【深層解説】高額療養費「年収ごとの負担増」と「新・年間上限」の全貌
- 坂の上社労士事務所

- 2 日前
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更新日:1 日前

先日、厚生労働省の専門委員会において、私たちの医療費負担のあり方を大きく変える重要な方針が示されました。
令和7年12月8日に公表された資料を読み解くと、今回の改正案は単なる制度の「微修正」にとどまらず、仕組みの根幹にメスを入れる内容であることが分かります。企業や従業員にとって特に影響が大きいポイントは、「中間所得層の実質的な負担増」と、それとセットで検討されている「新たなセーフティネット(年間上限)」の創設です。
1.【激変】年収400万円〜700万円層の「区分」が割れる!
現在、「年収約370万円〜約770万円」の現役世代は、全員ひとくくりに「ウ区分(80,100円+α)」とされています。しかし、今回の議論では、この区分を「例えば3つに細分化する」という方針が示されました。
▼ 何が起きるのか?
これまで同じ負担上限だった「年収400万円の人」と「年収750万円の人」で、明確な差がつきます。資料にある試算イメージでは、以下のような引き上げ幅が検討されています 。
年収〜370万円層:+5%程度の引き上げ
年収370〜770万円層:+10%程度の引き上げ
年収770〜1,160万円層:+12.5%程度の引き上げ
つまり、「そこそこ稼いでいるが、高所得者ではない」層(係長・課長クラスなど)の実質負担が増える可能性が高いということです。
2.【新制度】「多数回該当」に届かない人を救う「年間上限」の創設
これが今回最大のニュースと言えます。現行制度では、過去12ヶ月に3回以上上限に達すると4回目から安くなる「多数回該当」という仕組みがありますが、「年に1〜2回だけ高額な医療費がかかる」人は、毎回満額の自己負担が必要でした。
これに対し、新たに「年間を通じた負担上限」を設ける案が浮上しました。
対象イメージ:「年に1回以上、現在の限度額に達した人」など 。
メリット:「毎月ではないが、年に数回通院・入院がある」という、慢性疾患やリハビリ治療中の従業員の負担が、年単位で見れば抑えられる可能性があります。
運用:当面はシステム改修が間に合わないため、「患者本人からの申出(申請)」を前提とする案が出ています。「申請しないと戻ってこないお金」になる可能性があり、人事からの周知が重要になります。
3.【シニア雇用】「外来特例」廃止への布石? 具体的な負担増額
70歳以上の従業員(再雇用者など)に適用されている「外来だけの月額上限(現行18,000円)」について、かなり踏み込んだ見直し案が出ています。
・現行:月額 18,000円(年額14.4万円)
・見直し案:月額 28,000円(+1万円) または 20,000円
「月1万円の負担増」は、年金と給与で生活するシニア社員にとって小さくない影響です。さらに、将来的には「外来特例そのものの廃止」や「対象年齢の引き上げ(75歳以上へ)」も視野に入れた議論が進んでいます。
【企業が準備すべきこと】
制度改正は「来年(令和8年)夏以降」の順次施行が見込まれています。特に「新・年間上限」が申請主義になった場合、「医療費が高額になったら、領収書を捨てずに会社や健保に相談してください」というアナウンスが、従業員の家計を守ることにつながります。
ご参考:第7回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」資料
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