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執筆者の写真坂の上社労士事務所

短時間休業で雇用・企業を守りましょう/雇用調整助成金特例措置

雇用調整助成金特例措置の目玉でもあります短時間休業の緩和について、解説致します。


1.原則ルール下での雇用調整助成金制度

短時間休業を実施する場合は、事業所の全従業員が一斉(同じ時間帯)に休業しなければなりません。


2.特例措置ルール下での雇用調整助成金

①部署や部門ごとの短時間休業が可能

社内の部門や部署で働き方が異なる場合

例:業績の落ち込んだ一部門のみの短時間休業、製造ラインごとの短時間休業

②職種や仕事の種類に応じた短時間休業が可能

飲食業など事業所がシフト制を取っている場合

例:常時配置が必要な労働者以外の労働者の短時間休業

③シフトなど、勤務体制による短時間休業が可能

宿泊業などの営業時間に労働者を一人以上常に配置する必要がある場合

例:8時間4交代制を6時間3交代制とすることによる2時間分の短時間休業


3.特例措置下で認められる休業実施例【例:飲食店】

▼調理部門 所定労働時間14時〜23時

社員A 20時~23時まで3時間休業

社員B 20時~23時まで3時間休業

▼配膳部門 所定労働時間13時〜22時

社員C 13時~15時まで2時間休業

社員D 13時~15時まで2時間休業

☛全従業員が一斉に休業しなければならないという原則ルールから外れますが、今回の特例措置により、部門ごとに休業を実施すれば助成金の対象となります。


4.短時間休業の緩和措置の不備

この短時間休業の緩和については、制度に大きな不備があり、欠陥制度と言わざるを得ません。それは、この緩和措置が、部門や部署などを有するであろう企業規模、複数の職種や業務を有する企業を想定した制度となっているからです。

例えば、従業員が3名(全員ネイリスト)のネイルサロンの場合はいかがでしょうか?全員が同じ職種であり、当然部門や部署も存在しません。そうすると、結局は、全従業員が一斉に休業しなければならなくなり、短時間休業の緩和措置から外れてしまうことになります。しかも、小規模の事業所は、一人一人の勤務開始時刻や勤務終了時刻が異なることもよくあります。一人は早番で朝9時~勤務、もう一人は遅番で11時~勤務、などです。つまり、このような状況下で、同時刻を起点として一斉に休業することは非常に困難となります。


5.ハローワークや労働局などの審査実務ではどのように取り扱われているか

上記4のネイルサロンのケースにおいて、ハローワークや労働局は実際どのように審査をするのでしょうか。それは、それぞれのハローワーク、それぞれの都道府県の労働局、それぞれの担当職員によって、見解が微妙に異なり、審査に進み支給決定される企業もあれば、上記2及び3の緩和措置の原則ルールに従い、門前払いをされるケースもあります。非常に残念なことですが、このようなことが現実に発生しているのです。厚生労働省が所管する助成金制度であるにも関わらず、扱いに差異が発生するなど絶対にあってはなりません。この点、当事務所は、短時間休業の緩和措置開始当初から行政に改善要望を出していましたが、全く改善されてきませんでした。


6.小規模事業所で、従業員個別の休業でも助成金が支給されるケースとは

上記4のネイルサロンのケースにおいて、審査に進み支給決定される条件とはどのような場合でしょうか。答えは、それぞれ一人ずつに部門を作ってしまえばよいということになります。例えば、3名のネイリストがおり、1人は管理部門、1人は広告部門、1人は技術部門、といった具合でしょうか。こうした部門があれば、部門ごとに休業を実施するという短時間休業の緩和措置ルールに沿った休業を実施できることになります。また、1名を責任者とし、責任者は常時店舗にいなければならないので、他の人とは別の時間帯で休業を取る、これでも問題ありません。

「これが通るなら何でもありではないか」といった声も聞こえてきそうですが、労働局はこのような理由付けでも申請を認める傾向にあります。それは、そもそもの緩和措置制度の不備・欠陥はもちろんのこと、昨今の情勢を考慮しできるだけ柔軟に審査事務を取り扱うよう厚生労働省本省より行政各部署に通知がなされているからです。よって、こうしたケースで企業様が不正受給などのリスクを負う可能性は極めて低いと判断できます。小規模事業所においても、積極的に短時間休業を実施されることを推奨します。


7.まとめ

他の厚生労働省助成金でもそうですが、都道府県によって解釈・見解が異なる、審査内容が異なる、ということがしばしばあります。これは絶対にあってはならないことですが、こうした点でお困りの企業様は是非当事務所にご相談下さい。



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