top of page


労働者性をめぐる3つの重要動向:国内外の最新判例と実務上の注意点を社労士(社会保険労務士)が解説
近年、フリーランスやギグワーカーといった働き方が多様化する中で、「労働者性」(労働基準法上の労働者に該当するか否か)の判断は、労務管理における最重要課題の一つとなっています。
契約書で「業務委託」と定めていても、実態が「雇用」であれば労働法規が全面的に適用されるため、この判断を誤ると、未払残業代や社会保険料の遡及適用など、企業にとって重大なリスクとなります。
『労働基準法における「労働者」に関する研究会 第4回資料』を分析すると、この「労働者性」の判断基準は、国内外で大きな転換期を迎えていることがわかります。今回は、実務上の観点から、3つの重要ポイントに絞って解説します。
1. 伝統的な攻防:「業務の性質」論と実質的な指揮監督
労働者性を判断する上で最も重要な要素は「指揮監督関係の有無」ですが、実務上、この解釈が最も割れるポイントです。
【現状の課題と対立】
企業側(労働者性否定)の典型的な主張は、「業務の性質上、当然に必要な指示」であり、指揮監督には当たらない、というものです 。
否定事例(業務の性質論)

坂の上社労士事務所
10月30日読了時間: 8分


令和7年版「過労死等防止対策白書」の深掘り分析:社労士(社会保険労務士)視点からの考察
令和7年版白書は、過労死等防止対策推進法施行後10年間の軌跡と現状を示す重要な資料です。一定の成果は見られるものの、依然として深刻な課題が浮き彫りになっています。社労士(社会保険労務士)の視点から、特に注目すべき点を深掘りします。
1.注目すべき事例・傾向:メンタルヘルス不調の急増と多様化するリスク要因
白書が示す最も顕著な傾向は、精神障害による労災請求・認定件数の急増です。特に自殺(未遂含む)以外の事案が大幅に増加しており、平成22年度比で請求件数は約3.5倍 、認定件数は約4倍に達しています。
女性・若年層の増加
従来、過労死・過労自殺は中高年男性の問題と捉えられがちでしたが、精神障害事案では女性の請求・認定件数が近年男性を上回る水準となっています。年齢別に見ても、若年層(20代・30代)での認定件数が多くなっています。
業種による偏在
精神障害事案は「医療、福祉」(特に社会保険・社会福祉・介護事業)で突出して多く、近年さらに急増しています。脳・心臓疾患では依然として「運輸業、郵便業」(特に道路貨物運送業)が最多で

坂の上社労士事務所
10月29日読了時間: 6分


【全論点・徹底解剖】労政審「労働条件分科会」が示す未来図。2026年以降の労働法制はこう変わる!企業実務への影響「13の大変化」
令和7年10月27日に開催された厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会。この会議で示された資料と議論は、単なる法改正の兆しではなく、日本の「働き方」の未来を決定づける設計図そのものです。
今回は、この分科会の全資料を「誰が、何を、なぜ、どのように、いつ」という観点から徹底的に分析・統合し、今後数年で訪れる「13の法改正シナリオ」を、専門的かつ分かりやすく解説する完全版です。
これは、すべての経営者と労務担当者が今から備えるべき、未来の労務管理の「新しいルールブック」です。
第1部:労働者の「確実な休息」の確立へ
最初の大きな柱は、従来の「時間規制」から一歩進み、「労働から確実に解放される時間(=休息)」を法的に担保しようとする強い意志です。
1.勤務間インターバル制度:努力義務から「義務化」へ
【What】何がどう変わるのか?
現状:終業から次の始業までに一定の休息時間を設けることは、労働時間等設定改善法上の「努力義務」に留まっています。
改正案:これを「義務化」する方向で議論が進んでいます。労働者

坂の上社労士事務所
10月28日読了時間: 17分


【必見】事業主証明で扶養認定がさらにスムーズに!!「年収の壁」対策が恒久化!
厚生労働省から、健康保険の被扶養者認定に関する重要な通知が公表されました。これは、いわゆる「年収の壁」問題に対応するための措置である「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の取り扱いを、時限措置ではなく、恒久的な制度とするものです。
令和7年10月1日付けで発出された「「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について」(保保発1001第1号)の内容を、企業の労務管理や税務、法的なリスクの観点から、わかりやすく解説します。
1.労務管理と従業員の安心
①扶養認定業務の「恒久的な円滑化」
これまで「年収の壁・支援強化パッケージ」に基づき、一時的な対応として実施されていた「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が、期限の定めなく実施されることになります。
・何が変わるか?
繁忙期などに収入が一時的に上昇し、年収130万円を超えた場合でも、事業主が「一時的な事情によるもの」であることを証明すれば、被扶養者の資格を継続しやすくなります。これにより、従業員は「壁」を気にせず働くことがで

