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【社労士解説】8割が知らない事実。子どもの「不登校」で介護休業が取得可能に。給付金の手続きと令和7年法改正への実務対策

執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
坂の上社労士事務所
2 日前
読了時間: 8分
不登校

現代の日本社会において、小中学生の不登校は年々増加の一途をたどっています。文部科学省の調査によれば、2024年度(令和6年度)の不登校児童生徒数は35万人を超過し、極めて深刻な社会問題となっています。不登校の背景には多岐にわたる要因が複雑に絡み合っていますが、問題が長期化する中で最も重い負担を強いられているのが、日々子どもに寄り添う保護者です。  

とりわけ仕事を持つ保護者にとっては、日中の子どもの見守りや心身のケアと、自身の就労をどのように両立させるかが切実な課題となっています。子どもの対応に追われて遅刻や早退を繰り返し、精神的にも肉体的にも疲弊した結果、自ら離職を選ぶ保護者は少なくありません。

このような「望まない離職」を防ぐため、厚生労働省は2025年(令和7年)4月に介護休業の判断基準を見直し、「子どもの不登校」も状態によっては介護休業の対象となり得ることを明確化しました。しかしながら、民間企業の調査によれば、保護者の約6割がこの事実を「知らない」と回答し、「聞いたことはあるが詳しくは知らなかった」層を合わせると、実に8割の人が制度を十分に理解していないことが浮き彫りになっています。さらに、企業の人事担当者においても、制度を正しく認識しているのはわずか3割にとどまっています。  

本記事では、この「知られざる事実」の背景と、生活を支える「介護休業給付金」の要件や手続き上の注意点、そして令和7年に施行される「育児・介護休業法」改正に伴い、企業の人事担当者が講じるべき実務上の対策について、社会保険労務士の視点から3つのポイントで深く解説いたします。


1.なぜ「不登校」が介護休業の対象になるのか?(制度の対象と周知の必要性)

そもそも「介護休業」という制度に対して、多くの人は「高齢の親に対する身体的な介助」を目的とするものという固定観念を抱いています。しかし、法律が定める介護休業の要件は「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」の家族を世話することであり、その対象家族には「子」も含まれます。  

不登校の子どもの中には、単に学校に行けないだけでなく、精神的な不安定さから特別なケアを要するケースが多々あります。厚生労働省が例示した対象となり得る子どもの状態としては、「強い対人恐怖があり、親以外との意思疎通ができない」「強い不安や恐怖で暴走し、物を壊したり衣服を破いたりする」「周囲の見守りなしでは自傷行為を行うことがある」などが挙げられます。このような状態にあり、親の常時の見守りやケアが2週間以上必要な場合は、不登校であっても正当な介護休業の取得理由となります。  

特筆すべきは、介護休業の申請において、必ずしも医師の診断書が必須ではないという点です。職場の同僚や、学校のスクールカウンセラーが作成した申立書を添付することでも申請が可能であるなど、実態に即した柔軟な運用が認められています。  

子どもが不登校になった際、親が「自分だけで抱え込むしかない」「仕事を辞めるしかない」と思い詰めてしまう前に、まずはこの制度の存在を広く社会全体、そして企業内に周知することが急務と言えます。


2.経済的不安を和らげる「介護休業給付金」の要件と手続き上の注意点

介護休業を取得する際、保護者にとって最大の懸念となるのが「休業中の収入減」です。これを補填し、安心して子どものケアに専念するための制度が、雇用保険から支給される「介護休業給付金」です。

【介護休業給付金の基本要件】

介護休業は、対象となる家族1人につき、通算して最大93日まで仕事を休むことができる制度です。この93日は、必要に応じて最大3回まで分割して取得することが可能です。休業期間中は、要件を満たせば雇用保険から「休業開始時の賃金の67パーセント」に相当する給付金が支給されます。

【給付を受けるための手続きと注意点】

給付金を受給するためには、単に会社を休むだけでなく、雇用保険の被保険者としての一定の要件を満たした上で、厳密な手続きを行う必要があります。実務上の主な注意点は以下の通りです。

  1. 事前の申し出と書類準備

    労働者は原則として休業開始予定日の2週間前までに、事業主に対して介護休業の申し出を行う必要があります。その際、前述した「対象家族が2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にあること」を証明する書類(医師の診断書やスクールカウンセラーの申立書など)を準備し、事業主へ提出します。最近では、子どもの状態を入力するだけで介護休業の申請書類や申立書を自動作成できる無料の支援ツールなども民間から提供されており、これらを活用することで手続きの心理的・物理的ハードルを下げることが可能です。  

  2. ハローワークへの申請は事業主経由で

    介護休業給付金の支給申請は、原則として事業主を経由して管轄のハローワーク(公共職業安定所)に行います。労働者自身が直接申請するわけではないため、企業の人事担当者は、従業員から休業の申し出があった際、速やかに雇用保険の賃金証明書や支給申請書を作成し、期限内に手続きを完了させる責任があります。

