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3,500円から7,500円へ。40年ぶりの「食の福利厚生」大改正【物価高騰時代の「実質賃金」を守る企業の新たな戦略】

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分
食事現物支給

令和8年(2026年)4月1日、日本の福利厚生と税制が大きな転換点を迎えました。長らく据え置かれていた「食事支給」に関する非課税枠が倍増したのです。

この改正は、単なる事務手続きの変更にとどまりません。物価高騰に直面する労働者の「実質賃金」をどう守るか、そして人手不足に悩む企業がいかに「選ばれる職場」になるかという、現代日本が抱える喫緊の課題に対する政府の明確な回答といえます。

社会保険労務士の視点から、この歴史的な改正の全貌と、企業が取るべき戦略的対応を深く掘り下げます。


1.経済的背景:インフレ対策としての「現物給付」の再評価

政府が今回の改正に踏み切った最大の狙いは、「実質賃金の目減り防止」にあります。

1.額面給与によらない「手取り額」の最大化

通常の給与を月額4,000円アップさせると、そこには所得税や社会保険料がかかります。しかし、この非課税枠を活用して食事を提供した場合、従業員にとっては所得税がかからず、企業にとっても福利厚生費として損金算入が可能(一定の要件あり)という、双方にとって「目減りしない利益」となります。

2.深夜勤務者への手厚い配慮

今回の改正では、通常の食事だけでなく、深夜勤務者への夜食代(現物支給が困難な場合の金銭支給)についても、1回あたり300円から650円へと引き上げられました。これは、エッセンシャルワーカーや製造現場など、日本の経済を足元から支える労働者への還元を強化する姿勢の表れです。


2.経営戦略:人手不足時代に「選ばれる企業」の共通点

今や「給与が高い」ことだけが企業の魅力ではありません。Z世代を中心とした若手層や、ワークライフバランスを重視する層にとって、「日々の生活を会社がどうサポートしてくれるか」という視点は、入社を決める重要なファクターになっています。

食を通じた「エンゲージメント」の向上

福利厚生としての食事支給は、単なる空腹を満たす手段ではありません。

  • 健康経営の推進

    栄養バランスの取れた食事を安価に提供することで、従業員の健康状態を改善し、生産性を向上させる。

  • 社内コミュニケーションの活性化

    「同じ釜の飯を食う」文化を再構築し、部署を越えた交流の場を創出する。

改正後の「7,500円」という枠があれば、1食あたり約300円〜400円程度の補助が可能になります。これは、ランチ代の半分以上を会社が負担することを意味し、求人票における「福利厚生」の項目において、圧倒的な差別化要因となります。


3.実務・法務:改正の「核心」と、陥りやすい適用の壁

専門家として最も注意を促したいのが、「非課税適用のための厳格な要件」です。限度額が上がったからといって、無条件に非課税になるわけではありません。

改正後の新基準(令和8年4月1日以降)

食事の支給により受ける経済的利益が非課税とされるためには、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。

  1. 役員や従業員が、食事価額の50%以上を負担していること

  2. (食事の価額)-(従業員負担額)=(企業の補助額)が、月額7,500円以下であること

【具体例によるシミュレーション】

1食800円の仕出し弁当を月20回提供する場合(総額16,000円)

ケースA:従業員が4,000円負担する場合(負担率25%)

→ 50%負担の要件を満たさないため、補助額12,000円の全額が課税対象となります。ケースB:従業員が8,500円負担する場合(負担率約53%)

→ 補助額は7,500円となります。50%以上負担しており、かつ補助額が7,500円以内であるため、この7,500円分は非課税となります。


このように、「補助額」だけを見て判断すると、税務調査時に多額の源泉所得税の徴収漏れを指摘されるリスクがあります。今回の改正を機に、自社の食事補助規程がこの「50%ルール」を遵守しているか再点検することが必須です。


デジタル化と「食」の福利厚生の融合

今後、この改正は「食事カード」や「設置型社食」といった外部サービスの活用を加速させるでしょう。

特に、マネーフォワード等のクラウド給与計算ソフトを利用している企業においては、食事補助データの自動連携が進み、管理コストを最小限に抑えながら、最大の節税・福利厚生効果を得るスキームが主流になります。

また、政府は今後も「人的資本投資」への税制優遇を拡大する傾向にあります。企業は今回の改正を単なる「上限アップ」と捉えるのではなく、自社の報酬体系全体を見直す「人事制度刷新のトリガー」として活用すべきです。


経営者が今、決断すべきこと

物価高は止まりません。しかし、法律は時代に合わせて変化しています。今回の「食事支給の非課税枠拡大」は、企業が従業員の生活に寄り添い、共に苦境を乗り越えていく姿勢を示す絶好の機会です。

「たかが数千円」と切り捨てるか、「手取りを増やす戦略」として活用するか。その判断が、数年後の企業の成長力と採用力の差となって現れることは間違いありません。


【本件に関する実務相談・お問い合わせ】

今回の法改正に伴う就業規則(福利厚生規程)の改定や、課税・非課税の判定、クラウド給与計算による効率化については、当事務所までお気軽にご相談ください。メディア関係者様からの解説依頼、取材も随時承っております。


*食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて(国税庁)


坂の上社労士事務所 給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価 (東京都千代田区神田三崎町/全国対応)

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メディア取材実績

  • 週刊文春(株式会社文藝春秋):「東証上場企業・ライトアップが指南する厚労省助成金“不正受給”」解説

  • TOKYO MX:「堀潤 Live Junction」医療保険制度改革・負担増問題の専門家解説

  • 他多数

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