令和8年9月最新・日本年金機構からのお知らせを徹底解剖!現物給与価額の改正と実務対応ポイント3選を社労士(社会保険労務士)が解説


日本年金機構より公表された「日本年金機構からのお知らせ」令和8年9月号には、企業の経営者および人事・労務担当者が確実に対応すべき、実務上の重要ポイントが多く含まれています。社会保険制度は日々変化しており、適切な対応を怠ると従業員への不利益や企業としてのコンプライアンス上の問題に直結します。
本記事では、社労士の専門的な視点から、特に影響が大きい「現物給与価額(住宅)の改正」、「外国籍従業員の手続き変更」、「育児休業等にかかる社会保険手続き」の3つの視点に絞り解説します。法改正の内容や背景にある政府の狙い、今後の動向、そして実務上の注意点や課題解決の手法について、深く、そしてわかりやすく読み解いていきます。日々の労務管理や今後の見通しを立てるための羅針盤としてご活用ください。
1.現物給与価額(住宅)の計算方法改正と月額変更届への波及
令和8年10月1日より、住宅の現物給与の価額に関する算定基準が変更されます。従来、住宅を現物給与として支給する場合の単価は「居住面積1畳当たり」で計算されていましたが、今後は「総面積1平方メートル当たり」に変更されます。同時に、計算対象となる面積も、これまでの「居住用の室(居間、茶の間、寝室、客間など)」から「居住する住宅の床面積(総面積)」へと拡大されます。
この見直しの背景には、近年の生活様式や住環境の実態の変化があります。日本の住居形態において和室が減少し洋室が主流となる中で、「畳」という単位や「居住用の室」のみに限定した評価基準では、現在の住宅事情を正確に反映できなくなっていました。政府の狙いは、時代に適合した、より公平で実態に即した評価基準へと制度を更新することにあります。
実務上、最も注意すべき点は、この現物給与価額の改正が社会保険における「固定的賃金の変動」として扱われることです。現物給与の価額が見直された結果、報酬総額が大きく変わる場合、「被保険者報酬月額変更届(随時改定)」の提出が必要となる可能性があります。具体的には、以下の3つの条件をすべて満たす場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目に届出が必要です。
現物給与価額の改正などにより、固定的賃金の変動があること。
変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当などの非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じること。
3か月とも支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日)以上あること。
今後の動向として、対象となる従業員(社宅や寮などを提供している従業員)を抱える企業は、早急に10月以降の新しい現物給与価額を再計算し、標準報酬月額に2等級以上の変動が生じないか試算を行う必要があります。対応が漏れると、社会保険料の控除不足や後日の遡及徴収といった労使間のトラブルに発展する可能性があるため、十分な事前準備が課題解決の鍵となります。
2.外国籍従業員の資格取得手続き緩和と国民年金未納問題への対応
国際化が進む中、外国籍従業員を雇用する企業が増加していますが、それに伴い社会保険手続きの実務負担も増加していました。令和8年10月1日より、厚生年金保険・健康保険の資格取得時などにおいて、外国籍の方の本人確認要件が一部緩和されます。これまで、住民基本台帳の情報と届書に記載された「フリガナ氏名」が一致しない場合は本人確認が滞るケースがありましたが、今後は「アルファベット表記の氏名」が一致していれば本人確認が完了したものとして取り扱われます。
この制度改正の政府の狙いは、外国籍特有の氏名表記(母国語の発音の違いやミドルネームの扱いなど)による実務現場での混乱を防ぎ、社会保険手続きを迅速化することです。これにより、企業の労務担当者の負担軽減が期待されます。
一方で、実務上の大きな課題となるのが「国民年金への加入漏れ」です。外国籍の方が日本に入国してから会社に入社(厚生年金保険に加入)するまでの期間や、退職して厚生年金保険の資格を喪失した後の期間は、原則として国民年金の第1号被保険者となり、ご自身で保険料を納付する義務があります。この保険料が未納のままだと、将来の年金受給ができなくなるだけでなく、在留資格の更新や変更審査において不利な影響を及ぼす可能性があります。
今後の見通しとして、外国籍人材の確保は企業にとって重要性を増していきます。企業としては、単に会社としての社会保険手続きを終わらせるだけでなく、外国籍従業員に対して入社前・退社後の国民年金制度の仕組みを説明し、必要に応じてお近くの年金事務所(国民年金課)で保険料の納付や免除申請の手続きを行うよう促すことが求められます。このような生活支援を含めた手厚いサポート体制を構築することが、優秀な人材の定着につながります。
3.育児休業等における保険料免除と復職後の随時改定の柔軟性
「社会保険事務のポイント Vol.14」で取り上げられているのが、育児休業等に関する社会保険手続きです。少子化対策の一環として、育児休業等を取得した被保険者は、事業主を通じて申出を行うことで、労使双方の健康保険・厚生年金保険料が免除されます。この免除期間は将来の年金額を計算する際、「保険料を納めた期間」として扱われるため、労働者にとって非常に有利な制度設計となっています。
保険料免除の要件も細かく規定されています。育児休業の開始日と終了日の翌日が同月内であっても、その月内に14日以上育児休業等を取得した場合は免除対象となります。また、賞与にかかる保険料については、賞与月の月末をまたぐ1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除されます。この制度を適用するためには、各休業の取得ごとに「育児休業等取得者申出書」の提出が必要です。
さらに注目すべきは、育児休業等を終了し職場復帰した後、時短勤務などにより報酬が低下した従業員に対する救済措置である「育児休業等終了時改定」です。通常の随時改定が「2等級以上の差」を要件とするのに対し、この制度では「1等級以上の差」が生じていれば標準報酬月額の改定が可能となります。また、算定対象となる復職後3か月間のうち、支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日)未満の月があっても、その月を除外して計算できる柔軟な仕組みとなっています。
企業側の課題解決として、復職後の従業員が実際の給与に見合わない不当に高い社会保険料を負担し続けることがないよう、この「育児休業等終了時改定」を適切なタイミングで案内し、届出漏れを防ぐことが強く求められます。
今回の「日本年金機構からのお知らせ」は、現物給与価額の計算単位の変更から、外国人労働者への対応緩和、そして育児休業等を支える保険料免除制度の活用まで、企業の労務管理に直結する内容が網羅されています。社会環境や生活様式の変化に合わせて法律や制度は常に更新されており、人事・労務担当者には、単に目の前の手続きをこなすだけでなく、制度変更の背景にある国の意図を理解し、従業員にとって不利益が生じないように先回りして対応する高度な知見が求められます。
また、同月のお知らせでは、納入告知書(納付書)を用いた社会保険料の納付について、時間や場所を選ばず払込手数料も原則不要となる電子納付(Pay-easy)の積極的な利用も推奨されています。今後は、労務管理における手続きの電子化による業務効率化と、法律の趣旨を理解した正確な実務運用の両輪が、企業の安定的な発展を支える不可欠な要素となるでしょう。
日本年金機構からのお知らせ(日本年金機構)
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