1ヶ月単位の変形労働時間制について、わかりやすく解説します。
1.変形労働時間制とは
法定労働時間である1日8時間、1週40時間を変形させて、業種や企業規模に応じた柔軟な労働時間を実現できる制度です。
中でも、1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月ごとに、その月内の繁閑に応じて労働時間を設定できるので、サービス業などのシフト制を用いる事業では、非常に使いやすい制度といえます。もちろん、業種を問わず、変形労働時間制を導入することは可能です。
2.導入方法
就業規則(10人未満は就業規則に準ずるもの)または労使協定により定めます。今回は、就業規則に規定するケースのみ解説します。就業規則には、以下の4つを定めることになります。
①変形期間
②変形期間の起算日
③変形期間を平均し、1週当たりの労働時間が法定労働時間を超えないこと
④各日、各週の所定労働時間
3.1ヶ月単位の変形労働時間制の時間設定の方法
まず、1ヶ月の法定労働時間には上限がありますので、それを上回る労働時間の設定はできません。1ヶ月の法定労働時間の上限は下記の通りであり、その月の暦日数や、法定労働時間の特例事業者に該当するか否かで変わってきます。
原則労働時間(週40時間)が適用される事業者の1カ月あたり上限時間
28日の月→160時間
29日の月→165.7時間
30日の月→171.4時間
31日の月→177.1時間
特例事業者(週44時間)に該当する事業者の1カ月あたり上限時間
28日の月→176時間
29日の月→182.2時間
30日の月→188.5時間
31日の月→194.8時間
※特例事業者とは、常時10人未満の従業員を使用する事業所で、次の業種に該当する事業者です。なお、事業所は場所単位で考えます。
卸売業、小売業、倉庫業、駐車場管理業、不動産管理業、出版業(印刷部門除く)、サービス業、理美容、映画制作、演劇、病院、保育園、介護施設、老人ホーム、旅館、飲食店、ゴルフ場、カラオケなど
勤務シフトを作成する際は、この上限時間を意識することになります。1日ごとの勤務時間を1カ月内で合計した結果、上限時間以下となっていれば大丈夫です。
4.実際の勤務シフト例
厚生労働省で特に指定されたものや、推奨のものはありません。1日ごとの勤務時間、1ヶ月の合計時間が分かるような勤務表を、エクセルなどで作成頂ければ問題ありません。雛形をご参考下さい(あくまでもひな形です。アレンジしてご使用下さい)。
5.1カ月単位の変形労働時間制における時間外労働の計算方法
流れとしては、1日⇒1週⇒1カ月でカウントしていくことになります。
①1日単位
就業規則で1日8時間を超える時間を定めた場合はその時間、それ以外の日は1日8時間を超えて労働した時間
例】1日の所定労働時間を10時間で設定⇒実際は11時間勤務した⇒1時間が時間外
例】1日の所定労働時間を7時間で設定⇒実際は9時間勤務した⇒1時間が時間外
②1週単位
就業規則で1週40時間(44時間)を超える時間を定めた場合はその時間、それ以外の日は1週40時間(44時間)を超えて労働した時間 ※上記①で時間外となった時間を除く
例】1日の所定労働時間を50時間で設定⇒実際は55時間勤務した⇒5時間が時間外
例】1日の所定労働時間を36時間で設定⇒実際は42時間勤務した⇒2時間が時間外
③1カ月単位
1カ月あたり法定労働時間上限(前記「3.1ヶ月単位の変形労働時間制の時間設定の方法」ご参考)を超えた場合 ※上記①②で時間外となった時間を除く
例】1カ月の法定労働時間上限が177時間⇒実際は190時間勤務した⇒13時間が時間外
この時間外労働のカウントは非常に複雑ですので、ご不明な場合はお問い合わせ下さい。
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