【社労士解説】明治以来の大転換:2026年「共同親権」施行と社会保険「1割特例」が突きつける企業労務の真実
- 坂の上社労士事務所

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2026年(令和8年)4月1日、日本の家族法と社会保障実務は、明治以来の「単独親権」から「共同親権」への移行という未曾有の転換点を迎えます。本改正は単なる法理論の変更ではなく、企業の給与計算、社会保険手続き、さらには人事戦略の根幹を揺さぶるものです。特定社会保険労務士の視点から、法務省の改正民法資料、および厚生労働省の「夫婦共同扶養」に関する最新通知(保保発0430第2号等)を解読・分析し、注目すべき「3つの核心的リスクと解決策」を軸に解説します。
128年ぶりのパラダイムシフトと政府の真の狙い
1898年の明治民法施行以来、日本の離婚制度は「単独親権」を維持してきましたが、2026年4月1日、この歴史が塗り替えられます。政府の狙いは、離婚後も父母双方が「子の利益」のために責任を共有し、経済的・精神的な養育を継続させることにあります。
しかし、この理念が実務の現場に降りてきたとき、現場では「どちらの親の扶養に入れるべきか」という激しい調整、あるいは空白期間の発生という深刻な課題が浮き彫りになります。
1.社会保険「1割特例(10%ルール)」と共同親権の交差点
共同親権の導入に伴い、実務上の最大の争点となるのが、社会保険の被扶養者認定です。厚生労働省の通知(保保発0430第2号)により、その判定基準は極めて明確かつ厳格に定められています。
「今後1年間の収入見込み」による判定
社会保険の扶養判定は、過去の実績ではなく、雇用契約書に基づく「今後1年間の収入見込み」で行われます(2026年4月1日以降)。ここに賞与は含みますが、退職金などの一時的な収入は含めません。
実務の鍵を握る「1割特例(10%ルール)」
夫婦双方の年間収入に差がある場合は「多い方の親」の扶養に入りますが、その差額が収入の多い方の「1割以内」である場合は、届出により主として生計を維持する者の被扶養者とすることが認められています。
共同親権下の意義
共同親権を選択し、別居していても養育費(送金等)の実態があれば、このルールが適用されます。別居親が「親権」を根拠に、1割以内の収入差を理由として自らの扶養に入れることを強く主張するケースが、2026年以降激増することが予想されます。
保険者間の「5日間の攻防」
扶養申請を拒否する保険者は不認定通知を発出しなければならず、他方の保険者がその決定に疑義を持つ場合は、5日以内に協議を行う義務があります。この期限を超過した場合、当該保険者が認定を行わなければならないという「5日ルール」は、無保険状態を防ぐための極めて強力な実務基準です。
2.養育費革命と「給与差し押さえ」の日常化
改正民法は、養育費の支払確保を「社会のインフラ」へと押し上げました。
「法定養育費」月額2万円のインパクト
2026年4月以降に離婚し、養育費の取り決めがない場合でも、主たる監護親は他方に対し「子1人につき月額2万円」の法定養育費を直ちに請求できます。これは「暫定的なセーフティネット」であり、話し合いが整うまでの間、こどもの生活を支える法的根拠となります。
債務名義なしでの差押え(先取特権)
実務上の衝撃が最も大きいのは「先取特権」の付与です。これまで給与の差し押さえには公正証書等が必要でしたが、今後は父母間の「私的な合意文書」のみに基づき、月額8万円を上限として差し押さえが可能になります。企業の給与担当者は、今後、これまで以上に高い頻度で裁判所からの「債権差押命令」に直面することになります。これは単なる事務負担ではなく、従業員の生活基盤とプライバシー、そして企業のコンプライアンスに関わる重大な事案です。
3.日常と重要事項の峻別――現場の混乱をどう防ぐか
共同親権下では、親権の行使が「単独」で可能なものと「共同」が必要なものに明確に区分されます。
単独で決定可能な「日常の行為」
日々の食事、服装、通常のワクチン接種、習い事などは一方の親が単独で決定できます。
実務上のポイント
アルバイトの許可や、心身に重大な影響を与えない医療行為もここに含まれます。
共同決定が必要な「重要事項」
進学先の決定、転居、心身に重大な影響を与える医療行為、財産管理などは、父母の共同行使が必要です。もし意見が対立した場合は、家庭裁判所が一方を「親権行使者」として指定する手続きが必要になります。企業側は、従業員から子の教育や医療に関わる申請(学学資金の手続き等)があった際、共同親権の有無と「合意の有無」を確認するフェーズを設ける必要が出てくるでしょう。
メディアと企業が今、準備すべきこと
2026年改正民法と社会保険の最新通知は、「離婚後も家族の絆を経済的に維持する」という強力なメッセージを発しています。
財産分与期間の伸長(2年から5年へ)
離婚後の権利主張は長期化します 。
育児休業中の特例
主たる生計維持者が育休等を取得している間、被扶養者の地位安定のために特例的に扶養を異動させない柔軟な運用も求められます 。
これからの企業には、単なる福利厚生としての「家族手当」を超え、共同親権という複雑な法的背景を持つ従業員を支える「HRコンシェルジュ」としての機能が求められています。本改正への対応は、企業のESG(社会)評価を左右する試金石となるでしょう。
*父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました(法務省)
*夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(厚生労働省)
*夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に係るQ&Aについて(厚生労働省)
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