東京労働局は、管轄内の18労働基準監督署における令和2年の申告事案の概要について、公表しています。人事労務管理上、非常に参考になる事例が掲載されております。自社の状況に照らし合わせ、今一度ご確認下さいませ。
1.労働者からの申告い対する労働基準監督署の対応
労働基準監督署への申告事案は、最低労働基準を定めた労働基準法などに違反するとして労働者が労働基準監督署に救済を求めるものであり、労働基準監督署では、労働者が置かれた状況に意を払い、懇切・丁寧な対応に留意しつつ、迅速・的確に処理を行っています。
2.申告による監督指導事例(資料抜粋)
事例1:定期賃金不払(休業手当含む)
・退職した労働者から、退職月の賃金が一部支払われていないとの申告を受け、調査したところ、退職月の賃金額が約定した金額を下回る東京都最低賃金の金額まで減額されていたことが判明したため、是正勧告したところ、差額が支払われた。(その他の事業)
・パート労働者から、会社から休業を命じられて休業しているにもかかわらず、休業手当が支給されないとの申告を受け、調査したところ、正社員以外には休業手当を支給していないことが判明したため、是正勧告したところ、休業手当が支払われた。(接客娯楽業)
事例2:割増賃金不払
・退職した労働者から、在職中の割増賃金が支払われていなかったとの申告を受け、調査したところ、1か月単位の変形労働時間制を採用していないにもかかわらず、1か月単位の変形労働時間制を採用したものとして時間外労働として計算していたことが判明し、不足額を支払うよう是正勧告したところ、割増賃金が追加で支払われた。(教育・研究業)
事例3:解雇
・解雇された労働者から、即時解雇されたにもかかわらず、解雇予告手当が支払われていないとの申告を受け、調査したところ、解雇予告手当の支払いを行わないまま即時解雇したことが判明したので、解雇予告手当(平均賃金30日分以上)を支払うよう是正勧告したところ、支払われた。(接客娯楽業)
事例4:労働時間
・労働者から、違法な時間外労働を行っているとの申告を受け、調査したところ、36協定の上限時間を超えて、月100時間を超える時間外労働、または2か月平均で80時間を超える時間外労働を行わせていたことが判明したので、長時間労働を削減するよう是正勧告したところ、時間外労働が36協定の範囲内に削減された。(その他の事業)
3.当事務所の見解
36協定については、労基署も調査のとっかかりとして最も指摘しやすい箇所となります。未提出の企業も多く見受けられますが、法定労働時間を超えて残業を命じる可能性がある(実際に法定労働時間を超えている)企業は、すぐにでも届出すべきでしょう。また、2023年4月1日より、中小企業においても1カ月60時間超の時間外労働には50%の割増率が適用されます。残業代抑制の観点、また、長時間労働による健康障害・精神障害の観点からも、今から時間外労働の削減、生産性の向上に取り組むべきでしょう。