坂の上社労士事務所
10月9日読了時間: 5分


【社労士解説】年収の壁対策!2026年4月施行!被扶養者認定が「労働(雇用)契約」ベースに大転換!会社と家計の負担はどう変わる?
年収の壁、ついに緩和へ!健康保険の被扶養者認定が変わる
2026年4月1日から、健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)や厚生年金の「被扶養者」の認定基準が大きく変わります。これまで「過去の収入や現時点の収入」などから判断していた年間収入の見込み判定方法が、「労働契約書の内容」をベースにする新たな取扱いに変わるのです。
これは、いわゆる「年収の壁」(主に130万円の壁)を意識して働く方が、労働時間を調整せざるを得ない「就業調整」問題を緩和するための国の施策の一環です 。この変更は、被扶養者にとって認定の「予見可能性」を高め、安心して働ける環境を整えることを目的としています。
厚生労働省は、この新たな取扱いについて、「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日付け保保発1001第3号・年管管発1001第3号)として、通知とQ&Aを公表しました。
この制度変更は、被扶養者本人だけでなく、その家族(被保険者)、雇用する企業、そして健康保険組合など、多くの関係者に影響を与

坂の上社労士事務所
10月7日読了時間: 6分


人手不足の救世主はAIと賃金!? 令和7年「労働経済白書」から読み解く企業が生き残るための最重要戦略3選
厚生労働省から令和7年版の「労働経済白書」が公表されました。今年のテーマは「労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて」。少子高齢化による「人手不足」という最大の経営課題に、企業がどう立ち向かい、成長を続けるかを示唆する重要な内容です。
社会保険労務士(社労士)の視点で、この白書を企業経営視点から要約し、今すぐ取り組むべき戦略を解説します。
1. 生産性向上とDX戦略
"非製造業"の「AI・ソフトウェア投資」こそが成長の鍵!
白書は、日本の持続的な経済成長には労働生産性の向上が不可欠であると強調しています。特に、AIやソフトウェアへの投資が米国・英国・ドイツと比較して遅れており、これが生産性低迷の大きな要因と分析されています。【社労士前田からのアドバイス】
単なるコストカットではなく、戦略的な無形資産(ソフトウェア等)への投資は、将来の利益を生み出す「攻めの税金対策」です。適切な税制措置を活用し、財務基盤を強化しながら生産性向上を実現しましょう。
2. 賃金と処遇改善戦略
社会インフラを支える人材は「キャリアラダー」で

坂の上社労士事務所
10月1日読了時間: 4分


2025年10月施行!企業と個人に影響大の「働き方」「スキルアップ」新制度を徹底解説!
厚生労働省から「令和7年10月からの主な制度変更」が公表されました。特に雇用・労働関係では、企業経営や従業員のキャリア形成に大きく関わる重要な改正が含まれています。
社会保険労務士(社労士)の視点から、見落としがちなリスクや活用すべきメリットをわかりやすく解説します。
1. 労働者の視点と企業の義務【社労士の視点】
「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」は、子を持つ従業員の離職防止と定着に直結する最重要の改正です。【社労士前田から見た重要ポイント】
就業規則の変更が必須です。特に「子の看護等休暇」の対象拡大は全企業に関わります。
「柔軟な働き方」の義務化は、多様な人材の確保・女性活躍推進の観点からも企業価値を高めるチャンスです。制度の導入だけでなく、周知徹底と利用しやすい企業文化の醸成が求められます。【社労士前田から見た重要ポイント】
教育訓練休暇給付金は、従業員がキャリアを中断せずにスキルアップできる、企業負担のない強力な福利厚生となりえます。企業は、就業規則で「教育訓練休暇」制度を定

坂の上社労士事務所
10月1日読了時間: 3分
越境テレワーク運用上の取扱い
近年のグローバル化で海外に居住しながら日本国内の企業に対し、リモートで業務を行う越境テレワークが広まりつつあります。
越境テレワーク勤務での下記2つのパターンを想定し、労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険、介護保険の対象となるのかどうかと労務管理上の留意点、

坂の上社労士事務所
2023年8月29日読了時間: 4分


令和6年4月適用の改善基準告示(自動車運転業)に関するQ&Aが公表されています
2024年4月1日より、建設、自動車、医療などの分野において、新たな時間外労働の上限規制が開始されます。 上限規制の詳細はこちら 今回、自動車運転業に関し、厚生労働省よりQ&Aが公開されています。 コンプライアンス遵守、労働者の安全配慮の観点からも、是非チェックをお願い致し...

