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【社労士が解説】企業と家族を守る災害対策とBCP——令和8年熊本地震に学ぶ、経営者のための実務と備え——

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 17 時間前
  • 読了時間: 8分
熊本地震

令和8年に発生した熊本地震をはじめ、能登半島沖地震や東日本大震災など、我が国は常に大規模災害の脅威と隣り合わせにあります。被災地の復旧と復興、そして救助・救援にあたられている行政・政府職員の方々へ心より感謝と敬意を表するとともに、被災された皆様に深くお見舞い申し上げます。

私自身、小さな子どもを持つ親であり、社会保険労務士事務所および会社を経営する立場にあります。これらの災害を目の当たりにし、「災害は決して他人事ではない」と痛感しています。家族を守り、従業員を守り、そして事業を継続させることは、経営者に課せられた最大の使命です。「東京都で大規模な地震は起きないだろう」「自分たちには関係ない」といった根拠のない楽観視は捨て、いざという時にどう対処するのか、そして平時にどのような備えをしておくべきかを真剣に考える必要があります。

本記事では、被災地への寄付を通じた支援のあり方や、企業の事業継続計画(BCP)、そして労働法務や社会保険制度の観点から、企業が今すぐ取り組むべき災害対策について、社会保険労務士の専門的な知見をもとに3つのポイントに要約し、深く解説いたします。


1.企業存続の生命線となる「事業継続計画(BCP)」の策定と実務対応

災害時に家族や従業員を守るためには、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定が不可欠です。水や食料の備蓄はもちろんのこと、現代社会において事業継続の要となるのは「電力」と「情報」の確保です。

近年、政府は中小企業の防災・減災対策を推進するため、「中小企業強靱化法」に基づく「事業継続力強化計画」の認定制度を設けています。この認定を受けることで、防災・減災設備に対する税制優遇、低利融資などの金融支援、さらには各種補助金の審査における加点措置など、様々な恩恵を受けることができます。政府の狙いは、個々の企業の防災力を高めることで、サプライチェーン全体、ひいては日本経済全体の強靱化を図ることにあります。

具体的な備えとして、自家発電設備や太陽光パネル(ソーラーパネル)、蓄電池の導入などが挙げられます。現在、国や自治体からは再生可能エネルギー関連の補助金が手厚く用意されており、これらを活用することで、環境への配慮と災害時の電力確保を両立させることが可能です。

さらに重要なのが、災害時における情報リテラシーです。有事の際には、SNS等で根拠のない噂やフェイクニュースが拡散されやすくなります。経営者や管理監督者は、正確な情報源(自治体や省庁の公式発表など)を確認し、冷静な判断を下すことが求められます。こうした情報収集体制や、従業員への情報伝達のルールも、BCPの中に明確に組み込んでおく必要があります。

実務上の注意点としては、BCPは「策定して終わり」ではないということです。環境の変化に合わせて定期的に見直しを行い、従業員参加型の訓練を実施することで、いざという時に確実に機能する「生きた計画」にしておくことが重要です。


2.災害時における従業員の安全確保と雇用維持(労働法務の視点)

災害発生時、経営者が直面する最大の課題は、従業員の安全確保と生活の保障です。労働契約法第5条には、企業が従業員の生命や身体の安全を確保しつつ労働できるよう配慮する「安全配慮義務」が定められています。災害発生時の避難誘導、安否確認システムの導入、そして帰宅困難者への対応などは、この安全配慮義務を果たすための具体的な行動となります。

また、被災により事業所が休業を余儀なくされた場合、労働基準法第26条に基づく「休業手当」の支払いが問題となります。地震や台風といった自然災害など、事業主に起因しない「不可抗力」による休業の場合、原則として休業手当の支払い義務は生じません。しかし、不可抗力と認められるためには、「外部からの異常な事象であること」と「事業主が最大限の努力を尽くしてもなお避けることのできない事象であること」という厳しい要件を満たす必要があります。実務上は、テレワークの活用や他事業所での勤務への振り替えなど、可能な限り従業員の不利益を回避するための努力が求められます。

