【必見】事業主証明で扶養認定がさらにスムーズに!!「年収の壁」対策が恒久化!
- 坂の上社労士事務所
- 10月9日
- 読了時間: 5分
更新日:5 日前

厚生労働省から、健康保険の被扶養者認定に関する重要な通知が公表されました。これは、いわゆる「年収の壁」問題に対応する為の措置である「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の取り扱いを、時限措置ではなく、恒久的な制度とするものです。
令和7年10月1日付けで発出された「「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について」(保保発1001第1号)の内容を、企業の労務管理や、法的なリスクの観点から、わかりやすく解説します。
1.労務管理と従業員の安心
①扶養認定業務の「恒久的な円滑化」
これまで「年収の壁・支援強化パッケージ」に基づき、時限措置として実施されていた「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が、期限の定めなく実施されることになります。
・何が変わるか?
繁忙期などに収入が一時的に上昇し、年収130万円を超えた場合でも、事業主が「一時的な事情によるもの」であることを証明すれば、被扶養者の資格を継続しやすくなります。これにより、従業員は「壁」を気にせず働くことができ、人手不足の解消にも繋がります。
・実務上の留意点
企業は、この「事業主証明」の発行手続きを明確化し、従業員への周知徹底が必要です。証明書発行は慎重に行い、一時的であることの根拠を記録・保管することが重要です。
②従業員のモチベーション向上と定着
「年収の壁」を意識して労働時間を抑えていた従業員(主にパート・アルバイト)が、扶養を外れる不安なく収入を増やせる環境が整います。
・企業メリット
従業員が安心して働ける環境は、従業員満足度(ES)の向上に直結し、優秀な人材の定着に貢献します。
・対応の継続
この円滑化措置の継続は、扶養者・被扶養者双方にとって大きな安心材料となります。
2.法的な適正運用とリスク管理
事業主が証明を行うという行為は、法的な責任を伴います。適正な運用を確保することが、企業のリスクを回避するために不可欠です。
①証明書の適正性の確保
事業主の証明は、被扶養者認定の判断材料となる為、証明内容の正確性と誠実性が求められます。事業主が「一時的な収入増」と証明するにあたり、その根拠となる客観的な資料(シフト表、売上予測、業務命令など)を整備することが、将来的な行政の確認や調査に対する防御となります。安易な証明は、不正な認定として後から問題になるリスクがあります。
②従業員とのトラブル予防
扶養認定に関する問題は、従業員の生活に直結するため、しばしば労使間のトラブルに発展します。
・明確なルール
どのような場合に「一時的な収入増」と見なして証明書を発行するのか、社内ルールを明確に定め、証明書発行の要件を統一的に適用することが、公平性の確保とトラブルの予防に繋がります。
・情報提供の義務
扶養認定の可否や、それによる社会保険料の負担・給付の変化について、正確な情報を提供することで、「知らなかった」という理由による不満や紛争を防ぐことができます。
3.「一時的な収入増加」の考え方に要注意
「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」において、「一時的な収入の増加」の具体的な上限額(いくらまで)は設定されていません。厚生労働省のQ&Aでは、具体的な上限額を示さない理由として、以下の点を挙げています。
①新たな「年収の壁」の発生を防ぐ
仮に具体的な上限額を設定してしまうと、その金額が新たな「年収の壁」となり、働くことを抑制する原因になりかねない為
②収入金額のみでの判断の難しさ
一時的な事情によるものかどうかは、収入金額だけでなく、増収に至った理由や背景(業務量の一時的な増加、繁忙期など)で判断することが重要である為
☛判断のポイント
この制度の本質は「収入額」ではなく「増加の理由が一時的かどうか」にあります。
・事業主の証明
収入が増えた理由が「人手不足による一時的な労働時間の延長」や「大口案件による業務量の増加」など、今後も継続しないことが明確な事情であることを、事業主が証明することが最も重要になります。
・最終判断
最終的な被扶養者認定は、添付された事業主の証明書や雇用契約書などを踏まえて、加入している健康保険組合や協会けんぽ(保険者)が行います。
今回の恒久化は、企業にとって労働力確保のチャンスであり、従業員にとっては働き方の自由度にも繋がります。企業は今すぐ以下の点に取り組み、「年収の壁」問題への対応とコンプライアンス遵守を両立しつつ、より働きやすい職場環境を構築しましょう。
1.社内ルールの確立
「一時的な収入増」と判断する具体的な基準、事業主証明の申請・発行手続きを明確に定めましょう。
2.従業員への周知徹底
制度の恒久化と、認定対象者に応じた年収基準の違いなど(130万、150万、180万)、誤解のないように丁寧に説明しましょう。
※150万円…19歳以上23歳未満の者(扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定)
※180万円…60歳以上の者、又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者
3.証拠の整備
証明書を発行した際は、その根拠となる資料(一時的な業務増を示す記録など)を適切に保管しましょう。
*YouTube『社労士前田の坂の上チャンネル』でも絶賛解説中!
【リベンジ解説】【年収の壁130万円】「社会保険の扶養」から外れない新ルール爆誕!労働契約だけでOK?事業主証明は恒久化!社労士(社会保険労務士)が健康保険の扶養認定ルール改正をわかりやすく簡単解説!
*ご参考:「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について(令和7年10月1日保保発1001第1号)
*ご参考:「年収の壁・支援強化パッケージ」における、社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外及び事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いについて(令和5年10月20日保保発第1020003号)
*ご参考:事業主の証明による被扶養者認定Q&A(厚生労働省)
坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応)
代表 特定社会保険労務士 前田力也
水道橋オフィス 東京都千代田区神田三崎町2-17-5稲葉ビル203
国分寺オフィス 東京都国分寺市本町4-7-5サンプラビル2階
立川オフィス 東京都立川市曙町1-16-1 第3鐙坂ハウス3階
お問い合わせ support@sakanouehr.com 電話03-6822-1777