第6話「進化した刃〜ハラスメントという名の冤罪〜」/架空エンタメ労務ドラマ『リーガル・ハウンド 〜一億円の社労士〜』


※本記事は、特定社会保険労務士・前田が実務経験から着想を得て考案した架空のフィクションドラマの台本です。実務のリアルなエッセンス(ハラスメントの虚偽申告、録音データの切り貼り偽造、処分の相当性原則、相談窓口の傾聴スキル等)を盛り込んでおりますが、エンターテインメント性を高めるため、主人公の言動などは多分に過剰な表現が含まれております。あらかじめフィクションとしてお楽しみください。
【登場人物】
神宮寺 尊(じんぐうじ たける・45):主人公。特定社会保険労務士。普段は極めて傲慢だが、ハラスメント相談を受ける際だけは、セカンドハラスメントのリスクを完全に封じ込めるため「究極の傾聴・人格者モード」へとキャラを切り替える。
星野 明かり(ほしの あかり・25):神宮寺の新人助手。先生の突然のキャラ変にドン引きしつつも感心する。
霧島 玲奈(きりしま れな・30):東京労働局 雇用環境・均等部 指導官。若くして抜擢されたガチガチのキャリアウーマン。「労働者の保護」「ハラスメント絶対悪」という強烈な正義感に溢れており、企業側を厳しく追及する。
美波 さくら(みなみ さくら・28):PR会社「フロント・ライン」の女性社員。自己愛が強く、思い通りにならないとハラスメントをでっち上げる。
武田 社長(たけだ・50):PR会社「フロント・ライン」社長。
【第6話あらすじ】
PR会社「フロント・ライン」の女性社員・美波は、上司からの極めて軽微な業務指導を「パワハラ」だと主張し、上司の懲戒解雇という過剰な処分を求めていた。和解や修復も一切受け入れない彼女に対し、顧問である神宮寺は「中立な事実調査の結果、処分の相当性・合理性がない」とバッサリ切り捨てる。これに逆恨みした美波は、外部の合同労組を巻き込み、なんと「神宮寺から面談でセカンドハラスメントを受けた」と労働局へ虚偽の申告を行う。神宮寺の言葉を巧妙に切り貼りした「偽造録音データ」を武器に、労働局の正義感溢れる若き女性指導官・霧島が神宮寺を追い詰める。ハラスメントという「進化した刃」を振り回すモンスター社員と、それに乗っかる行政に対し、神宮寺の冷酷なる反撃が始まる——。
シーン1:神宮寺の事務所(面談開始前)
(場面指定)
神宮寺が、武田社長に対していつもの「傲慢モード」で説教をしている。
神宮寺
「……武田社長。貴様、こんな『ゴミのような企画書』を通そうとしたのか。管理職のマネジメント不足も甚だしい。こんな無能な役員はさっさと現場から消えろと言いたいね」
武田社長
「ひぃっ、すみません……! で、でも先生、今日は例の『パワハラ被害を訴えている美波』との面談が……。彼女、外部の組合(ユニオン)の入れ知恵で、ICレコーダーを隠し持っている可能性が高いです。どうか言葉には気をつけて……」
神宮寺
「(鼻で笑い)私を誰だと思っている。労働法の番犬だぞ。(時計を見て)……よし、時間だ。星野君、私自身のレコーダーも回せ。『完全防備(リスクマネジメント)』でいくぞ」
(ドアがノックされ、美波が入室してくる。その瞬間——)
神宮寺
「(表情がスッと仏のように穏やかになり、声のトーンが2オクターブ上がる)……美波さんですね。お待ちしておりました。本日は勇気を出してご相談にお越しいただき、本当にありがとうございます。どうぞ、こちらのソファーへ。温かいお茶をお出ししますね」
明かり
「(えっ!? 誰この人!? 怖っ!!)」
シーン2:神宮寺の事務所(ハラスメント相談モード)
(場面指定)
神宮寺は美波に対し、完璧な姿勢で相槌を打ち、「間」を大切にしつつ、お互いの信頼関係の形成を意識しながら傾聴している。
美波
「……だから! 佐々木課長がいきなり会議室で『こんな企画書じゃ出せない、もっと頭を使え!』って大声で怒鳴ったんです! 私、ショックで夜も眠れなくて……! あんなパワハラ上司、絶対に懲戒解雇にしてください!」
神宮寺
