今回は、改正育児介護休業法、男性育休について解説します。改正で何が変わるかをできるだけ簡潔に記載します。
1.今回改正の趣旨
分割して育休を取得できるようにすることで、育休を取りやすい環境を作ることが、今回改正の趣旨です。
2.現行法との比較
比較①:申出時期、申出回数等 施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日
【現行】
育児休業開始日の1カ月前までに会社に申し出ることで、子が1歳(最長2歳)になるまで、育児休業を男性は2回(産後8週以内に1回(パパ休暇)、産後8週経過後に1回)、女性は1回(産後8週経過後に1回)に限り取得可能。
【改正後】
育児休業開始日の2週間前までに会社に申し出ることで、子が1歳(最長2歳)になるまで、育児休業を男性は4回(産後8週以内は2回(通算4週)、産後8週経過後に2回)、女性は2回(産後8週経過後に2回)に分けて取得可能。
☛厚生労働省掲出の資料・モデル②では、父が産後8週間以内に1回育休を取得していますが、産後8週間以内は2回に分けて育休を取得することも可能です。ただし、通算4週間までとなりますので、例えば1週間+3週間のような形になります。
比較②:育休延長開始日 施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日
【現行】
1歳以降に育休延長する場合、育休延長開始日は1歳、1歳半時点に限定する。
【改正後】
1歳以降に育休延長する場合、 育休開始日の限定は無し。
比較③:育休中の就労について 施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日
【現行】
育児休業期間中は、原則就労不可。
【改正後】
育児休業期間中は、労使協定で合意した範囲内(10日・80時間以内を予定)で就労可。
比較④:有期雇用者の育休要件について 施行日:令和4年4月1日
【現行】
有期雇用労働者の育児休業対象者は、引き続き1年以上雇用されている者か、または、子が1歳6か月までに雇用契約が満了することが明らかでない者(=雇用契約が1歳6か月を超えても予定される者)。
【改正後】
有期雇用労働者の育児休業対象者は、子が1歳6か月までに雇用契約が満了することが明らかでない者(=雇用契約が1歳6か月を超えても予定される者)。 ※ただし、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可
3.その他
①雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置等の義務化 施行日:令和4年4月1日
・育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等)
・妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
②育児休業取得状況の公表義務化 施行日:令和5年4月1日
従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
4.よくある質問
Q.現在の育児休業制度においては、男性は産後8週以内はパパ休暇を取得でき、特に休業期間に制限はない、つまり、最大で出産日以降8週間休業できると思います。しかし、改正後は産後8週以内に通算4週間という制限が設けられています。休業期間が短くなったので、育休制度は逆に悪くなったのではないですか?
A.今回の制度改定の趣旨は、「育休を分割できる」ということに主眼を置いています。男性の場合、業務の繁忙などで長期の休業ができないケースが多いので、短期間でも分割で取得できる方がより男性の育休参加がしやすくなると判断されました。確かに、産後8週以内の男性育休については改正前よりも短くなりますが、そもそも育休自体が原則1年間認められていますので、産後8週経過後に休業を取得できれば、全体として短くなるということもありません。父母同時に育休を取得するパパママ育休を利用すれば、子が1歳2カ月になるまで休業することも可能です。よって、産後8週以内に4週間の休業しか取れなかったとしても、その後に休業を取得することで最大1年間の育休を取ることも可能ということになります。
5.当事務所の見解
企業側からすれば、従業員が育休に入るということは、貴重な労働力が一定期間失われるということにもなります。代替社員がスムーズに確保できればよいですが、そうした観点での有効な対策も乏しい現状では、男性の育休が増加するかは微妙なところです。不安なく現役世代がバリバリ働ける環境を作り、同時に、育児への経済的支援を充実させることの方が、よっぽど経済や少子化への有効な対策となり得るのではないでしょうか。