12月3日に日本年金機構より「年金振込通知書」(令和3年10月定期支払)の印刷誤り事案に係る検証状況報告が公表されました。
この事案は、年金振込通知書の印刷の受託会社の担当者が印刷機の設定を誤り、宛名にあたる表面と、振込額や基礎年金番号が記載された裏面で別人のデータが印刷され、それを発送してしまったことが通知書を受け取った人からの問い合わせにより発覚したものです。
以前当欄にて本問題に引き寄せて行政対応の杜撰ぶりを具体的に指摘し反響をいただきましたが、報告書に記載された受託会社の業務実態もそれらに勝るとも劣らない酷いものでした。
報告書によれば通知書の表裏で別⼈の情報を印刷した原因としては⼤きく以下3点が確認されたとのことです。
①本番検証品(テスト品)を本番とは異なる印刷環境(印刷⽤データの作成、印刷機の設定)で作成
通知書作成の本番作業の実施前に、受託会社から機構へ本番検証品(テスト品) を提出することとしており、その作成にあたっては、本番と同⼀の印刷環境(印刷⽤ データの作成、印刷機の設定)で作成することを機構は仕様書等で求めていたが、実際には本番とは異なるプログラム設定で印刷⽤データを作成し、本番品と同様の環境で作成したと偽り機構に提出していた。
②本番作業時の印刷機の設定誤り
通知書作成の本番作業の際、印刷⽤データは正しく作成されていた。しかし、印刷機の出⼒設定を印刷オペレータが誤って設定し印刷したため、表⾯と 裏⾯で別⼈のデータが印刷された。受託会社においては、印刷機の出⼒設定時の誤りをチェックする仕組みを講じていなかった。
③管理番号による通知書の表⾯・裏⾯ の突合チェックの未実施
表裏の不⼀致防⽌のため、通知書の表裏にそれぞれ「管理番号」を印刷し、当該番号を突合チェックする等の措置を講じることを機構は仕様書等で求めていた。 しかし受託会社は履⾏開始前検査時に、管理番号で表裏の突合チェックをする旨、機構に説明していたが、本番作業時にこのチェックが⾏われていなかった。
年金振込通知書の再作成・発送やお詫び状の送付等の費用は、受託会社が負担するということですし日本年金機構では今後、本番を印刷した段階での現物確認を厳格化するといった再発防止策をとる方針とのことですが、以前の記事でも指摘した通り旧社会保険庁時代から繰り返されている不祥事を反省しているなら、なぜ最初から厳格なチェックが機構側によって行われなかったのでしょうか。
本当に再発防止を図るのであればもっと抜本的な対応が必要だと思えてなりません。
報告書は下記のリンクからご参照ください。