「(深く頷き、共感の表情を浮かべて)ええ、ええ。皆の前で大声を上げられ、さぞお辛かったでしょう。心中、お察しいたします。私どもで第三者への事実確認を行いましたところ、確かに佐々木課長が大声で不適切な指導を行った事実が確認できました」
美波
「ですよね! じゃあクビで!」
神宮寺
「(静かに、しかし毅然と)お聞きください、美波さん。会社は決してハラスメントを容認しません。佐々木課長には先ほど、就業規則に基づく『譴責(けんせき)処分』を下し、始末書の提出を命じました。そして『今後、二度と同じような感情的な指導を行えば、次は降格以上の重い処分を下す』と強く釘を刺し、本人も深く猛省しております」
美波
「は……? 譴責と始末書だけ? クビじゃないんですか!?」
神宮寺
「(穏やかに微笑みながら)はい。労働法制における処分の鉄則として『相当性の原則』がございます。佐々木課長は普段は大変温厚な方であり、今回が初めての行き過ぎた指導でした。事の発端が美波さんの度重なる納期遅れであったことも考慮すると、初回からいきなり『懲戒解雇』等の重い処分を下すことは、法的に認められないのです。今回は、どうかこの厳正な処分と指導で、和解へと歩み寄っていただけないでしょうか」
美波
「(顔を真っ赤にして立ち上がり)納得いきません! 納期遅れなんて関係ない! 私は傷ついたんです! あなた、会社側について私を丸め込もうとしてるんですね!? 最低! 痛い目を見せてやるわ!!」
(美波、バンッとドアを強く閉めて出ていく)
明かり
「せ、先生……。あんなに完璧な対応だったのに、ブチギレて帰っちゃいましたよ……」
神宮寺
「(スッといつもの冷酷な表情に戻り、ネクタイを緩める)フン……。自分のミスを誤魔化すために、過剰な処分を盾にして私怨を押し通そうとする。典型的な『疑似被害者』だ。……さて、彼女がどう出るか。お手並み拝見といこうか」
シーン3:数日後、フロント・ライン 本社 会議室
(場面指定)
緊張感が漂う会議室。神宮寺と武田社長の前に座っているのは、東京労働局 雇用環境・均等部 指導官の霧島玲奈(30)。若くして抜擢されたエリートらしく、隙のないスーツ姿で怒りを滲ませている。
霧島
「武田社長。御社の社員である美波氏から、外部労組を通じて労働局に重大な申告がありました。上司のパワハラ被害を訴えたところ、御社の顧問社労士である神宮寺氏から、威圧的な『セカンドハラスメント』を受け、精神的苦痛により現在休職している、と」
武田社長
「えっ!? 先生からハラスメント!? そんな馬鹿な!」
霧島
「(タブレットをバンッと机に置き)これが、美波氏が隠し録りしていた面談時の証拠音声です!」
(タブレットから音声が流れる)
『神宮寺の音声:貴様が出したのは、ゴミのような企画書だ。無能はさっさと現場から消えろと言いたいね』
霧島
「(強い正義感と怒りを持って神宮寺を睨む)神宮寺先生。あなたは専門家でありながら、相談者に対して『ゴミ』と暴言を吐き、退職を強要した。ハラスメントを隠蔽するばかりか、自ら労働者の尊厳を傷つけるなど……絶対に許されない悪質な行為です!」
明かり
「(焦って)違います! 先生は美波さんにはそんなこと一言も……!」
神宮寺
「(葉巻をくゆらせ、鼻で嘲笑う)……フッ。若いな、霧島指導官。『労働者は絶対の弱者であり、常に被害者である』……そんな青臭い正義感を丸出しにして。吐き気がするほど三流だ」
霧島
「なんですって……! この明確な証拠音声があるのに、まだシラを切るつもりですか!」
神宮寺 「(立ち上がり、氷のように冷酷な眼差しで見下ろす)最近の労働判例もまともに読んでいないのか? 『NGワード一発アウト』などという短絡的な判断はとうの昔に終わっている。言葉尻だけを捕らえるのではなく、その前後の状況や文脈を総合的に評価して判断するのが現在の裁判所のスタンダードだ。そんな基本すら知らずによく『均等部』を名乗れたものだな」
霧島
「な……っ! しかし、この音声には明確な暴言が……!」
神宮寺
