【社労士解説】年収の壁対策!2026年4月施行!被扶養者認定が「労働(雇用)契約」ベースに大転換!会社と家計の負担はどう変わる?
- 坂の上社労士事務所
- 10月7日
- 読了時間: 6分
更新日:10月9日

年収の壁、ついに緩和へ!健康保険の被扶養者認定が変わる
2026年4月1日から、健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)や厚生年金の「被扶養者」の認定基準が大きく変わります。これまで「過去の収入や現時点の収入」などから判断していた年間収入の見込み判定方法が、「労働契約書(雇用契約書)の内容」をベースにする新たな取扱いに変わるのです。
これは、いわゆる「年収の壁」(主に130万円の壁)を意識して働く方が、労働時間を調整せざるを得ない「就業調整」問題を緩和するための国の施策の一環です。この変更は、被扶養者にとって認定の「予見可能性」を高め、安心して働ける環境を整えることを目的としています。
厚生労働省は、この新たな取扱いについて、「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日付け保保発1001第3号・年管管発1001第3号)として、通知とQ&Aを公表しました。
この制度変更は、被扶養者本人だけでなく、その家族(被保険者)、雇用する企業、そして健康保険組合など、多くの関係者に影響を与えます。新しい被扶養者認定基準の超重要ポイントについて、3つの視点から解説します。
1. 労働時間調整のジレンマ解消へ!実務上の確認ポイント
今回の改正の最大のポイントは、被扶養者認定における「年間収入」の判定が、労働契約(雇用契約)で定められた賃金から見込まれる年間収入(原則130万円未満など)に基づいて行われるようになる点です。
①認定のルールと添付書類の変更
・判断基準の明確化
労働条件通知書などに規定されている時給・労働時間・日数等を用いて算出した年間収入の見込額で判定します。
・残業代の取り扱い
労働契約書に明確な規定がなく、契約段階では見込みが難しい時間外労働(残業)に対する賃金は、原則として年間収入には含まれません。
★たとえ扶養認定時点で経常的な残業が発生していても、当初の労働契約に規定がなければ、その年度は「一時的な収入変動」とみなし、今回の新しい取り扱いが適用されます。
②認定のルールと添付書類の変更
・添付書類
認定時には、労働基準法第15条に基づく「労働条件通知書」など、労働契約の内容が分かる書類の添付が求められます。
・「給与収入のみ」の申立て
認定対象者が「給与収入のみである」旨の申立てが必要です(届書の該当欄への記載や申立書の添付などで対応)。
☛この変更により、労働者は「契約通りに働けば扶養に入れる」という予見性を持って就業できるようになるため、「年収の壁」ギリギリで働く心理的負担が大きく軽減されるでしょう。
2. 税法上の扶養とは別物!混同厳禁の「壁」の違い
健康保険の「被扶養者」と、所得税・住民税の「扶養控除」は、全く別の制度です。今回の改正は、健康保険・年金制度上の「被扶養者」認定に関するものであり、税法上の扶養のルールには影響しません。
・社会保険の壁
原則130万円(特定の要件で180万円または150万円)
→この壁を超えると、健康保険や厚生年金に自分で加入する必要があります(ただし、勤め先が厚生年金保険被保険者51人以上の場合は106万円の壁も存在)。
・税法上の壁
納税者の「控除対象配偶者」や「扶養親族」になれるかの基準は合計所得58万円(給与収入なら123万円)です。
☛今回の改正で、社会保険の壁が「労働契約」ベースでクリアしやすくなっても、税法上の123万円の壁はそのままです。労働者には、社会保険と税金の両方の「壁」を正しく理解し、働く時間を決めるように指導・周知することが重要です。
3. 「臨時収入」の判断と「労働契約」の重要性
①労働条件通知書がより重要に
この新制度では、「労働契約書(労働条件通知書)」が被扶養者認定の根拠書類となります。企業は、労働基準法に基づき交付する労働条件通知書の内容に、賃金・労働時間などの規定を明確に記載し、労働者と企業双方でその内容を遵守することが、社会保険の手続き上も極めて重要になります。
② 臨時収入による認定取り消しの回避
認定後に、当初想定されなかった臨時収入によって結果的に年間収入が基準額(130万円など)を超えてしまった場合でも、その収入が社会通念上妥当な範囲に留まるなら、ただちに被扶養者の認定を取り消す必要はないとされています 。
※例外…臨時収入によって実際の年間収入が基準額を大きく上回り、労働契約に記載された賃金を不当に低く記載していたことが判明した場合は、被扶養者に該当しないとして取り扱われます。これは、制度を悪用して労働契約の内容を偽ることを防ぐための措置です。
☛この「社会通念上妥当な範囲」の判断においては、「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主証明の提出を求めることも可能とされており、実態把握のための会社の協力が求められます。
▼施行日と確認事項
①適用開始日 令和8年4月1日
この新しい取り扱いは、認定日が令和8年4月1日以降となるものについて適用されます。
それ以前に遡って認定する場合は、従来の取り扱いにより判定します。
②継続確認 少なくとも年1回
・認定後も、翌年度以降少なくとも年1回は保険者による被扶養者の認定の適否に係る確認が実施されます。
・確認時も、原則として労働条件通知書等の労働契約内容が確認できる書類で行われますが、従来の収入証明書や課税証明書等の提出を求めることも差し支えありません。
③給与収入以外の収入がある場合
・年金収入や事業収入など、給与収入以外に他の収入がある場合は、今回の新しい取り扱いは適用されず、従来どおりの取り扱いとなります 。
☛企業の人事労務担当者は、令和8年4月1日の適用開始に備え、被扶養者認定時の添付書類や手続きについて、早急に準備と従業員への周知を進める必要があります。
*ご参考:YouTube「社労士前田の坂の上チャンネル【法改正を簡単解説】」でも絶賛解説中!
【2026年4月大転換】もう130万円の壁に悩まない!健康保険「扶養認定」新ルールを社労士(社会保険労務士)が徹底解説!パート・企業の人事担当者必見!年収の壁を変え、働き控えを減らす為に国が動いた!!
*ご参考:労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて(令和7年10月1日保保発1001第3号・年管管発1001第3号)
*ご参考:労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて(令和7年10月1日事務連絡)
坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応)
代表 特定社会保険労務士 前田力也
水道橋オフィス 東京都千代田区神田三崎町2-17-5稲葉ビル203
国分寺オフィス 東京都国分寺市本町4-7-5サンプラビル2階
立川オフィス 東京都立川市曙町1-16-1 第3鐙坂ハウス3階
お問い合わせ support@sakanouehr.com 電話03-6822-1777