  3. 社会保険料の免除手続きを忘れずに

    介護休業中は、給付金が支給されるだけでなく、事業主が年金事務所等へ申出を行うことで、休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険の保険料)が労使ともに免除されます。人事担当者は給付金の手続きと並行して、この免除申請も確実に行う実務体制を整えておくことが重要です。


3.令和7年施行「育児・介護休業法」改正の全体像と企業の実務対応

不登校に伴う介護休業の適用明確化と連動するように、仕事と家庭の両立支援をさらに強化するため、令和6年(2024年)5月に「育児・介護休業法」が改正されました。この改正は令和7年(2025年)4月1日および10月1日より段階的に施行され、企業には新たな義務が課されます。  

【令和7年4月1日施行の主な改正内容】

まず、1日または時間単位で取得できる「介護休暇」について、労働者の要件が緩和されます。これまで労使協定を結ぶことで「継続雇用期間6か月未満の労働者」を対象から除外することが可能でしたが、この除外規定が廃止されます。これにより、入社直後の従業員であっても、子どもの突発的な対応のために介護休暇を取得できるようになります。 また、育児の側面では「子の看護等休暇」の対象が「小学校第3学年修了まで」に延長され、感染症による学級閉鎖や入園式・卒園式などの行事参加も取得事由に追加されます。さらに、要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主の努力義務となります。  

【令和7年10月1日施行の主な改正内容(人事担当者必見)】

実務上、最も大きな影響をもたらすのが10月施行の改正です。事業主には新たに以下の措置が「義務」として課されます。  

  1. 介護離職防止のための雇用環境整備

    事業主は、従業員が介護休業や両立支援制度を円滑に申し出ることができるよう、社内研修の実施、相談窓口の設置、制度に関する方針の周知といった措置を講じなければなりません。  

  2. 個別の周知・意向確認の義務化

    従業員から「家族の介護(不登校によるケアを含む)に直面した」旨の申し出があった場合、事業主は介護休業や関連する支援制度の内容を個別に説明し、制度を利用するかどうかの意向を必ず確認する義務を負います。  

  3. 介護に直面する前の早い段階での情報提供

    従業員が制度を知らないまま離職することを防ぐため、40歳等の早い段階で、介護休業等の制度に関する情報提供を行うことが義務付けられます。  

企業はこれらの法改正を見据え、速やかに就業規則や育児・介護休業規程の改定に着手するとともに、社内の相談体制を整備する必要があります。特に「個別の周知・意向確認」については、どのような面談シートや通知書を用いて記録を残すかなど、具体的な運用フローを構築しておくことが不可欠です。


子どもの不登校は、決して一部の家庭だけの問題ではなく、働くすべての従業員に起こり得る身近な課題です。法整備が進み、介護休業の対象となり得ることが明確化されても、現場の従業員が「制度を知らない」、あるいは「言い出しにくい職場風土」のままでは、貴重な人材の流出を食い止めることはできません。

経営者および人事担当者は、今回の制度解釈の明確化と令和7年の法改正を好機と捉えるべきです。自社の就業規則を見直し、制度の正しい知識を社内に広くアナウンスすることで、「会社は従業員の困難に寄り添い、共に解決策を探る姿勢がある」というメッセージを発信することができます。それが結果として、従業員のエンゲージメントを高め、企業の持続的な成長を支える強固な基盤となるのです。


【本件に関する実務相談・お問い合わせ】

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メディア取材実績:週刊文春((株)文藝春秋)(【証拠ビデオ入手】東証上場企業・ライトアップが指南する厚労省助成金“不正受給”「おいしすぎる」「数千万円が自由に」、【全社員の4分の1近くがいなくなり…】「ウルトラマン」シリーズの円谷プロで退職者が続出していた、《50万円の賠償金が…》開業25周年のUSJに違法契約の疑い【契約書入手】、《バイオハザードのゾンビ役が告発》USJの出演者は最低賃金以下で働いていた!《報酬は交通費込みで1日1.3万円》)、TOKYO MX(堀潤 Live Junction」「医療保険制度改革で…負担増える逆転現象も」)、東京新聞『国保逃れ指摘「すでに把握しています」と言いつつ野放し 国や年金機構「脱法行為」是正がニブ過ぎるのは…』『維新だけではなかった「国保逃れ」 司法書士グループ企業でも「節約術」疑惑 厚労省「看過できない状況」』、『国保逃れ」に新たな手口 国の対策をすり抜ける「従業員型」とは…業者に接触した特定社労士が読み解く』、週刊SPA!『稼ぎながら健康になれ 50代からのガテン系仕事』、他

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