このような緊急事態において、従業員の雇用を維持するために活用すべきなのが「雇用調整助成金」です。激甚災害に指定された場合などには、特例措置として助成率の引き上げや要件の緩和が行われることが多くあります。過去の法改正や制度改定の経緯を見ても、政府は災害時における雇用維持を最重要課題の一つと位置づけており、企業に対する支援制度は拡充傾向にあります。

さらに、被災した従業員が休業を余儀なくされた場合には、健康保険の傷病手当金や、労災保険の休業補償給付などの制度を活用し、生活基盤の維持をサポートすることが企業の重要な役割です。近年は働き方の多様化により、テレワーク中の被災や、災害に伴う通勤途上の事故など、労災の認定基準も複雑化しています。社会保険労務士などの専門家と連携し、適切な手続きを迅速に行う体制を構築しておくことが不可欠です。


3.企業の社会的責任としての支援活動と、税制優遇の活用

被災地に対する支援の方法は様々ですが、私自身は自治体へ直接寄付を行うことを心がけています。今回の令和8年熊本地震においても、熊本県が直接受け付けている義援金口座へ寄付を行いました。

令和8年熊本地震に係る義援金の受付について(熊本県)


被災地に直接思いを届けたいという心理的な理由はもちろんですが、経営者としての視点で見れば、税制上の優遇措置を受けられるという実務的なメリットも大きな理由の一つです。国や地方公共団体(都道府県や市区町村)に対する寄付金は、法人税法上「国等に対する寄付金」に該当し、法人の場合はその全額が「損金算入」されます。また、個人の場合でも「寄付金控除(ふるさと納税と同様の特例など)」の対象となり、所得税や住民税の軽減効果を得ることができます。

有事の際、企業や経営者が資金的な援助を行うことは、社会的責任(CSR)を果たす上で非常に重要です。そして、その支援行動によって企業側が税制上のメリットを享受することは、決して後ろめたいことではありません。むしろ、国は税制優遇というインセンティブを設けることで、民間からの支援資金が被災地に円滑に流れる仕組みを構築しているのです。「寄付金控除を受けたい」という動機であったとしても、結果として被災地に支援の手が届き、復旧・復興に役立てられるのであれば、それは素晴らしい行動です。

経営者としては、「結果として良くなるのであれば、あらゆる手段を用いて支援を実行する」という合理的かつ温かい思考こそが重要であると考えます。手をこまねいて何もしないのではなく、資金的な余裕がある企業や個人はためらうことなく支援の手を差し伸べるべきです。そして、もし余裕がなかったとしても、被災地を思い、自分たちにできる備えを進めること自体が、間接的に社会全体の防災力を高めることにつながります。


今後の見通しと課題解決に向けて/熊本地震

これからの時代、企業経営において災害リスクをゼロにすることは不可能です。しかし、事前の備えによって被害を最小限に抑え、復旧を早めることは十分に可能です。

今後の動向として、政府は情報技術を活用した防災体制の強化や、気候変動を見据えた労働安全衛生基準の見直しなどをさらに進めていくことが予想されます。企業側も、クラウドサービスの活用によるデータのバックアップや、テレワークを前提とした事業継続体制の構築など、最新の技術動向と法制度の変化に柔軟に対応していく必要があります。

「備えあれば憂いなし」。私たち一人ひとりがこの言葉を胸に刻み、自らの組織と家族を守るための行動を今すぐ起こすことが、将来の危機を乗り越える最大の鍵となります。


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メディア取材実績:週刊文春((株)文藝春秋)(【証拠ビデオ入手】東証上場企業・ライトアップが指南する厚労省助成金“不正受給”「おいしすぎる」「数千万円が自由に」、【全社員の4分の1近くがいなくなり…】「ウルトラマン」シリーズの円谷プロで退職者が続出していた)、TOKYO MX(堀潤 Live Junction」「医療保険制度改革で…負担増える逆転現象も」)、東京新聞『国保逃れ指摘「すでに把握しています」と言いつつ野放し 国や年金機構「脱法行為」是正がニブ過ぎるのは…』『維新だけではなかった「国保逃れ」 司法書士グループ企業でも「節約術」疑惑 厚労省「看過できない状況」』、『国保逃れ」に新たな手口 国の対策をすり抜ける「従業員型」とは…業者に接触した特定社労士が読み解く』、週刊SPA!『稼ぎながら健康になれ 50代からのガテン系仕事』、他

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