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【社労士が解説】はま寿司「洗剤ドバドバ」動画拡散等の迷惑行為と企業の防衛策――裁判例から読み解く法的制裁と、カスハラ法制化に向けた安全配慮義務

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 2 時間前
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はま寿司

近年、飲食店等における客の悪質な迷惑行為、いわゆる「客テロ」の動画がSNSで拡散される事態が後を絶ちません。直近でも、大手回転寿司チェーン「はま寿司」とみられる店舗で、レーン上の寿司に洗剤をかけるという極めて悪質な動画が拡散され、同社は「到底容認できない」として警察への相談を含め厳正に対処する方針を示しています。

これらの事象は、単なる「対顧客のトラブル」として片付けることは到底できません。企業のブランドイメージや株価に甚大な被害を及ぼすだけでなく、現場で働く従業員の身体的・精神的な安全を脅かす「重大な労務管理上の脅威(広義のカスタマーハラスメント)」です。

本記事では、社会保険労務士(社労士)の視点から、過去の代表的な裁判例を整理するとともに、法制化が進むカスハラ対策と企業が講じるべき実務対応について解説します。


1.【法務・司法】一目でわかる「客テロ」裁判例――巨額賠償と実刑判決の実態

SNSの承認欲求を満たすための悪ふざけは、企業に計り知れない経済的損失をもたらします。現代の企業はこれに対し、民事・刑事の両面から一切の妥協を許さない姿勢を示しています。近年の代表的な事件を以下の表にまとめました。

【飲食店における客の迷惑行為に関する裁判例・対応一覧】

事件名・概要

企業の対応・損害賠償額等

裁判例・刑事処分の結果

スシロー 醤油ボトル舐め回し事件少年の客が醤油ボトルや湯呑みを舐め回し、レーン上の寿司に唾液をつける動画を投稿。

約6,700万円の損害賠償を求めて提訴。アクリル板設置等に多額の費用を投じる。

【民事】調停成立(和解)少年側が謝罪。最終的な支払額は非公表だが、企業側は訴えを取り下げた。

吉野家 紅生姜直食い事件卓上の共用容器に入った紅生姜を、自身の箸で直接かきこんで食べる動画を投稿。

警察へ被害届を提出。当該店舗の紅生姜廃棄、全容器の洗浄・消毒を実施。

【刑事】懲役2年4ヶ月、罰金20万円の実刑判決威力業務妨害罪および器物損壊罪。※別件と併合。

くら寿司 醤油差し舐め事件客が醤油差しの注ぎ口を直接口に含むような動画を投稿。

被害届提出。AIカメラによる不審行動検知システムを全店に導入する莫大な投資を実施。

【刑事】懲役3年、保護観察付き執行猶予5年裁判長は「外食チェーンへの重大な妨害」と認定。

【解説と今後の見通し】

民事裁判においては、加害者側が支払えず自己破産するリスクや和解により、最終的な損害賠償額が非公表になるケースが一般的です。しかし、スシローのように数千万円規模の賠償請求を「実際に提訴する」こと自体が、模倣犯への強固な抑止力となります。 また、吉野家やくら寿司の事例のように、刑事裁判においては「威力業務妨害」や「器物損壊」として実刑を含む厳しい有罪判決が下されるのがスタンダードになりつつあります。今回のはま寿司の「洗剤混入」は、他者の健康や生命を直接的に脅かす極めて悪質性の高い行為であり、過去の事例以上に厳しい司法的判断が下される可能性が高いと予測されます。


2.【労務管理】「客テロ」は労災に発展する――カスハラ対策の法制化と安全配慮義務

こうした迷惑行為を「企業と迷惑客のトラブル」という経営視点だけで捉えるのは非常に危険です。社労士の視点から見れば、これは現場の従業員を矢面に立たせる「労働環境の破壊」そのものです。

カスハラ対策の「義務化」に向けた政府の動き

現在、厚生労働省をはじめとする政府は、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に対し、企業に防止対策を義務付ける法整備の準備を本格化させています。現行のパワハラ防止法を拡張し、「顧客や取引先からの不当な要求や迷惑行為」に対しても、事業主への相談体制の整備や被害者のケアが義務化される方向で進んでいます。

企業の「安全配慮義務違反」リスク

労働契約法第5条において、企業は「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務(安全配慮義務)を負っています。「客が勝手にやったことであり、防ぎようがない」という弁明は通用しません。企業が組織として「到底容認できない」「警察に相談する」という毅然たる方針を打ち出し、物理的対策(AIカメラ導入など)や防衛体制を講じなければ、万が一従業員が心身を病んで退職した場合、企業が従業員から安全配慮義務違反で損害賠償を請求されるリスクがあるのです。


3.【実務対応】社労士が提言する、企業が直ちに講じるべき「3つのアクション」

今後、法改正が現実のものとなれば、企業にはより厳格な体制整備が求められます。多店舗展開を行う外食・小売業が直ちに講じるべき必須アクションを提言します。

  1. 就業規則の改定と「対カスハラ・迷惑行為基本方針」の策定

    企業として「悪質な迷惑行為や不当な要求には屈せず、警察・弁護士等と連携して毅然と対応する」という方針を社内外に宣言します。就業規則には「従業員は著しい迷惑行為を受けた場合、速やかに報告し、会社はこれを保護する」旨を明記します。

  2. 現場向け「超実践的」初期対応フローの構築

    不審な行為を発見した際、現場のアルバイトが一人で抱え込まないよう、すぐに店長へ、店長から本部(または警察)へ即座に連絡がつくホットライン(エスカレーションルート)を整備します。また、被害状況の記録や防犯カメラ映像の保存手続きなどをマニュアル化し、定期的な研修を行います。

  3. 被害に遭った従業員のメンタルヘルスケアと労務対応

    事件現場に居合わせた、あるいはクレーム処理に追われた従業員に対し、産業医や社外の専門機関(EAP等)によるカウンセリング窓口を直ちに案内できる体制を整えます。無理に出勤を強いるのではなく、特別休暇の付与や配置転換など、心身の回復を最優先とした労務対応が求められます。


今後の展望と企業のあり方

人命や健康被害に直結しかねない悪質な事案に対しては、社会全体での監視の目と、厳罰化への機運がより一層高まっていくでしょう。

企業に求められるのは、従来の「性善説に基づくサービス提供」からの脱却です。大多数の優良な顧客へのホスピタリティは維持しつつも、裏側では物理的な防衛システムと、強固な労務管理体制という「性悪説を想定した危機管理システム」を併せ持つことが、事業継続の必須条件となります。

企業が毅然とした態度で法的制裁を求め、同時に自社の従業員を全力で守り抜く。法改正を先取りし、この両輪を適切に回すことこそが、企業のブランド価値と優秀な人材を維持するための唯一の道であると強く警鐘を鳴らします。


レーン上の回転寿司に“洗剤ドバドバかけ”動画が急拡散、はま寿司は「到底容認できない」現在は店舗特定中(ピンズバNEWS編集部)


職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)


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坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応) マネーフォワード公認プラチナメンバー/マネーフォワード給与・勤怠 代表 特定社会保険労務士 前田力也

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