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【2026年最新/社労士徹底解説】台風6号「レベル4警報」で会社は休むべきか? 経営者を悩ませる「休業手当の理不尽」と「原則出勤+個別対応」という企業防衛のリアル

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 2 日前
  • 読了時間: 9分
台風

本日、2026年6月3日、台風6号の接近により、関東地方の広範囲において警戒レベル4(避難指示)に相当する危険警報が相次いで発令されました。東京都内でも品川区の大雨危険警報や、神田川、目黒川、善福寺川などで「レベル4氾濫危険情報」が出され、気象庁が厳重な警戒を呼びかけています。

こうした激甚災害が迫るたび、テレビや新聞、SNSでは「危険な警報が出ているのに出社を強要された」「会社はなぜ一律で休業にしないのか」といった企業批判が噴出します。多くの人々は「レベル4のような危険な警報が出たら、会社は当然に休業すべき法的義務がある」と思い込んでいます。

しかし、人事労務の専門家である特定社会保険労務士の視点から、まず世間の思い込みを覆す決定的な事実を提示します。日本の労働基準法をはじめとするいかなる法律にも、「警戒レベル4が出たら会社を休業にしなければならない」という明確な基準は存在しません。

法律上の義務がない以上、交通機関が動いているのであれば「原則として通常通り営業し、出勤とする」という企業の判断自体は決して違法ではありません。むしろ、実務を預かる経営層や人事労務担当者にとって、世間の声に押されて安易に「全社一律の休業」を命じることは、企業経営において極めて理不尽なコスト負担(休業手当)のリスクを抱え込むことを意味します。

本稿では、台風6号のような緊迫した事態において、企業がいかにして法的リスクを回避し、現場の混乱を収束させるべきか。メディア関係者様や企業経営者様に向けて、関連法令、行政通達、裁判例に基づいた「経営者の本音と法的防衛ライン」を徹底解説いたします。


1.会社が一律に「自宅待機」を命じることの理不尽な代償

天災時において、会社が従業員の安全を第一に考え、「明日は台風が接近するため、全社一律で休業(自宅待機)とする」と指示を出したとします。一見すると素晴らしい対応に見えますが、労働法制の観点からは、経営者にとって非常に理不尽な結果を招く恐れがあります。

労働基準法第26条「休業手当」の壁

休業時の給与の取り扱いについては、「ノーワーク・ノーペイの原則(民法第536条第1項)」により、労使双方に責任のない「不可抗力」であれば無給となります。しかし、労働基準法第26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と定めています。

ここでの「不可抗力」とは、昭和23年の行政通達(昭23.4.19基収119号)により、「事業の外部より発生した事故であり、事業主が最大の注意を尽くしても避けられない事故」と極めて厳格に解釈されます。

つまり、事業所自体は稼働可能であり、電車も動いているにもかかわらず、会社が自らの経営判断で「安全のために全社休業」を命じた場合、それは不可抗力ではなく「会社の指揮命令による休業(使用者の責)」とみなされ、会社に平均賃金の6割以上の休業手当支払い義務が生じるリスクが高いのです。

「従業員の安全を守るために良かれと思って休ませたのに、なぜ会社が休業手当というペナルティのような負担を強いられなければならないのか」。この理不尽さこそが、経営者が直面する労働法制の大きな課題です。


2.真の企業防衛の基本スタンスは「原則出勤」と「個別対応」

休業手当の理不尽な負担を避けつつ、適法に事業を運営するために、企業が取るべき最も厳密なスタンス。それは「会社は通常通り営業し、原則出勤とする」という大前提を維持することです。その上で、物理的・客観的にどうしても出社できない従業員に対してのみ「個別対応」を行います。

①「レベル4」は依然として「原則出勤」の範疇

誤解されがちですが、気象庁や自治体が発表する「警戒レベル4(避難指示)」は、対象地域の住民に避難を促すものですが、直ちに「通勤が物理的に不可能になる」ことを意味しません。電車が通常通り運行し、事業所へのルートが確保されているのであれば、会社は「原則出勤」の姿勢を崩す法的な必要はありません。

この段階で「休まなければならない」という明確な法的根拠はないため、会社からの一律の休業指示は出さず、「原則出勤である」ことを徹底するのが企業防衛の第一線です。

②会社が休業させるべき「特別な事情(不可抗力)」の境界線

では、安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点から、会社が「絶対に出社させてはならない(休業させるべき)」と判断すべき境界線はどこにあるのでしょうか。それは以下の2点に絞られます。

  1. 警戒レベル5(緊急安全確保)の発令

    既に災害が発生している、または切迫しており、命の危険が目の前にある状態。

  2. 物理的な移動手段の喪失

    利用する公共交通機関が「計画運休」等で完全にストップし、代替手段もない状態、あるいは道路の冠水で物理的に通行不可能な状態。

これら「従業員固有の、どうしても通えない物理的・客観的な理由」が発生した場合に限り、会社は個別に休業の措置を取ります。この休業は、会社都合ではなく「通勤途絶や生命の切迫した危機による物理的な就労不能」が原因です。したがって、法律上の完全な「不可抗力」と解釈され、会社に休業手当の支払い義務は生じず、無給(ノーワーク・ノーペイ)として処理することが適法となります。


3.「原則出勤」下における有給休暇の適法な活用

「原則出勤」とした場合、レベル4の発令などで出社への不安を感じる従業員から、「本日は年次有給休暇を取得したい」という申し出が出ることが想定されます。

①会社からの強制は違法、本人からの申請は適法

労働基準法第39条により、年次有給休暇は労働者が自らの意思で取得日を指定する「時季指定権」です。会社が「今日はレベル4で危ないから、全員有給休暇で休むように」と強制することは、明確な違法行為となります。

