育休おめでとう!の笑顔の裏で深まる職場の溝、10万円で埋まりますか?社労士が明かす「全員が笑顔になる」次世代の働き方
- 坂の上社労士事務所

- 10月9日
- 読了時間: 4分

「〇〇さん、育休おめでとう!」
祝福の言葉とは裏腹に、あなたの職場に、ほんの少しだけ気まずい空気が流れていませんか?
休む側は、周囲への「申し訳ない」という罪悪感。 支える側は、増える業務への「正直、しんどい」という本音。
この「見えない壁」が、職場のチームワークを静かに蝕んでいきます。 2025年10月から改正育児・介護休業法が完全施行され、多様な働き方が推奨される今、私たちはこの根深い問題をどう乗り越えれば良いのでしょうか。
罪悪感と不公平感の連鎖を断ち切り、「全員が心から応援し合える職場」を実現する為に、「職場の溝」を埋める解決策を3つの視点で解説します。
1.「思いやり」だけでは限界。感情を「仕組み」で解決する人事戦略
【現実】
「みんなで助け合おう」という精神論は、もはや通用しません。パーソル総合研究所の調査によれば、育休者の業務をカバーする同僚の42.6%が不満を抱き、残業時間は月平均5.6時間も増加しています。この「善意への甘え」を放置する会社は、静かに活力を失っていきます。
【解決策】
今、企業が導入すべきは「感謝」と「安心」を具体化する仕組みです。
感謝の見える化(同僚手当)
三菱UFJが導入する最大10万円の「御礼金」は、まさに「ありがとう」を形にする試み。これは特別なコストではなく、チームの貢献に対する正当な投資です。国も中小企業向けに助成金(両立支援等助成金:育休中等業務代替支援コース)を用意しており、導入のハードルは決して高くありません。
休む権利の保証(配慮義務)
10月から、企業は従業員に対し、両立制度の利用意向を確認し配慮する義務を負います。「うちは人手不足だから」という言い訳は、法的に通用しなくなるのです。
感情的なしこりは、公平なルールがあってこそ解消されます。「頑張り」に報い、「休む権利」を守る。それが未来の会社のスタンダードです。
2.「あの人だけズルい」が招く、最悪の法的トラブルを回避せよ
【現実】
「時短のあの人より、フルタイムの私の方が頑張ってるのに給料が同じなのはおかしい」。こうした不公平感は、やがて職場いじめやハラスメントの温床となります。一度トラブルが起これば、会社の評判は失墜し、法的な責任を問われるリスクさえあります。
【解決策】
会社と従業員を守る最強の盾は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいた、誰の目にも明らかなルール作りです。
働いた時間と成果に報いる
時短勤務で労働時間が減るなら、業務量や役割を調整し、報酬もそれに連動させる。
カバーした貢献を評価する
周囲の業務をカバーした従業員には、そのプラスアルファの働きを評価制度や報酬に明確に反映させる。
「なんとなく」で運用することが、一番の火種になります。働き方と、それに見合う役割・報酬をクリアに定めること。それが、無用な対立を防ぎ、健全な職場環境を維持する法的視点からの答えです。
3.その10万円、手取りはいくら?知らなきゃ損する「お金」の新常識
【現実】
三菱UFJの「同僚手当10万円」という響きは魅力的ですが、そのすべてが手元に残るわけではありません。また、社会復帰を目指す主婦(主夫)層の前には、依然として「年収の壁」という大きなハードルが立ちはだかっています。
【解決策】
お金のルールを正しく理解し、賢い選択をしましょう。
「同僚手当」は課税対象
会社から支給される手当は「給与所得」です。所得税や住民税が差し引かれることを知っておきましょう。
「育休関連の給付金」は非課税
雇用保険から支給される育児休業給付金などは、税金がかかりません。これは家計にとって非常に大きなポイントです。
「100万人の潜在能力」を解放せよ
働きたいと願う100万人の専業主婦層。目先の「壁」に囚われるのではなく、税金や社会保険料を支払った後の「手取り額」がどう変わるのか、長期的な視点でシミュレーションすることが重要です。働き損を回避し、キャリアと収入を両立させる道は必ずあります。
一人が休むことは、チームにとって決してマイナスではありません。その期間は、業務の非効率な点を見直したり、情報共有の仕組みを改善したり、若手が新しい仕事に挑戦したりする絶好の機会です。
育休は、チームの総合力が試され、そして成長する最高のストレッチなのです。
「誰かが損をする」のではなく、「全員で乗り越え、全員で成長する」。そんな新しい働き方を、あなたの職場から始めてみませんか?
*ご参考:両立支援助成金(厚生労働省)
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