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【社労士解説】多様性が企業の未来を決定づける。歴史的転換点を迎える「障害者雇用」の現在地と実務対応

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分
法定雇用率

日本経済が構造的な労働力不足に直面する中、障害者雇用はもはや「福祉」や「義務」の枠を超え、企業の人的資本経営における最重要テーマの一つとなりました。令和8年(2026年)7月の法定雇用率引き上げを控え、特定社会保険労務士の視点から、実務の核心と戦略的なロードマップを解説します。


1.「37.5人の壁」をどう解読するか?実務上のカウント手法

2026年7月より、障害者雇用の義務対象が「常用労働者37.5人以上」の企業へと拡大されます。ここで重要となるのが、自社の「常用労働者数」を正しく算出することです。

常用労働者数の算定ロジック

労働者数は単純な「頭数」ではなく、週の所定労働時間によって以下のようにカウントします。

  • 1.0人としてカウント:週所定労働時間が30時間以上の労働者

  • 0.5人としてカウント:週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

  • カウント対象外(0人):週所定労働時間が20時間未満の労働者


【37.5人の算出根拠】

1人÷2.7%(0.027)= 37.03...人この計算に基づき、実務上の基準値が「37.5人」と設定されています。

例えば、「フルタイム正社員35人」と「週25時間勤務のパート5人」がいる場合、35 + (5 × 0.5) = 37.5人となり、2026年7月以降は障害者を1名雇用する法的義務が発生します。


2.段階的引き上げのスケジュールと「2.7%」への対策

法定雇用率は段階的に引き上げられており、令和8年7月にいよいよ最終ステップへ到達します。

施行時期

法定雇用率

義務対象(従業員数)

現行(令和6年4月~)

2.5%

40.0人以上

令和8年(2026年)7月~

2.7%

37.5人以上

行政報告と納付金の「タイムラグ」に注意

  • ロクイチ報告(6月1日時点の報告)

    令和8年(2026年)6月の報告は、まだ旧基準(2.5%・40人以上)で行います。新基準が適用されるのは、翌年「令和9年6月1日」の報告からです。

  • 納付金申告(100人超の企業)

    令和8年度分は、4~6月(2.5%)と7月~翌3月(2.7%)で月割計算が必要になります。予算管理において非常に複雑な対応が求められるため、早期のシミュレーションが不可欠です。


3.多様な働き方の受容:「超短時間労働」という革命

これまでの制度では「週20時間以上」が雇用の最低条件でしたが、2024年4月の改正により、さらに短い時間での雇用が評価されるようになりました。

  • 特定短時間労働者(0.5カウント)

    週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体・知的障害者が対象です。

  • 精神障害者の算定特例(1カウント)

    週20時間以上30時間未満の雇用であっても、当面の間は「1カウント」として算定可能です。

これにより、フルタイムが困難な方でも、データ入力や軽作業などの「マイクロタスク(ジョブ・カービング)」を切り出すことで、無理のない定着支援と法定率の達成を両立できるようになりました。


4.特定業界を直撃する「除外率」の引き下げ

建設業、医療業、運輸業など、業務の性質上、障害者雇用が困難とされてきた業種に認められていた「除外率」が、2025年4月に一律10ポイント引き下げられました。

  • 医療業・介護施設:30% ⇒ 20%

  • 建設業・運送業:20% ⇒ 10%

この引き下げにより、雇用すべき人数が数名単位で急増する企業も少なくありません。「現場で働けないから無理」という従来の思考を捨て、本社の事務部門やDX推進部門での職域創出が急務となっています。


5.経営戦略としてのD&Iと公的支援の活用

国は義務を課す一方で、かつてない規模の支援策を用意しています。これらを「知恵」として活用できるかが、企業価値向上の鍵です。

  1. 「障害者雇用相談援助事業」の活用

    認定を受けた専門事業者が、採用計画から定着支援までを原則無料で伴走支援します。

  2. 助成金の戦略的導入

    中途障害者の職務転換支援や、職場実習(インターンシップ)の受け入れに対する助成金が新設されています。

  3. レピュテーションリスクの回避

    未達成が続けば「企業名の公表」という致命的なダメージを負います。逆に、DE&I(多様性、公平性、包摂)への積極的な投資は、採用ブランディングやESG投資評価に直結します。


2026年7月の法改正は、単なる規制強化ではありません。多様な人材が織りなす組織へと進化するための「絶好の契機」です。制度は極めて複雑化しており、緻密な労務管理が求められます。

私たちが目指すべきは、法律を守るためだけの「数合わせ」ではなく、障害のある方もない方も、それぞれの能力を最大限に発揮できる強靭な組織づくりです。私たち社会保険労務士は、その変革の伴走者として、貴社の持続可能な成長をサポートいたします。


*障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について(厚生労働省)


【本件に関する実務相談・お問い合わせ】 今回の記事に関連する実務のご相談や顧問契約のお問い合わせなど、当事務所までお気軽にご相談ください。メディア関係者様からの解説依頼、取材も随時承っております。


坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応) マネーフォワード公認プラチナメンバー/マネーフォワード給与・勤怠 代表 特定社会保険労務士 前田力也

水道橋オフィス 東京都千代田区神田三崎町2-17-5稲葉ビル203

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お問い合わせ support@sakanouehr.com 電話03-6822-1777

メディア取材実績:週刊文春((株)文藝春秋)(【証拠ビデオ入手】東証上場企業・ライトアップが指南する厚労省助成金“不正受給”「おいしすぎる」「数千万円が自由に」)、TOKYO MX(堀潤 Live Junction」「医療保険制度改革で…負担増える逆転現象も」)、東京新聞、他

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