しかし、会社が「原則出勤」とした上で、従業員本人が「安全を考慮して本日は有給消化に充てたい」と自発的に申請してきた場合、会社がそれを承認することは完全に適法です。

②実務上推奨されるアナウンス

会社としては、以下のように「選択肢の提示」をしておくことが、違法性を排除した最もスマートな対応となります。

  • 「本日は原則出勤とします。ただし、居住地域への警報発令等により安全上の不安がある方は、本人の希望により年次有給休暇の取得を認めますので、希望者は速やかに申請してください。」

これにより、従業員は自身の判断で安全を確保しつつ収入減を回避でき、会社も休業手当のリスクや違法性を問われることなく、双方にとって円満な解決を図ることができます。


4.企業の実務負担をなくし、満足度を上げる究極の解決策「災害時特別休暇」

ここまで、「原則出勤」をベースとし、本当に物理的に出社不可能な場合(レベル5や計画運休等)のみ不可抗力として扱う、最も厳格な法的防衛策を解説してきました。これが法律の原則に則ったスタンダードな実務対応です。

しかし、実際に台風が直撃した朝、人事労務担当者や現場の管理職は、従業員一人ひとりから「有給を申請します」「電車が止まりました(不可抗力)」といった連絡を個別に受け、それぞれを個別に判断・処理しなければなりません。これは、緊急事態下において極めて大きな実務負担となります。


企業防衛と従業員満足を両立する「特別休暇」の創設

こうした個別判断の煩雑さから解放され、かつ従業員満足度を圧倒的に引き上げる解決策として、2026年現在、多くの先進企業が取り入れているのが、就業規則における会社独自の「災害時特別休暇(100%有給保障)」の創設です。

これは法定のルールではなく、会社が独自に「気象庁の警戒レベル4(避難指示)対象地域の居住者」など、自社にとって都合の良い客観的な条件を設定し、該当する従業員に対しては特別休暇を与え、給与を全額保障して休ませるという制度です。

【特別休暇制度のメリット】

  1. 人事の実務負担がゼロに

    個別の「休業手当か、不可抗力の無給か、本人の有給か」という煩雑な判断や手続きが一切不要になり、判断に迷うことがなくなります。

  2. 労働基準法違反リスクの完全消滅

    100%の給与が保障されるため、休業手当未払いや有給強制などの法的トラブルは起こり得ません。

  3. 圧倒的な従業員満足と企業ブランド向上

    「会社は社員の命を守り、個人の有給を削ることもなく、生活を保障してくれた」という事実は、現代の人的資本経営において最強の採用力と離職防止効果をもたらします。

「原則出勤・個別対応」という法的な基本ラインを確固として持った上で、あえて「災害時特別休暇」という独自の制度を上乗せする。これこそが、激甚化する災害時代において、企業が自らを守り、組織を強くするための「最上位の経営判断」と言えるでしょう。


実務担当者がリードする「未来の労務管理」

台風6号による危険警報が相次ぐ中、いま企業に求められているのは、「レベル4だから休ませなければ」という世間の思い込みに流されることではありません。

「法律上休ませる義務はなく、原則出勤である」という事実と、「会社都合の休業命令が招く休業手当リスク」を正確に認識する。その上で、物理的に出社不可能なレベル5や交通断絶のケースのみを不可抗力として扱い、従業員の自発的な有給申請を適法に処理する。さらに一歩踏み込んで、会社独自の防衛策としての「災害時特別休暇」を導入する。これら一連の適正な実務対応こそが、企業の信頼と存続を守る最大の盾となります。

テレビ、新聞、雑誌等のメディア関係者様におかれましても、天災時の被害状況という表面的な報道にとどまらず、その裏側で経営者や実務担当者が直面している「労働法制のジレンマ」や、「原則出勤をベースとした企業独自の防衛策」といった多角的な視点から報道していただくことを切に願います。それが、日本社会全体の「適正な労務環境の構築」を後押しする力となるはずです。


【本件に関する実務相談・お問い合わせ】

今回の記事に関連する、天災時の就業規則(災害対応規程)の抜本的な改定、休業手当の適正な運用、災害時特別休暇制度の設計といった実務上のご相談や、労務顧問契約のお問い合わせなど、当事務所までお気軽にご相談ください。最新の法令・判例と豊富な実務経験に基づき、企業防衛と従業員満足を両立する御社に最適なソリューションを提供いたします。

また、テレビ、新聞、雑誌、Webメディア等の記者・ディレクター様からの解説依頼、番組出演、取材等も随時承っております。 複雑な労働法制や企業実務のリアルを、専門家としての高度な知見に基づき、視聴者や読者にわかりやすい言葉で解説・情報提供いたします。


坂の上社労士事務所 / 給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価 (東京都千代田区神田三崎町 / 全国対応)

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代表 特定社会保険労務士 前田力也

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    • 『国保逃れ指摘「すでに把握しています」と言いつつ野放し 国や年金機構「脱法行為」是正がニブ過ぎるのは…』

    • 『維新だけではなかった「国保逃れ」 司法書士グループ企業でも「節約術」疑惑 厚労省「看過できない状況」』

    • 『「国保逃れ」に新たな手口 国の対策をすり抜ける「従業員型」とは…業者に接触した特定社労士が読み解く』 他多数

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