「証拠だと? くだらん。労働者側が提出した『都合の良い切り取り音声』など、法廷ではただのノイズだ。貴様は、モンスター社員が私怨で切り貼りした『工作物』を鵜呑みにし、前後の文脈(コンテクスト)を検証する労すら怠った……ただの節穴だ!」
霧島
「き、切り取り……? まさか、この音声が偽造だとでも……!」
神宮寺
「星野君。うちの暗号化サーバーに保存してある『面談の完全ノーカット版原本』を流せ」
星野
「はい!」
(ノートPCを操作すると、シーン2の神宮寺の『究極の傾聴モード』の音声が流れる。「美波さんですね。お待ちしておりました」「心中、お察しいたします」という仏のように穏やかな声が響き渡る)
霧島
「(目を見開く)な……この信じられないほど丁寧で、相談者に寄り添った完璧な対応は……。じゃあ、さっきの暴言の音声は……!?」
神宮寺
「私が美波氏の入室前に、武田社長の『マネジメント不足』を叱責した際の音声を切り取り、あたかも自分に向けられた暴言であるかのように繋ぎ合わせただけだ。ハラスメント相談窓口の担当者が、二次被害を防ぐためにどれほど細心の注意を払うべきか。この私が、言葉の端を握られるような三流のミスを犯すとでも思ったか!」
霧島
「(完全に青ざめて狼狽する)そ、そんな……労働者が、自ら証拠を偽造するなんて……!」
神宮寺
「(容赦なく畳み掛ける)彼女の目的は『自分のミスを隠蔽し、気に入らない上司を不当に排除すること』だ! 会社は厳格に事実認定を行い、加害者には処分の相当性に則った適正な処置を下した。私はプロとして、法的なプロセスを完璧に実行しただけだ!」
霧島
「……っ!」
神宮寺
「それを逆恨みし、音声を偽造して労働局(あなた方)を巻き込み、会社と私に謂れのないペナルティを与えようとした。これこそが企業秩序を破壊する真の不法行為だ! 霧島指導官、貴様は己の青臭い正義感に酔いしれた挙句、虚偽申告を行う害虫の『凶器』に成り下がったんだ!」
(霧島、完全に論破され、ブルブルと震えながらファイルを閉じる)
神宮寺
「……貴様のその杜撰な調査の実態、厚生労働省の監察室に報告書を上げて、その薄っぺらいキャリアを終わらせてやってもいいんだぞ?」
霧島
「(屈辱に顔を歪め、絞り出すように)……今回は、当方の重大な事実誤認がありました。本件に関する行政指導は、即時取り下げといたします……失礼します」
(霧島、打ちのめされた様子で逃げるように会議室を後にしていく)
武田社長
「(へたり込み)た、助かった……。証拠を偽造するなんて信じられません。先生、彼女はどうしますか? 当然、懲戒解雇ですよね!?」
神宮寺
「(冷たく言い放つ)馬鹿者。いくら悪質とはいえ、初犯での懲戒解雇は『処分の相当性』を欠く。不当解雇リスクを残すような三流の真似はせん。……今回の処分は『出勤停止』および『譴責』に留める」
武田社長
「そ、そんな! 会社を陥れようとしたんですよ!?」
神宮寺
「処分は適正に留める。……だが、同時に厳重な『最終警告書』を突きつける。『今後、二度と虚偽申告や悪質な業務妨害を行った場合は、いかなる弁明も容れず懲戒解雇とする』とな。逃げ道を完全に塞いだ上で、自らの嘘と行いの代償を、本人の目で直視させてやる」
シーン4:数日後、神宮寺の事務所
(場面指定)
ニュース番組の音声が流れている。
『……近年、ハラスメントの虚偽申告や音声データの改ざんによる企業への不当な要求が増加しており、専門家は「企業側の録音等の防衛策と、客観的な事実認定の重要性」を指摘しています……』
明かり
「(興奮気味に)先生! 例の美波さん、出勤停止処分と警告書を受け取った後、すぐに『自主退職』の届出を出してきたそうです! ユニオンからも『証拠の偽造はかばいきれない』って見捨てられて、嘘がバレた職場にはもう居づらくなったみたいですね。結果的に一番スッキリする形になりました!」
神宮寺
「(最高級のレザーソファに深く腰掛けながら)当然だ。自己愛を守るために法の盾を悪用するような輩は、本物の法の重圧(ペナルティ)と、自らの嘘が白日の下に晒された職場には、一秒たりとも耐えられない。……これも計算通りの『自主退職』だ」
