戸籍上は男性だが女性として生活する経済産業省の50代職員が、庁舎で女性トイレの使用を制限されているのは不当として国に処遇改善などを求めた訴訟の上告審判決が11日、最高裁第3小法廷であった。
裁判官5人全員一致の意見。今崎幸彦裁判長は、国の対応について「裁量権の範囲を逸脱し違法」と述べ、制限を不当と判断した。 職員の勝訴が確定し、経産省は対応見直しを迫られる。
最高裁がLGBTなど性的少数者の職場環境を巡り判断を示すのは初めて。性的少数者への理解増進法が6月施行されたが、国の具体的な指針はなく、企業などの取り組みに影響しそうだ。
小法廷は、職員が一部の女性トイレを使い始めてからもトラブルが生じなかったことなど具体的事情を考慮した上で、「女性トイレを自由に使用した場合にトラブルが生じることは想定し難い」と判断。制限について「他の職員への配慮を過度に重視し、著しく妥当性を欠く」と結論付けた。 補足意見で「職場の規模や人間関係など事情はさまざまで、一律の解決策になじむものではない」と指摘。「トランスジェンダー本人の意向と他の職員の意見をよく聞いた上で最適な解決策を探っていく以外になく、今後、事案の積み重ねを通じて指針や基準が形作られることに期待したい」とした。
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