【事例解説】会社掛金が少なくてもOK!企業型DC「マッチング拠出」制限撤廃の衝撃と実務対応
- 坂の上社労士事務所

- 2025年12月15日
- 読了時間: 3分

令和8年(2026年)4月1日より、確定拠出年金(企業型DC)における「事業主掛金以下でなければならない」という加入者掛金の制限が撤廃されます。これまでは「会社の掛金が少ないと、従業員も少ししか積立できない」という縛りがありましたが、これが解消されます。具体的な事例で、そのインパクトと実務のポイントを3つの視点で解説します。
1.【具体例】「月5,000円」しか積み立てられなかったAさんが、「月25,000円」可能に!
最も大きな変化は、会社の掛金が低額なケースでの資産形成スピードです。
【モデルケース:若手社員Aさんの場合】
会社の掛金(事業主掛金):月額 5,000円
全体の拠出限度額:月額 55,000円
区分 | 【改正前】(令和8年3月まで) | 【改正後】(令和8年4月から) |
会社の掛金 | 5,000円 | 5,000円 |
本人の掛金 | 上限 5,000円(会社掛金を超えてはならない) | 上限 50,000円(限度額5.5万円の枠内ならOK) |
合計積立額 | 月 10,000円 | 月 55,000円も可能に |
☛ここがポイント
これまでは「もっと老後に備えて節税したい」と思っても、会社の掛金という「天井」に阻まれていました。改正後は、拠出限度額の範囲内であれば、会社の掛金額に関係なく、自身の責任で大きく掛金を設定できるようになります。
2.【企業型DC実務事例】「届出不要」な会社と、「申請が必要」な会社の違い
今回の改正に伴い、規約変更が必要ですが、変更内容によって手続きの重さが変わります。
ケースA:今のテーブル(選択肢)のまま制限だけ外す場合
状況:規約に「加入者掛金は事業主掛金を超えてはならない」という文言があるだけ
対応:その文言を削除する変更
手続き:「届出不要」(軽微な変更として扱われます)
ケースB:新たに掛金テーブルを追加・変更する場合
状況:これまで「1,000円~10,000円」しか選べなかったが、制限撤廃に合わせて「1,000円~54,000円」まで選べるように規約の表を作り直したい。
対応:新たな掛金設定の追加
手続き:「承認申請が必要」な場合があります。
これまでマッチング拠出を導入していなかった企業が新たに始める場合や、事業主掛金以下の金額帯での刻み幅(単位)を変更する場合(例:2,000円単位→1,000円単位)は承認申請が必要です。自社が単なる「文言削除」で済むのか、従業員の利便性を考えて「テーブル改定」まで行うのか、方針決定が必要です。
3.【経過措置】「4月にすぐ増額したい!」という声への対応
通常、掛金額の変更は「年1回」と決まっていますが、法改正直後の混乱を防ぐための特例(経過措置)があります。
【事例:変更月が毎年「7月」の会社の場合】
原則:改正が4月に施行されても、従業員は7月まで掛金を変更できません。
特例(経過措置):規約に経過措置を定めれば、令和8年4月1日~11月30日の間に限り、「初めて会社掛金を超えて設定する場合」は、臨時に変更を受け付けることが可能です。
この特例を使うためには、規約に「令和8年だけの特別ルール」を追加しておく必要があります。従業員から「ニュースで見たから4月からすぐ増やしたい」と言われた時に備え、この経過措置を導入するかどうか検討が必要です。
☛必ず行うべき「削除」作業
これまで「会社の掛金が下がった結果、本人の掛金が会社額を上回ってしまった場合」は、本人の掛金も強制的に下げる規定がありましたが、制限撤廃によりこの規定は不要になります。この条項の削除漏れがないようご注意ください。
*ご参考:確定拠出年金の企業型年金加入者掛金額の制限撤廃に係る事務の取扱いに関する参考資料の送付について(令和7年12月10日事務連絡) 厚生労働省年金局https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251211T0020.pdf
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