【社労士が斬る】2026年労災保険大改革!遺族年金の「男女格差」撤廃と農林水産業の強制適用、時効延長まで徹底解説
- 坂の上社労士事務所

- 2 日前
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令和8年1月14日、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が、労災保険制度を根本から見直す「建議」をまとめました。今回の改正案は、昭和の家族観に基づいた制度を現代の「共働き・多様な働き方」に合わせてアップデートする、非常にインパクトの強い内容です。実務家として特に注目すべき3つの視点で要約し、資料の深掘り解析を行います。
1. 遺族年金の「55歳の壁」が崩壊!男女格差の完全解消へ
これまで労災遺族年金には、妻が受給する場合は年齢制限がない一方、夫が受ける場合は「55歳以上」という厳しい年齢制限がありました。
夫の支給要件撤廃:夫にのみ課せられていた年齢制限や障害要件が撤廃されます。
「特別加算」の廃止と水準統一:55歳以上の妻などに上乗せされていた特別加算が廃止され、遺族1人の場合は一律で給付基礎日額の175日分に引き上げ・統一されます。
背景:「世帯主が夫、専業主婦が妻」という前提を捨て、被扶養利益の喪失を平等に補填する考え方へシフトしました。
2. セーフティネットの拡大:農林水産業と家事使用人も「強制適用」へ
これまで労働実態の把握が難しいとされてきた分野に、一気にメスが入ります。
暫定任意適用事業の廃止:農業(個人経営・5人未満など)で認められていた任意加入が廃止され、順次強制適用となります。これにより、新たに約12万の事業者が加入対象となる見込みです。
家事使用人の保護:労働基準法が適用されることになれば、家事使用人も労災保険の強制適用対象となります。
フリーランスへの対応:特別加入団体の適格性を法令で明記し、体制が不十分な団体には改善命令等が出せるよう監督が強化されます。
3. 企業のガバナンスが問われる「時効延長」と「情報開示」
HR担当者が最も注意すべきは、権利行使の期間と情報共有の仕組みです。
消滅時効が2年から5年へ:脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾患など、発症後の迅速な請求が難しい病気については、時効が5年に延長されます。
事業主への情報提供開始:早期の再発防止を促すため、電子申請を行っている事業主に対し、労災の支給決定事実(給付種別や決定年月日など)が通知される仕組みが検討されています。
メリット制の透明化:保険料が増減した理由(メリット収支率の基礎情報)も事業主に提供されるようになります。
【深掘り解析】労働政策審議会資料から読み解く実務の注意点
今回の資料を詳細に分析すると、単なる「平等化」以上の重要な論点が見えてきます。
・疾病発症時の「賃金逆転」への対応
有害業務を離職した後に、別の(有害ではない)職場で働いている間に発症した場合、現在の給付額が以前の賃金より低くなるケースがありました。今後は、「発症時の賃金」が「ばく露時の賃金」より高い場合は、高い方の賃金を基礎に給付額を算定する仕組みに改められます。
・メリット制と「労災かくし」の懸念
資料内では、メリット制(災害が少なければ保険料が下がる仕組み)が「労災かくし」や被災労働者への「報復行為」に繋がる懸念についても触れられており、実態把握と必要な検討を行うことが明記されています。
・労使の激しい意見対立
興味深いのは、事業主への情報提供に関する「労使の温度差」です。
労働者側:「情報提供は請求の萎縮や不当な圧力に繋がる」と反対。
使用者側:「保険料を全額負担しており、決定理由を早期に知ることは再発防止に不可欠」と主張。この議論は、今後の法改正プロセスの焦点となるでしょう。
坂の上社労士事務所からの提言
今回の改正は、企業の労務管理において「農林水産業のコスト増」や「過去5年に遡るメンタルヘルス疾患のリスク」を再認識させるものです。特に遺族年金の水準統一は、万が一の際の補償額を大きく変える可能性があります。
法改正の動向を先読みし、就業規則の整備や安全衛生管理の強化を今から進めておくことが、企業防衛の鍵となります。
*ご参考:労働政策審議会建議「労災保険制度の見直しについて」を公表します(厚生労働省)
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