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【厚労省速報】外国人雇用状況の届出に「罰則」を明記!改正指針で見えた2027年育成就労制度への布石と実務の注意点

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 56 分前
  • 読了時間: 6分
外国人雇用状況の届出

令和8年(2026年)5月15日、厚生労働省の職業安定分科会は、日本の労働市場のあり方を根底から変える一歩を踏み出しました。「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」の改正答申です。  

現在、日本で働く外国人数は257万人を超え、過去最大を更新し続けています。しかし、その背後では在留資格の巧妙な偽装や、制度の目的と実態の乖離といった「歪み」が限界に達していました。今回の指針改正は、単なるマニュアルの更新ではありません。それは、事業主に対して「共生社会の担い手」としての覚悟と、厳格なコンプライアンスを求める国家戦略の表明です。  

特定社会保険労務士の視点から、今回の改正が企業経営にどのようなインパクトを与えるのか、そしてメディアが注目すべき「3つのパラダイムシフト」について深く解説します。


1. 「善意の過失」はもう許されない。罰則明記とデジタル検認の義務化

今回の改正で最も象徴的なのは、外国人雇用状況の届出に関する「罰則の明記」と「確認手段の厳格化」です。

刑事罰への言及と実務の変容

これまでも届出義務違反には30万円以下の罰金が規定されていましたが、今回の指針改正では、届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合に、労働施策総合推進法に基づく罰則が適用され得ることを改めて明記しました。これは、政府が「摘発がごく僅かに留まっている現状」を問題視し、今後は厳格な運用(=刑事告発を含めた対応)に踏み切るという強い意志表示です。  


「在留カード等読取アプリ」の事実上の標準化

事業主は今後、在留カードの券面を目視するだけでは不十分とみなされる可能性があります。改正案要綱では、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」を用いて、ICチップ内の情報と券面を照合させることが「適切である」と規定されました。近年、偽造在留カードの技術は精巧化しており、令和6年の検挙件数は減少傾向にあるものの、依然として約400件発生しています。  

☛社労士前田の視点

「偽物だとは知らなかった」という言い訳が通用する時代は終わりました。アプリでの確認を怠り、不法就労者を雇用してしまった場合、事業主は「不法就労助長罪」に問われるリスクを真っ向から引き受けることになります。  


2. 「労働力」から「共生のパートナー」へ。日本語教育の義務的努力

これまでの雇用管理指針は、最低賃金の遵守や安全衛生など、いわば「守りの管理」が中心でした。しかし今回の改正では、事業主の責務として「日本語学習の機会提供」が明確に組み込まれました。  


日本語教育推進法との連動

事業主は、日本語教育の推進に関する法律の基本理念にのっとり、雇用する外国人とその家族に対し、日本語学習の機会提供や支援に努めることが規定されました。これは単に「日本語を教えなさい」ということではありません。  

  • 教育訓練の実施:日本語能力に配慮した教育訓練の実施に努めること。  

  • 認定日本語教育機関の活用:令和6年から施行された「日本語教育機関認定法」に基づき、質の担保された「認定日本語教育機関」や「登録日本語教員」を活用した講習が推奨されています。  


なぜ今、日本語なのか?

事業主アンケートでは、外国人雇用の課題として「日本語能力によるコミュニケーション」が43.9%で最多となっています。一方で、外国人労働者側の不満としては「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」というトラブルも散見されます。  

☛社労士の視点

日本語教育を「福利厚生」ではなく、生産性を高め、労働災害を防ぐための「必須の投資」と再定義できるか。これが、令和9年4月に創設される「育成就労制度」で勝ち残る企業の条件となります。  


3. 2027年「育成就労制度」へのカウントダウンとコスト構造の変化

今回の指針改正は、令和9年(2027年)4月1日に施行される「育成就労制度」への布石です。現行の技能実習制度は廃止され、人材育成と人材確保を目的とした新制度に移行します。  

帰国旅費の負担と転籍の容認

改正指針では、育成就労外国人の帰国事由が「自己都合」であっても、事業主(または監理支援機関)が帰国旅費を負担することに留意すべきと明記されました。また、新制度では一定の条件下で「本人意向による転籍(転職)」が認められるようになります。  


企業の「選別」が始まる

育成就労制度の転籍制限期間は、分野ごとに1〜2年の範囲で設定されます。例えば、介護や建設、製造業などの主要分野では、当面「2年」の制限が設けられる見通しです。しかし、ハローワークと「外国人育成就労機構」が連携し、転籍支援を行う体制が整備されます。これは、魅力のない職場からは、法的なサポートを受けて合法的に労働者が流出することを意味します。  

☛社労士の視点

令和8年6月14日から適用される今回の指針改正は、いわば「プレ運行」です。2027年の本番に向け、企業は以下の3点に直ちに着手すべきです。  

  1. デジタル・コンプライアンスの構築

    読取アプリの導入と届出フローの見直し。

  2. 待遇の透明化

    短時間・有期雇用労働者に対する「待遇差の説明義務」への対応(令和8年10月適用)。  

  3. キャリア支援型への転換

    「3年で使い切り」ではなく、特定技能への移行を見据えた長期的な育成計画の策定。


経営者が注目すべき「真の狙い」

政府がこれほどまでに厳格な指針改正を急ぐ理由は、単なる不法就労対策ではありません。それは、「日本を選ばれる国にする」という切実な危機感の裏返しです。

「不当に高額な手数料を支払わせない」「日本語学習を支援する」「不合理な待遇差をなくす」――これらを指針に盛り込むことで、悪質な事業主を市場から退場させ、健全な企業に外国人材を集中させる「労働力の再配置」を狙っています。

今回の改正は、日本の労働環境が「国際標準」へとアップデートされる分岐点となるでしょう。


第224回労働政策審議会職業安定分科会資料(厚生労働省)


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