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  • 執筆者の写真坂の上社労士事務所

身元保証書に損害賠償額の上限が設けられます(2020年4月1日施行)

民法改正

2020年4月1日、改正民法が施行されることにより、人事労務の分野にも影響を及ぼします。今回の民法改正は債権分野、すなわち、私人間における売買取引などの契約に基づいて生じる権利関係を定めた部分が主です。今回の記事では、その中でも身元保証に関しての案内となります。


民法改正後の条文

民法第465条の2

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

要約すると、個人の根保証契約は、書面により上限を定めなければならず(口頭では足りません)、上限を定めていない保証契約は無効になります。

※根保証契約とは、個人が保証人になる時点では、どの程度の債務(現在及び将来向かって生じる債務も含む)が発生するかが不明な契約を言います。


企業としての対応 1 身元保証書の見直し 保証額に上限額を設けていない場合は、具体的な上限を追記しましょう。 上限額に特に定めはありませんが、不相当に高額な設定は、そもそも身元保証書そのものに対する従業員からの反発も予想される為、現実的ではありません。 また、あまりに不明瞭かつ抽象的な上限記載も、無効と判断されるおそれがあります。よって、「月額基本給●●●●●●円の12カ月分を限度とする」などが具体的な書き方として想定されるでしょう。 ※改正民法施行日前から締結している上限額が不記載の身元保証契約は、その有効期間内であれば、施行日以降も効力を有します。ただし、施行日以降に新たに身元保証契約を締結する場合は、上限を記載しなければなりません。 ※身元保証の保証期間は、有効期間を定めなかったときは原則3年間、有効期間を定めるときは最長5年間となります。 2 身元保証制度自体を廃止する 従業員の行為により企業が損失を被った場合でも、第一義的には企業が賠償責任を負う為、企業が従業員に賠償請求できるケースは、悪質な場合(横領、業務妨害、不正競争行為など)がほとんどです。よって、そもそも保証人にその請求を求めることも、相当の困難が想定されます。 また、慢性的な人手不足が見込まれる昨今では、雇用契約に身元保証を付すという企業の姿勢が、次世代を担う若者からどう映るか、この視点も必須です。企業のリスクヘッジとして身元保証を締結する必要性は十分存在しますが、優秀な人材獲得という観点は今後も強く企業に求められることでしょう。 よって、身元保証契約を廃止するのも一つの選択肢です。

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