【社労士激白】「働き方改革」施行5年目の真実 — 労働時間の「新常態」と企業の生存戦略
- 坂の上社労士事務所

- 1 時間前
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働き方改革関連法が施行されてから5年。日本企業の「働く形」は劇的な変化を遂げました。しかし、現場では今、理想と現実の狭間で新たな火種がくすぶっています。
厚生労働省が発表した「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の結果(令和7年10月・12月調査)を基に、特定社会保険労務士の視点から、これからの労務管理に不可欠な「3つの深層」を読み解きます。
1.労働者の意識は「二極化」へ — WLBか、それとも「稼ぎ」か
今回の調査で最も注目すべきは、労働者の「本音」の乖離です。
1. 「減らしたい」3割 vs 「増やしたい」1割の構造
全労働者の約30.0%が労働時間を「減らしたい」と回答する一方で、約10.5%は「増やしたい」という意向を持っています。大多数の約59.5%は「このままでよい」としていますが、この「増やしたい」層の存在を無視することは、今後の人手不足対策において致命的なミスとなりかねません。
2. なぜ「増やしたい」のか? 剥き出しの経済的ニーズ
労働時間を増やしたい理由の圧倒的第1位は、「たくさん稼ぎたいから(残業代がないと家計が厳しい場合を含む)」で、合計すると約57.2%に達します。
「たくさん稼ぎたい(家計維持を除く)」:41.6%
「残業代がないと家計が厳しい」:15.6%
特に「子育て世代」や「歩合制のトラックドライバー」からは、収入確保のために長時間労働を厭わないという切実な声が上がっています。
3. 「妥当な残業時間」のコンセンサス
一方で、労働者が考える「妥当な時間外労働」については、0時間〜20時間以下が合計65.6%を占めており、月45時間を超えても妥当だと考える層は極めて少数(約7%)です。つまり、「稼ぎたいが、過酷な長時間労働は望まない」という、非常に繊細なバランスの上に現代の労働者心理は成り立っています。
2.企業のジレンマ — コンプライアンスは「採用武器」か「成長の枷」か
企業側へのヒアリング(327社)からは、働き方改革が「経営戦略」そのものに変質したことが伺えます。
1. 「現状維持・削減」派のロジック:人材確保こそが正義
「労働時間を増やしたくない」とする企業の多くは、その理由に「人材確保・定着」を挙げています。
「残業が多いと求職者から敬遠される」
「今の若手は残業を望んでいない」
「DX化を進め、時間を増やす方向には向いていない」
もはや「残業の少なさ」は福利厚生ではなく、企業が生き残るための「ブランディング」なのです。
2. 「増やしたい」派(53社)の苦悩:2024年問題の直撃
「増やしたい」と回答した企業の背景には、建設業や運輸業における「業務の特殊性」があります。
天候の影響:「豪雨や積雪による遅れを取り戻したい」
受注機会の損失:「上限規制のために、条件の良い仕事を断らざるを得ない」
人手不足の悪循環:「人が集まらないから、今いる健康な人に働いてもらいたいが、規制でできない」
特に、上限規制の枠外(月100時間超など)を希望する企業が17社存在し、そのうち15社は現状の平均残業が45時間以下であるという事実は、「万が一の事態に対応できる柔軟性」を求める現場の悲鳴と言えます。
3.政府の狙いと今後の動向 — 「総点検」から「次なる規制」へ
今回の総点検の目的は、単なる現状把握ではありません。法制の見直しに向けた「地ならし」です。
1. 改正の経緯と政府の真の狙い
政府が働き方改革を強行した背景には、生産労働人口の急減があります。
労働参加率の向上:短時間で効率よく働く環境を整え、育児や介護、高齢者など多様な人材を労働市場に引き出す。
健康確保:過労死ゼロを実現し、社会保障コストの増大を抑制する。
2. 今後の動向:副業・兼業と「労働時間通算」の緩和
ヒアリングでは、多くの企業が「副業・兼業の労働時間通算ルール」の複雑さに不満を漏らしています。政府は今後、個人のキャリア形成を促進するため、このあたりの管理負担を軽減する方向で議論を進める可能性が高いでしょう。
3. 実務上の注意点:監督指導の「深化」
労働基準監督署の指導は、今後より「細部」に及ぶことが予想されます。
ログ解析の徹底:パソコンのログと自己申告の乖離(30分程度でも)が厳しく問われる時代です。
取引慣行への踏み込み:荷待ち時間の解消など、発注者側の責任(荷主勧告制度など)をより強化する動きが加速します。
社労士からの提言:これからの労務管理「3つの処方箋」
この記事を読んでいる経営者・人事担当者の皆様、これからは「一律の管理」は通用しません。
「稼ぎたい層」への代替案提示:残業代で稼がせるのではなく、評価制度を刷新し「生産性向上へのインセンティブ(慰労金や昇給)」で報いる仕組みが必要です。
柔軟な時間制度のフル活用:変形労働時間制やフレックスタイム制を「ただ導入する」だけでなく、現場の繁忙(天候や納期)に合わせて「使いこなす」スキルが求められます。
DXによる「隠れ残業」の根絶:ツールを導入して終わるのではなく、アラート機能を活用したリアルタイムの業務調整を文化として定着させてください。
働き方改革は「労働時間を短くする運動」ではありません。「企業の生産性を最大化し、選ばれる会社になるための変革」です。
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