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こども家庭庁「若者10万人調査」から読み解く、次世代の人事労務管理と企業の未来戦略

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 2 日前
  • 読了時間: 6分
こども家庭庁

こども家庭庁が実施した「若者10万人の総合調査」(有効回答数約6万7900人、令和8年実施)は、15歳から39歳までの若年層が現代社会において抱える生々しい課題を浮き彫りにしました。私自身、3人の子供たちに対して数学や国語、そして情報技術(IT)の知識を中心とした家庭学習環境を整え、次世代の成長と日々向き合う中で、彼らが将来直面するであろう社会の厳しい現実に対し、強い危機感と関心を持っています。  

本調査の結果を1つの言葉で表すならば、若者が抱える「経済的不安」、「時間的余裕の欠如」、そして「孤立と人間関係の悩み」の深刻化です。企業の人事労務管理において、これらの社会課題は決して対岸の火事ではありません。少子高齢化による労働力不足が叫ばれる中、若年層の労働力を確保し、定着させ、意欲的に働いてもらうためには、企業側が彼らの価値観や苦悩を深く理解し、具体的な制度として応えていくことが不可避となっています。  

本記事では、この膨大な調査結果を社会保険労務士の視点で解析し、今後の法改正の動向や実務上の細かな注意点を踏まえつつ、企業が直ちに取り組むべき課題解決策を3つの視点から詳しく解説します。


1.経済的不安の払拭と社会保険・賃金制度の再構築

調査結果が示す「お金」への強い不安

調査結果によれば、結婚に対する意識において「すぐにでも結婚したい」と回答した若者はわずか9.5%、「2〜3年以内に結婚したい」は10.3%にとどまりました。その背景にある結婚の最大のハードルとして、「経済的不安」や「安定した結婚生活を送れる収入への不安」が上位に挙げられています。また、普段感じている困りごととしても、「自分や家族の収入が少なく生活が苦しい」(31.9%)との回答が多く見られ、若年層の経済的基盤の脆さが将来への希望を奪っている現状が確認できます。  

政府の狙いと法制度の変遷

こうした若年層の経済的不安を是正するため、政府は継続的な最低賃金の引き上げと、同一労働同一賃金(雇用形態に関わらない不合理な待遇差の禁止)の徹底、そして社会保険の適用拡大を強力に推進してきました。特にパートタイム労働者等への社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大は、将来の年金給付額を手厚くし、労働者の生活の安全網(セーフティネット)を強化するという明確な狙いがあります。企業規模要件は段階的に引き下げられており、今後さらに要件が撤廃され、より多くの労働者が社会保険の対象となる方向で議論が進んでいます。


2.「時間的余裕」の創出と業務自動化による働き方の刷新

「余暇・趣味」を最優先する若者の価値観

調査において、非常に特徴的であったのが「時間」に対する価値観です。結婚より優先されるものとして、男女や年齢階級を問わず「余暇・趣味を楽しむこと」が約5割という極めて高い水準を示しました。また、結婚のハードルとしても「自由な時間がなくなる・趣味時間の短縮」が上位に位置しています。現代の若者は、経済的豊かさと同等かそれ以上に、自身の自由な時間を何よりも重んじているのです。  

政府の狙いと時間外労働規制の強化

働き方改革関連法によって導入された時間外労働の上限規制(罰則付き)や、年次有給休暇の年5日取得義務化などは、まさにこの「時間的余裕の創出」を国レベルで強制的に後押しするものです。労働時間の短縮は、過労死等の健康被害を防止するだけでなく、労働者が自己実現を図り、学び直し(リカレント教育)による新たな技能を獲得する時間を生み出すという国家的な目的が含まれています。


3.見えない孤立(メンタルヘルス・ヤングケアラー)と企業の役割

人間関係の苦悩と公的支援の認知度不足

本調査で忘れてはならないもう1つの側面が、若者の見えない孤立です。普段の困りごととして「自分の見た目(容姿・体型)が気に入らない」(56.7%)、「将来の仕事・キャリアの見通しが持てない」(51.7%)、「人を信頼することが難しい」(55.5%)など、自己肯定感の低さや人間関係の悩みが上位を占めました。未婚の30代においては、生活満足度が低く、孤独・孤立感が高い傾向も確認されています。  

さらに、家族の中に「お世話」をしている人(ヤングケアラーを含む)がいる割合は15.5%に達し、その相手は「祖母」や「母」が多いという実態が判明しました。その一方で、国や自治体からの行政サービスについて「どのようなものがあるのか、よくわからない」と回答した者が77.5%に上り、助けを必要とする若者に公的な支援の手が届いていない現実が浮き彫りになっています。  

法制度の動向と企業の新たな役割

現在、育児・介護休業法の改正により、仕事と介護の両立支援が強化され、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度など、職場におけるメンタルヘルス不調を未然に防ぐ枠組みは徐々に整備されています。しかし、制度が存在するだけでは、自ら声を上げられない若者を救うことはできません。


これからの企業に求められる姿勢/こども家庭庁調査を受けて

若者10万人の悲痛な声は、これからの日本社会を支える労働者の切実な訴えであり、同時に新しい働き方への強い要望書でもあります。「経済的な安定」「時間の自由」「精神的な安心」、この3つの要素を高い次元で提供できる企業だけが、今後の過酷な人材獲得競争を生き残ることができます。

厳格な法令遵守を組織の土台としつつ、最新の給与・勤怠管理システムを積極的に活用して業務を効率化し、そこで浮いた資源を「人」に投資する。そのような好循環を生み出し、従業員一人ひとりに寄り添う体制を築くことこそが、これからの経営者および人事労務担当者に課せられた最大の使命と言えるでしょう。


未婚若者の約3人に1人が「結婚するつもりはない」 こども家庭庁 若者10万人を対象にした調査実施 SNSの年齢制限については5割超が肯定的(TBSテレビ、Yahoo!ニュース)


若者10万人の総合調査 (ウェブアンケート調査・途中経過)(こども家庭庁)


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