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【2026年度 最低賃金大幅引き上げ】各都道府県の答申額と本決定までの徹底解説〜地域間格差の縮小と、持続的な賃上げに向けた政府の狙い〜

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 8月12日
  • 読了時間: 6分
最低賃金

2026年度(令和8年度)の地方最低賃金審議会における答申が各地で出揃い始めました。今年の改定は、多くの都道府県で50円台後半という過去最高水準の引き上げ幅を記録する歴史的な年となっています。  

政府が掲げる「持続的な賃上げ」の方針と、物価高騰に対する生活防衛の必要性から、各地方審議会では激しい議論が交わされました。本記事では、現在までに明らかになっている各都道府県の具体的な答申額を整理するとともに、最低賃金がどのようにして最終的な効力を持つ「本決定」に至るのか、その法的なプロセスを専門家の視点から詳しく解説します。


1.【地域別】2026年度 地方最低賃金審議会の答申額まとめ

現在、各都道府県の地方最低賃金審議会から答申されている引き上げ額および改定後の最低賃金額は以下の通りです。多くの地域で国の目安を上回る、あるいは過去2番目の大きな上げ幅を記録しています。  

【北海道・東北】

  • 北海道:1131円(56円引き上げ、6年連続)  

  • 宮城県:1098円(60円引き上げ、目安額からの上乗せは2年連続)  

【関東】

  • 栃木県:1125円(57円引き上げ)  

  • 群馬県:1120円(57円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

  • 埼玉県:1196円(55円引き上げ)  

  • 千葉県:1195円(55円引き上げ)  

  • 東京都:1280円(54円引き上げ、目安通り)  

  • 神奈川県:1279円(54円引き上げ)  

【北信越】

  • 新潟県:1108円(58円引き上げ、目安を2円上回る)  

  • 石川県:1113円(59円引き上げ、富山県との差を縮小)  

  • 福井県:1112円(59円引き上げ、目安を3円上回る)  

  • 長野県:1117円  


【近畿】

  • 滋賀県:1136円(56円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

  • 大阪府:1231円(54円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

  • 兵庫県:1172円(56円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

  • 奈良県:1107円(56円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

  • 和歌山県:1101円(56円引き上げ)  

【中国・四国・九州】

  • 鳥取県:1090円(60円引き上げ、国の目安を4円上回る)  

  • 岡山県:1100円超(57円引き上げ、国の目安に1円上積みし初の1100円超え)  

  • 香川県:1092円(56円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

  • 福岡県:1114円(57円引き上げ、過去2番目の上げ幅)  

(※東海3県におきましても、愛知県が1200円目前となるなど10月からの引き上げが予定されています。)  


2.政府の狙いと目安額を上回る答申が相次いだ背景

2026年度の改定において特筆すべきは、国の示した「目安額」を地方審議会が自主的に上乗せして答申するケースが相次いでいる点です。新潟県、福井県、鳥取県、岡山県などがその代表例です。  

この背景には、大都市圏との賃金格差が広がることで、地方から貴重な労働力が流出してしまうことに対する強い危機感があります。例えば石川県が隣接する富山県との最低賃金の差を縮小したように、地方自治体や地元企業の間で「隣の県より少しでも高く設定しなければ人材を獲得できない」という切実な人材獲得競争が起きています。  

政府としても、長年続いた物価停滞から完全に脱却し、「賃金と物価が連動して上昇していく好循環」を定着させることを最重要課題と位置づけています。労働市場の構造的な人手不足を是正し、日本経済全体を成長軌道に乗せるための政策的誘導として、最低賃金の大幅な引き上げが機能しています。  


3.「答申」から「本決定」へ:新しい最低賃金が適用されるまでの流れ

ニュース等で報じられている現在の金額は、あくまで地方最低賃金審議会が都道府県労働局長に対して示した「答申(意見の報告)」の段階です。これが正式な法律としての効力を持つ「本決定」となるまでには、厳格な行政手続きを経る必要があります。具体的な流れは以下の通りです。

①中央最低賃金審議会による「目安」の提示(7月下旬)

まず、国の中央最低賃金審議会が、全国を複数のランクに分け、その年の引き上げ額の「目安」を厚生労働大臣に答申します。

②地方最低賃金審議会による「答申」(8月上旬〜中旬:現在この段階)

国の目安を参考に、各都道府県の地方最低賃金審議会が、地域の実情(労働者の生計費、類似の労働者の賃金、企業の賃金支払能力)を調査・審議し、都道府県労働局長に対して改定額を「答申」します。  

③異議申し出の受付と審議(8月中旬〜下旬)

答申の内容は公示され、一定期間(通常は公示の日から15日間)、関係する労働者や使用者からの「異議申し出」を受け付けます。異議申し出があった場合、地方最低賃金審議会は再度審議を行い、必要に応じて答申内容の見直しを行います。

④都道府県労働局長による決定と官報公示(9月上旬)

異議申し出の処理が完了した後、都道府県労働局長が最終的な最低賃金額を決定します。決定された内容は、国の機関紙である「官報」に公示されます。

⑤発効(10月上旬〜中旬)

官報に公示された日から起算して30日を経過した日以降(原則として10月1日から中旬の間)に、新しい最低賃金が「発効」し、法的な効力を持ちます。この発効日以降の労働に対しては、改定後の新しい金額以上の賃金を支払う法的な義務が生じます。


今後の見通しとまとめ

2026年度の最低賃金改定は、単なる時給の引き上げにとどまらず、日本における労働価値の再評価という大きな転換点を示しています。現在出されている答申額は、今後の手続きを経て10月には正式なルールとして施行されます。

企業経営者および人事労務担当者は、この決定プロセスを正しく理解し、自社の給与体系が10月の発効日時点で確実に新しい最低賃金を上回るよう、今の段階からシミュレーションと準備を進めておくことが不可欠です。


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