改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)により大企業には既に義務付けられている職場におけるパワーハラスメント防止対策が、2022年4月より中小企業においても義務付けられることとなりますが、一方でパワハラ防止法の名称・内容を知っている企業は42.5%に留まるということが問題となっております。
さきごろ日本商工会議所の作成したガイドブック「ハラスメント対策BOOK‐ハラスメントのない社会へ‐」がハラスメントの定義から防止に向けた措置、ハラスメント発生後の対応策、公的な支援策について詳しく解説されており大いに参考となります。
ガイドブックではパワーハラスメントについて次のように定義されております。
まず職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。なお、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
ガイドブックでは3つの要素について具体例を挙げて解説されております。一例を引用いたします。
◆事例検討/これはパワーハラスメント?
⓶「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」とは
A会社に中途採用で田中さんが入社しました。管理部門の経験があるとして採用された田中さんですが、思うように仕事が覚えられず、ケアレスミスも多いようです。上司からは、「このレベルは小学生以下だよね」、「目障りだから辞めてもらったほうが職場のためになる」等の言葉で毎日叱責 されています。田中さんは、また上司から同じような叱責を受けるのではないかと気になり、落ち着いて仕事ができない状態です。最近では上司の声を聞くだけで気持ちが落ち着きません。
上司の田中さんに対する発言は、仕事のミスに対する叱責を超えて、田中さんの人格を否定するものであり、田中さんの状況から就業環境が害されていると考えられ、パワーハラスメントにあたるといえます。管理監督者として個人攻撃となるような発言は厳禁です。 人格否定の叱責は、パワーハラスメントと判断される可能性が高くなります。相手を人として見ていない心理による人格否定の発言は、人としての尊厳を傷つけるものです。
またガイドブックではパワーハラスメントだけではなく近年関心の高まっているセクシャルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ)についても解説されております。