キャリアアップ助成金(正社員転換)については、有期雇用契約(アルバイト・契約社員)が6か月、その後正規雇用契約が6か月、正規雇用後は有期雇用時の5%以上賃金UPの要件が求められます。その際の注意点(特に固定残業手当が問題になるケース)を具体的に記載します。
【事例】有期雇用⇒基本給20万円+固定残業手当4万円=24万円
ケース1 基本給を1万円UP、固定残業手当は据え置き
正規雇用⇒基本給21万円+固定残業手当4万円=25万円
☛25万円÷24万円=104.1%なので、総額で5%UPを満たしておらず、助成金の対象外となります。つまり、毎月の給与で5%UPの条件を満たす場合は、基本給(=固定で支払われる賃金)の5%UPに加え、総額で5%UPすることが求められます。
ケース2 基本給を12,000円UP、固定残業手当は据え置き
正規雇用⇒基本給212,000円+固定残業手当4万円=252,000円
☛252,000円÷24万円=105%なので総額で5%UPを満たし、助成金の対象となります。ただし、この方法は固定残業手当が実質ダウン(固定残業時間数が少なくなる)する為、労働局側で厳しく審査される可能性があります。
ケース3 基本給を15,000円UP、固定残業手当は3,000円ダウン
正規雇用⇒基本給215,000円+固定残業手当37,000円=252,000円
☛252,000円÷24万円=105%なので総額で5%UPを満たしているが、固定残業手当がダウンしているので助成金の対象外です。
ケース4 基本給、固定残業手当ともに据え置きで、賞与72,000円を支払う場合
正規雇用⇒(基本給20万円+固定残業手当4万円)×6か月+72,000円=1,512,000円
☛1,512,000円÷(240,000円×6か月)=105%なので総額で5%UPを満たしており、助成金の対象となります。
POINT
1.毎月給与で5%UPの条件を満たそうとする場合は、給与総額で5%上がっていることが必要です。
2.賞与で5%UPの条件を満たそうとする場合は、給与規程内の賞与の定め方に注意が必要です。賞与規定には、①具体的な支給時期(●月、●月に支給する)、②支給対象者(通常は給与規程の対象者を定めているはずです)は必ず記載しましょう。
3.賃金5%UPの要件に含めることのできない賞与の例
・単に「夏季及び冬季」「上半期及び下半期」「年2回」とだけ記載されている場合(支給時期が明確でない為)
・「賞与は原則として支給しない。ただし、~」と規定されている場合
・会社の業績に応じて臨時的に支給される「決算賞与」や「寸志」の場合
・対象労働者が算定期間中に賞与の支給対象になっていない場合
・賞与の支給額の算出基準に人事考課等が考慮されず、一律または在籍期間等の一定割合に基 づき支払われる場合(例:毎年12月、全員一律に20万円の賞与を支給)