやすい。家族手当を段階的に廃止・縮小し、その原資を全従業員を対象とした職務手当や生産性向上に伴う業績連動賞与へと再配分する実務手続きを進めるべきである。  

  • 非課税・社会保険料算定外の福利厚生の戦略的活用

    税務・労務上の規定を遵守した上での福利厚生制度を活用する。一定の要件を満たす食事補助制度や、確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)などの制度の導入は、社会保険料や所得税の算定基礎から除外できる場合があり、従業員の実質的な可処分所得を向上させる。

2. インフレ対策と非正規雇用の戦力化

物価高への即効性のある対策と、厳しい生活を強いられているパートタイム労働者への支援が企業の持続力に直結する。

  • インフレ手当の支給

    ガソリン代や電気代の高騰に対する防衛策として、一時金や特別手当(インフレ手当)の支給を検討する。これにより、企業が従業員の生活に寄り添う姿勢を明確にし、離職を防止する。

  • 短時間正社員制度の導入

    育児や介護でフルタイム勤務が難しい労働者(母子世帯の母親など)に対して、勤務時間を限定した「短時間正社員制度」を積極的に整備・導入する。時間当たりの処遇を正社員と同等にしつつ柔軟な働き方を認めることで、意欲ある非正規労働者を中核戦力へと引き上げる。

3. 子育て・介護・単身者を包摂する「セーフティネットの構築」

  • 「介護離職ゼロ」を目指す両立支援窓口の設置

    従業員が一人で悩みを抱え込んで退職してしまうケースを防ぐため、社労士等と連携した「介護相談窓口」を設置する。介護休業の仕組みだけでなく、地域包括支援センターの活用方法などをアドバイスし、「仕事を辞めずに社会サービスに頼る」環境を作ることが実務上の要である。

  • 単身世帯へのメンタルヘルス対策

    一人暮らし世帯の急増に伴い、孤立感からメンタル不調に陥る従業員が増えている。EAP(従業員支援プログラム)の導入や、定期的な面談(1on1)による孤立防止など、健康経営の視点を労務管理に組み込むことが極めて重要である。


今後の見通しと、高市早苗首相の「名宰相」という虚像への審判

2025年の国民生活基礎調査は、我が国が直面する構造的な貧困を如実に示した。55.4%の世帯、そして82.1%の母子世帯が「生活が苦しい」と悲鳴を上げる現実の前では、平均所得金額の過去最高の伸びなど無意味に等しい。  

高市早苗首相が高い内閣支持率を維持し、「初の女性総理」としてもてはやされる状況は、生活者の視点から見れば空虚な皮肉である。極端な円安を野放しにし、物価高で国民からささやかな旅行のゆとりすら奪い、過酷な労働環境に女性を据え置いたまま、本当に彼女を「名宰相」と呼べるのだろうか。その答えは、疲弊した国民の生活実態を見れば明らかである。真の構造改革を成し遂げない限り、その称号は後世の笑い話にしかならない。

企業にとっても、国の施策を待つ猶予はない。従業員の暮らしの厳しさを深く理解し、手取りとモチベーションを高める報酬制度を構築し、育児・介護と仕事を無理なく両立できる柔軟な労務環境を整えること。これらを進める企業こそが、次世代を生き抜く強靭な組織となる。専門家たる社会保険労務士と伴走しながら、自社の労務戦略を今すぐ見直すことこそが、課題解決への第一歩である。


2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)


全世帯の半数以上が生活「苦しい」と回答 特に母子世帯で顕著 ~厚労省調査~(日テレNEWS NNN)


【本件に関する実務相談・お問い合わせ】

今回の記事に関連する実務のご相談や顧問契約のお問い合わせなど、当事務所までお気軽にご相談ください。メディア関係者様からの解説依頼、取材も随時承っております。


坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応)

マネーフォワード公認プラチナメンバー/マネーフォワード給与・勤怠

代表 特定社会保険労務士 前田力也

水道橋オフィス 東京都千代田区神田三崎町2-17-5稲葉ビル203

国分寺オフィス 東京都国分寺市本町4-7-5サンプラビル2階【立川市・八王子市・国分寺市・武蔵野市など多摩エリア・中央線沿線対応】

お問い合わせ support@sakanouehr.com 電話03-6822-1777

メディア取材実績:週刊文春((株)文藝春秋)(【証拠ビデオ入手】東証上場企業・ライトアップが指南する厚労省助成金“不正受給”「おいしすぎる」「数千万円が自由に」、【全社員の4分の1近くがいなくなり…】「ウルトラマン」シリーズの円谷プロで退職者が続出していた)、TOKYO MX(堀潤 Live Junction」「医療保険制度改革で…負担増える逆転現象も」)、東京新聞『国保逃れ指摘「すでに把握しています」と言いつつ野放し 国や年金機構「脱法行為」是正がニブ過ぎるのは…』『維新だけではなかった「国保逃れ」 司法書士グループ企業でも「節約術」疑惑 厚労省「看過できない状況」』、『国保逃れ」に新たな手口 国の対策をすり抜ける「従業員型」とは…業者に接触した特定社労士が読み解く』、週刊SPA!『稼ぎながら健康になれ 50代からのガテン系仕事』、他

bottom of page