明かり
「それにしても……先生のあの『ハラスメント相談モード』の仏様みたいな声と態度、思い出すだけで鳥肌が立ちます。ある意味、普段より怖かったです……」
神宮寺
「(不敵に笑い)法律家たるもの、あらゆる局面を想定して、自身のキャラクターすらも完全にコントロール(適法化)できなくてどうする」
(神宮寺、そう言いながら、なぜか机の上に置かれていた『超特大タピオカ入り・激甘チョコミントシェイク』に極太のストローを差して、ズズズッと音を立ててすする)
明かり
「……先生。毎回言ってますけど、せっかくのプロフェッショナルな威厳が、その飲み物で台無しですよ? しかも今回は『チョコミント』って……歯磨き粉飲んでるみたいじゃないですか!」
神宮寺
「(真顔でストローから口を離し)馬鹿者。強烈なミントの清涼感と、絡みつくチョコレートの甘み、そして底に沈むタピオカの不規則な弾力。この矛盾に満ちたテクスチャーこそが、人間の嘘と悪意を暴き出し疲労した私の脳を、極限まで癒すのだ(ズズズッ)」
明かり
「(呆れてため息をつく)……はぁ。やっぱり先生の味覚の裁量権は、完全に逸脱してますね」
神宮寺
「黙れ。私は神の代行者だ。(激甘チョコミントシェイクを飲み干す)」
次回リーガル・ハウンド予告
第7話「沈黙の時限爆弾と5000人の一斉蜂起〜2026年パート法改正・隠蔽された不利益変更〜」
次回リーガル・ハウンドもお楽しみに!
執筆 特定社会保険労務士 前田力也(個人)
※本記事(ドラマ台本および法的見解)の著作権は、特定社会保険労務士 前田力也(個人)に帰属します。無断での転載、複製、改変、およびSNS等への無断引用を固く禁じます。
【本作のタイトル『リーガル・ハウンド』の趣旨について】
英語圏において、法廷で大局的な論争を繰り広げるエリート弁護士は、しばしば「リーガル・イーグル(法律の鷲)」と称されます。空から事案を俯瞰し、法理という翼で戦う彼らに対し、本作の主人公である社会保険労務士は「リーガル・ハウンド(法律の猟犬)」として位置づけました。
社労士の主戦場は、華やかな法廷ではなく泥臭い「現場」です。
巧妙に偽装された労働実態、意図的に隠蔽された社会保険逃れのスキーム、あるいは偽装請負のような不適切な契約関係など、表面的な書類だけでは見えない企業の闇に対し、彼らは地を這うように事実を嗅ぎ回り、証拠をかき集めます。
特権的なエリートとして上段から裁くのではなく、労働現場の最前線に密着し、執念深くコンプライアンスの矛盾を追い詰めていく。本作は、弁護士(鷲)と社労士(猟犬)という明確な役割の棲み分けのもと、実態調査と論理の力で労働社会の不条理に立ち向かう「猟犬」のリアルな戦いを描くことを企図しています。
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メディア取材実績:週刊文春((株)文藝春秋)(【証拠ビデオ入手】東証上場企業・ライトアップが指南する厚労省助成金“不正受給”「おいしすぎる」「数千万円が自由に」、【全社員の4分の1近くがいなくなり…】「ウルトラマン」シリーズの円谷プロで退職者が続出していた、《50万円の賠償金が…》開業25周年のUSJに違法契約の疑い【契約書入手】、《バイオハザードのゾンビ役が告発》USJの出演者は最低賃金以下で働いていた!《報酬は交通費込みで1日1.3万円》)、TOKYO MX(堀潤 Live Junction」「医療保険制度改革で…負担増える逆転現象も」)、東京新聞『国保逃れ指摘「すでに把握しています」と言いつつ野放し 国や年金機構「脱法行為」是正がニブ過ぎるのは…』『維新だけではなかった「国保逃れ」 司法書士グループ企業でも「節約術」疑惑 厚労省「看過できない状況」』、『国保逃れ」に新たな手口 国の対策をすり抜ける「従業員型」とは…業者に接触した特定社労士が読み解く』、週刊SPA!『稼ぎながら健康になれ 50代からのガテン系仕事』、他



