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【社労士前田の経営哲学】「質の低い顧客」との決別と「真の顧客」の条件。限りある時間と専門知を誰に注ぐべきか

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 6月3日
  • 読了時間: 6分
社労士

企業経営において、「どのような顧客と付き合うべきか」という問いは、そのまま「自らがどのような組織でありたいか」という根源的な自問自答に直結する。

結論から申し上げれば、不当な要求を繰り返し、対等な関係を築けない質の低い顧客を相手にする必要は一切ない。なぜなら、そのような関係に大切な時間を奪われることは、本来最大限の力を尽くすべき「真の顧客」への貢献をおろそかにする結果を招き、ひいては心理的な負担による業務の質の低下という、本末転倒な事態を引き起こすからである。

本稿では、私がなぜ「無理をしてまで仕事を受注しない」という選択を明確にしているのか。その根底にある経営者としての哲学と、「良質な顧客」の真の定義、そして社会保険労務士という業界全体に向けた提言を記したい。


1.質の低い関係性がもたらす「本末転倒」

無理をして質の低い仕事を引き受けることは、事務所の経営目線から見ても、また顧客の目線から見ても、誰一人として幸せにならない。双方向にとって不利益を生む関係を、目先の利益のために惰性で続ける必要性はどこにもない。

私のような実務の専門家は、顧客との「長期的な信頼関係」を最も重視している。長くお付き合いし、企業の成長に深く伴走することを前提としているからこそ、自らの理不尽な要求だけを押し付けてくるような、短期的な視野しか持たない相手と契約を継続する意義も利点も見出すことはできないのである。


2.経済的自立がもたらす「断る自由」と真の使命

私は幸いにして、住宅をはじめ、複数台の車両(自動車2台、自動二輪車1台、電動トライク1台)といった大きな買い物においても一切の債務を持たず、一定の強固な財務基盤と金融資産を築いている。

これを述べるのは、決して上から目線で相手を見下したり、自身の成功を誇示したりするためではない。経済的なゆとりがあるからこそ、「事務所の運営を維持するためだけに、無理をして質の低い仕事を受注しなくてもよい」という、極めて純粋で独立した判断ができるという事実をお伝えしたいのだ。

無理をして質の低い仕事に追われ、真に提供すべき価値が損なわれるような事態を避けることができる。つまり、私や当事務所の知見を心から必要とし、その価値を共有していただける「良質な顧客」に対してのみ、自らの持てるすべての力を注ぎ込むことができる。これこそが、専門家として私に与えられた真の使命であると確信している。


3.40代の決断。限りある「時間」の使い道

時間は有限である。対話をする際も、無闇に相手の時間を奪ってはならないのと同じように、自らの時間もまた等しく尊い。

私自身も40代の半ばを過ぎ、最前線で持てる力のすべてを注ぎ込める時間は、20代の頃のように無限に残されているわけではない。その残された貴重な仕事人生において、質の悪い顧客に拘束され、強い圧迫感や労苦を抱えながら仕事をするのか。それとも、良質な顧客とともに歩み、質の高い高度な業務と成果を提供し続けるのか。

当然、選ぶべきは後者である。私はこのごく当たり前の理屈を、自身の経営においてただ愚直に実践しているに過ぎない。


4.では「良質な顧客」とは何か。対価と信頼の真髄

では、私たちが限られた時間と持てる力のすべてを注ぎ込むべき「良質な顧客」とは、一体どのような存在を指すのだろうか。

支払われる対価が高額であれば、それは良質な顧客と言えるのだろうか。事業を営む以上、経済的な合理性がひとつの指標となることは紛れもない事実である。しかし、本質は決してそれだけではない。

私の事務所には、当方が提示する額のみならず、その業務に対して十分すぎるほどの対価を快くお支払いくださる顧客が存在する。これは大変ありがたいことである。なぜならそれは、単に資金が潤沢だからという理由ではなく、支払う金額以上に「我々という専門家を深く信頼している」という何よりの証左だからである。中には、当方からではなく、顧客の方から「十分な貢献をしてくれているのだから、報酬を値上げしてほしい」とご提案くださる方すらおられる。

そのような深い信頼と評価を寄せてくださる顧客に対して、私は持てる力の百二十パーセントで応えたいと心から思う。仮に急を要する事態や困難なご要望であっても、不満や負担を感じることは一切なく、むしろ喜んで全力を尽くすことができる。

一方で、社会通念上の「金銭の価値」というものを全く理解していない事業者も存在する。例えば、二万円という対価しか支払わないのであれば、当然ながら二万円の範囲内で提供できる役務には限界がある。この当たり前の理屈すら通用せず、「極端に少ない対価で、自らの過大な要求をすべて通そう」とする経営者とは、そもそも対等な対話など成り立ち得ない。

「良質な顧客」とは、専門家の知見に対する適正な対価をお支払いいただけることは大前提として、常に相手に対する「配慮」と「尊敬の念」を決して忘れない経営者のことである。相手の専門性に敬意を払い、互いの時間を尊重し、思いやりのある対応ができる。そのような高い人格を備えた経営者こそが、我々が持てる力のすべてを注ぎ込んで支援すべき「真の良質な顧客」なのである。


5.業界全体への提言。「1社を失う」ことを恐れない強さ

私は、他の社会保険労務士事務所や専門家の方々にも、これと同じくらいの「誇り」と「強気」を持ってビジネスに臨んでいただきたいと願っている。

「1社の契約を失うこと」を恐れるあまり、理不尽な要求に屈し、疲弊していく専門家は少なくない。しかし、自らの専門性と提供する価値に自信を持ち、毅然とした態度で不当な顧客との関係を断ち切る勇気を持つべきだ。

その誇り高き姿勢の連鎖こそが、社会保険労務士という職業の価値を高め、業界全体に必ずや大きなプラスの効果をもたらすと、私は信じて疑わない。


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