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【社労士徹底解説】123万人超の外国人材を迎え入れる「育成就労・特定技能」新時代。改正の深層と生き残るための企業戦略

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 5 時間前
  • 読了時間: 6分
育成就労

令和8年1月23日、政府は日本の労働市場の未来を決定づける歴史的な閣議決定を行いました。従来の技能実習制度は名実ともに廃止され、新たに「人材確保・育成」を目的とした「育成就労制度」が誕生します。

今後5年間で最大123.4万人という、過去に例を見ない規模の受け入れが想定される中、政府は何を狙い、実務はどう変わるのか。社労士の専門的な知見から、5つの重要アスペクトで解説します。


1. 制度のパラダイムシフト:「使い捨て」から「選ばれ、育てる」パートナーへ

これまでの技能実習制度は、建前として「国際貢献(技術移転)」を掲げていました。しかし、実態との乖離が激しく、国際的な批判を浴びてきたのも事実です。新設される「育成就労」は、この矛盾を解消し、「日本で長く活躍してもらうためのキャリアパス」を公的に保証する制度です。

  • 政府の狙い:3年間の育成就労期間を「特定技能1号」への確実なステップアップ期間と位置づけています。未経験者を受け入れ、3年後には日本語能力A2.2相当以上、かつ各分野の技能試験をクリアした「熟練人材」へと昇華させる一貫したパイプラインを構築します。

  • 実務上の留意点:企業には「育成就労実施計画」の作成が義務付けられます。単なるルーチンワークではなく、段階的な技能習得と日本語学習の機会を提供し、評価試験(初級・専門級)合格をサポートする体制がなければ、受入れ継続は困難になります。


2. 「転籍制限」の緩和という劇薬。流出か、定着か

今回の改正で最も大きな議論を呼んだのが、一定の条件下での「本人意向による転籍(転職)」の容認です。

  • 改正の核心:同一業務区分内で、1年〜2年の制限期間(分野により設定)を経過し、かつ日本語能力(A1相当以上)等の要件を満たせば、本人の希望で会社を変えることが可能になります。

  • 経緯と背景:外国人に対する「職業選択の自由」の制限が人権侵害にあたるとの国際的な指摘を受け、政府は「不当な縛り」を解消しました。同時に、生産性の低い企業から高い企業への人材移動を促し、日本全体の労働市場を活性化させる狙いがあります。

  • 企業の防衛策:もはや「3年は辞めない」という前提は崩れました。これからは「待遇が不当に低い」「人間関係が悪い」「成長を感じられない」企業からは、あっという間に人材が引き抜かれます。賃金設定の妥当性、明確な人事評価、そして相談しやすい職場環境の構築が、最強の離職防止策となります。


3. 在留管理DX:マイナンバー統合による「丸裸」のコンプライアンス

「総合的対応策」で示されたのは、デジタル技術を駆使した強力な監視体制の構築です。これは企業にとって、逃げ道のないコンプライアンス遵守を意味します。

  • 情報の即時共有:入管庁、厚生労働省、自治体がマイナンバーを介して連携します。国民健康保険料や厚生年金、住民税の納付状況がリアルタイムに近い形で把握されるようになります。

  • 不備の即時発覚:社会保険の未加入や賃金支払いの遅延、あるいは最低賃金法違反があれば、それは即座に「在留資格の更新不許可」や「企業への受入れ停止措置」に直結します。

  • JESTAの導入:2028年度中に導入される電子渡航認証により、入国前の審査も大幅に厳格化されます。秩序を守らない企業は、この巨大な労働市場から完全に排除されることになります。


4. 分野拡大と「定住」への道筋。地域社会との共生

新たに「自動車運送業(バス・タクシー・トラック)」「鉄道」「物流倉庫」「資源循環」の4分野が追加され、特定技能は計19分野、育成就労は計17分野となります。

  • 2024年問題への対応:特に物流・運送分野での開放は、日本の物流インフラ維持に不可欠です。バス・タクシー運転手には「日本語B1(日常会話レベル)」という高いハードルが設定されていますが、これは接客を伴うためであり、政府は「日本語サポーター」の同乗による緩和策なども検討しています。

  • 家族帯同と永住:特定技能2号への移行が進めば、家族帯同が可能になり、在留期間の制限もなくなります。これは外国人が「労働力」ではなく、私たちの「隣人」として地域社会に定着することを意味します。ゴミ出しのルールから子供の教育、地域の防災訓練への参加まで、企業には「生活者としてのサポート」も求められるようになります。


5. 【社労士が提言】企業が今すぐ着手すべき3つのアクション

この変化をチャンスに変えるため、経営者が直ちに行うべき労務管理のアップデートを提示します。

  1. クラウド型人事労務システムの導入:在留管理DXに対抗するには、企業側もDX化が必須です。マネーフォワード等のクラウドツールを活用し、正確な給与計算、社会保険手続き、そして技能習得の進捗管理を一元化し、いつでも当局に提示できる「透明性」を確保してください。

  2. 就業規則のグローバル化:外国人特有の休暇制度(旧正月等の帰国休暇)や、宗教的配慮を盛り込んだ就業規則の整備は、トラブル防止だけでなく、求人上の強力な武器になります。

  3. 「日本語教育」を福利厚生に:言葉の壁は事故やメンタルヘルスのリスクを高めます。社内での日本語教育支援を「投資」と考え、教育コストの一部を負担する、あるいは学習時間を確保するなどの支援体制を整えてください。


結び:外国人材活用は「コスト」から「投資」へ

今回の閣議決定により、外国人雇用は単なる「人手不足の穴埋め」から、企業の「持続可能性(サステナビリティ)」を左右する最重要戦略へと昇格しました。

「選ばれる国、日本」を目指す政府の姿勢は、そのまま「選ばれる企業、あなたの会社」への要求でもあります。法やルールを逸脱する企業には厳しく、適切に育成し共生を図る企業には大きな果実をもたらす。これが新制度の正体です。

当事務所では、特定社会保険労務士としての法務知識と、マネーフォワード公認プラチナメンバーとしてのデジタルスキルを融合させ、この激動の時代を勝ち抜くための「攻めの労務管理」を全力でサポートいたします。


*ご参考:育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領(出入国在留管理庁)


*ご参考:外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(令和8年1月23日外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議決定)


坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応)

マネーフォワード公認プラチナメンバー/マネーフォワード給与・勤怠 代表 

特定社会保険労務士 前田力也

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