坂の上社労士事務所
2023年5月29日読了時間: 1分
感染者の職場復帰や労災補償等について 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)が更新されました
厚生労働省は、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」を公表していますが、これが、令和4年8月8日・10日付けで更新されました。 更新されたのは、次の3つのQ&Aです(Qのみを紹介)。 ●1-問2 新型コロナウイルス感染症に感染した労働者が職場復帰する際にどのよ...

坂の上社労士事務所
2022年8月30日読了時間: 1分
令和3年度の監督指導の結果が公表されました。 監督指導を実施した事業場の34.3%で違法な時間外労働が行われていました(厚労省)
厚生労働省は、令和3年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめ、監督指導事例とともに公表しましました(令和4年7月29日公表)。この監督指導は、各種情報から、時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる...

坂の上社労士事務所
2022年8月29日読了時間: 2分
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和4年10月施行分)
日本年金機構より、「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和4年10月施行分)」が公表されています。その中で、注意したいQ&Aを抜粋します。 問5 4分の3要件を満たさない短時間労働者として被保険者資格を取得したが、雇用契約の変更等で正社員等の一般被保険

坂の上社労士事務所
2022年7月27日読了時間: 6分


令和4年10月から短時間労働者の適用拡大・育休免除の見直し等を実施【日本年金機構】
年金制度改正法や全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律等の施行により、年金制度の一部が令和4年10月より改正されます。 1.短時間労働者の適用拡大 ①特定適用事業所要件の見直し 現在、厚生年金保険の被保険者数が501人以上の事業所で働く短時間労

坂の上社労士事務所
2022年7月27日読了時間: 2分
中小企業でも月60時間超の残業については割増率引き上げ(厚生労働省)
令和5年(2023年)4月1日から中小企業においても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられることについて、厚生労働省から、令和4年4月に更新したリーフレットが公表されております。 割増賃金率が引き上げられるのは、月60時間を超える時間外労働をさせた場合で、その月6

坂の上社労士事務所
2022年4月28日読了時間: 1分


年休取得率は前年より微増に留まる(厚労省・就労条件総合調査)
令和3年11月9日に厚生労働省より「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」が公表されました。公表された調査内容によれば年休取得率が過去最高となる56.6%となったとのことです。令和2年(又は平成31(令和元)会計年度)における年次有給休暇の取得状況は、次のとおりです。 ・労働者1

坂の上社労士事務所
2021年11月17日読了時間: 1分
毎月勤労統計調査 現金給与総額は6カ月連続増加
10月22日に個人番号保護委員会から、個人番号(マイナンバー)の範囲について、問い合わせを受けることが多いということで周知が行われております。 周知内容は次のとおりです。 ●番号法第2条第8項において、個人番号(マイナンバー)とは、第5項に定義される番号そのものだけでなく「個人番

坂の上社労士事務所
2021年10月28日読了時間: 2分
厚労省が令和3年版過労死等防止対策白書を公表
10月22日に個人番号保護委員会から、個人番号(マイナンバー)の範囲について、問い合わせを受けることが多いということで周知が行われております。 周知内容は次のとおりです。 ●番号法第2条第8項において、個人番号(マイナンバー)とは、第5項に定義される番号そのものだけでなく「個人番

坂の上社労士事務所
2021年10月28日読了時間: 2分
雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設【令和4年1月1日より】
10月22日に個人番号保護委員会から、個人番号(マイナンバー)の範囲について、問い合わせを受けることが多いということで周知が行われております。 周知内容は次のとおりです。 ●番号法第2条第8項において、個人番号(マイナンバー)とは、第5項に定義される番号そのものだけでなく「個人番

坂の上社労士事務所
2021年10月28日読了時間: 1分
令和3年9月1日から労災保険の特別加入対象が拡大/ウーバーイーツ配達員、ITフリーランス
労働者災害補償保険法施行規則の改正により、令和3年9月1日から、特別加入制度の対象が拡大されました。 1.一人親方等の特別加入の対象に追加 ・自転車を使用して貨物運送事業を行う者 ※ウーバーイーツの配達員などが該当します。 ※自動車や原動機付自転車を使用して貨物運送事業を行う者は

坂の上社労士事務所
2021年9月29日読了時間: 2分
【全国初】時間外労働の上限規制適用で冷凍食品製造会社を書類送検
外国人技能実習生に1か月に100時間以上の時間外労働をさせたほか、労働基準監督官の立ち入りに対して、うその説明をしたとして、冷凍食品会社など2社とその社員3人が労働基準法違反の疑いで書類送検されました。1か月の時間外労働で100時間の上限を超えて違反し書類送検したのは全国で初めて

坂の上社労士事務所
2021年7月28日読了時間: 2分
bottom of page
