1.リスクの高い助成金申請
助成金申請業務については、複雑な制度や受給条件の理解、スケジュール管理、コンプライアンス遵守、帳簿や資料の準備等、膨大な労力と手間が発生します。さらに、助成金は年度(4月1日から3月31日)で予算が決められていますので、予算上限に達すれば途中終了するケースも多々あります。また、制度変更や企業様の雇用状況により受給条件を満たさなくなるなど、助成金受給を期待する企業様にお応えできなくなるケースもあり、代行する社労士にとっても非常にリスクの高い業務といえます。社労士業界でも、あえて助成金申請業務を受け付けない事務所も多く存在します。都内のある事務所の代表は、「従業員がプレッシャーに耐えられず、赤字になりそうなのでやめました」と、助成金申請を受け付けなくしたくらいです。
2.当事務所の受注方針
当事務所は助成金を積極的に受注しております。ただし、「助成金は簡単にもらえる」とご認識されているような経営者様や企業様はお断りさせて頂く場合もございます。助成金申請は、膨大な手間と労力とリスクを伴います。この点につき、ある程度理解のある企業様とお付き合いをさせて頂きたい、そうした企業様にこそ助成金を受給して事業運営にお役立て頂きたいと心から思っております。企業様と長くお付き合いさせて頂く中で、その業務の一部として助成金申請をサポートさせて頂けるような、長期的視点に立った関与をさせて頂ければ幸いです。
3.当事務所が今最も推奨する助成金
現在、当事務所で最も推奨している助成金は、50歳以上の有期雇用者を無期転換することで48万円受給できる65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)です。こちらの助成金は、キャリアアップ助成金と異なり、給与UPの必要がありません。また、無期転換したからといって、本当の無期(永遠)に雇用しなければならないのかといえば、そうでもありません。社員と同じ定年年齢まで雇用義務を負うのみです。さらに、無期転換後も正社員と同じ待遇にする必要はありません。有期雇用時の条件で引き続き雇用が可能です。高齢者やパート等の有期雇用者を戦略的に活用されたい企業様には是非推奨いたします。
4.助成金申請をスムーズに進める為の7つのポイント
企業様が助成金申請をスムーズに進めるに際し、抑えておくべきポイントは以下の7つとなります。
①会社全体のルールを定める就業規則、給与規程は、必ず完備しておきます。なお、「常時10人以上の労働者(パートタイマーや契約社員など非正規の社員も含みます)」を使用する企業は、就業規則を労働基準監督署へ届け出なければなりません。届出のない就業規則は、助成金審査上不利になります。
②従業員の個別の労働条件を示す雇用契約書(または労働条件通知書)は、必ず締結しておきます。
③賃金台帳、出勤簿、労働者名簿(あれば尚可)、これら法定3帳簿は必ず完備しておきます。
④時間外労働が発生する場合は、労働基準監督署への36協定届出に加え、残業手当は法定の割増率と計算方法で確実に支払っておきます。
⑤最低賃金額以上の給与を支払います。月給の場合は、時間単価を算出し、必ず最低賃金額を上回っていることを確認します。
⑥社会保険、雇用保険、労災保険については、事業所として条件を満たせば必ず届出・適用し、従業員が法令の要件を満たせば必ず加入手続を行います。
⑦助成金の受給条件となる事由発生日前後6か月間は、会社都合退職を発生させてはいけません(例えば正規雇用転換の助成金であれば、転換日前後6カ月間、つまりトータル1年間は会社都合退職を発生させないようにしましょう)。