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プロが読み解く自民党・国民民主党「合意内容」の真実と、私たちが取るべき3つの戦略【2026年度税制改正】

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 12月20日
  • 読了時間: 5分
178万円の壁

2025年12月19日、自民・公明・国民民主などの間で「2026年度(令和8年度)税制改正大綱」の合意がなされました。ニュースでは「年収の壁、178万円へ引き上げ」という数字ばかりが注目されていますが、私たち実務家の視点で見ると、報道のイメージと現場の実態には大きな「温度差」があります。

まだ確定したわけではありませんが、この「合意内容(設計図)」を知っているかどうかで、家計で数百万円、企業経営では数千万円単位の差が生まれます。

今回は、経営者としての経験と社労士の実務視点から、今回の合意内容を「働き方」「住まい」「経営」の3つの視点で深掘り解説します。


1.【働き方】「178万円の壁」の正体と、消えない「社保の壁」

まず最大のトピックである「年収の壁」です。

報道では「103万円から178万円へ」と言われていますが、正確には今年の改正ですでに基礎控除等の非課税枠は160万円になっています。今回の合意は、そこからさらに18万円上乗せして「178万円」にするというものです。

☛社労士前田の「ここがポイント」

私が最も警鐘を鳴らしたいのは、「税金の壁は上がっても、社会保険の壁は低いまま残る」という事実です。

  • 所得税…2026年からは年収178万円まで0円(非課税)

  • 社会保険…従業員数等の条件により、年収106万円(または130万円)を超えると保険料が発生

例えば、パートの方が「税金がかからないから」と年収170万円まで働いたとします。

所得税は0円ですが、社会保険料(厚生年金・健康保険)で年間約24万円が引かれます。結果として、手取り額は期待したほど増えません。

【結論】今回の改正で確実に恩恵を受けるのは、パート層よりもむしろ「年収400万〜600万円台の正社員(中所得層)」です。基礎控除の拡大により、この層の所得税が年間数万円安くなる「手取り増」が見込まれます。パートの方は、引き続き「社保の壁」を意識した働き方が必要です。


2.【住まい】中古住宅ローン減税、買う時期で「165万円」の差

これからマイホーム、特に中古マンションや中古戸建てを検討している方は、絶対にこの改正内容を押さえてください。減税計算の対象となる「借入限度額(=減税の器)」が劇的に拡充される方向で合意しました。

  • 現行(2025年まで)…限度額3,000万円(期間10年)

  • 改正案(2026年から)…限度額4,500万円(期間13年)

☛社労士前田の「リアル試算」

「でも、ローン残高は毎年減るから、限度額が上がっても意味ないのでは?」と思うかもしれません。そこで、ローン残高の減少も考慮したシミュレーションを行いました。

<条件:5,000万円の中古物件をフルローン購入(金利0.5%)>

比較項目

今買うと(2025年)

来年買うと(2026年改正後)

借入限度額

3,000万円

4,500万円

控除期間

10年間

13年間

減税総額(目安)

約 210万円

約 375万円

差額(メリット)

-

約 165万円 プラス!

5,000万円の借入であれば、13年経っても残高は3,000万円以上残っています。つまり、現行制度だと「枠からはみ出して切り捨てられる部分」が、新制度ならずっと救済されるのです。

【結論】リノベーション済み中古物件などを狙っている方は、今は情報収集にとどめ、契約・引き渡しのタイミングを2026年(制度改正後)に合わせるのが、最も賢い戦略です。


3.【経営】「ハイパー償却税制」で建物投資の常識が変わる

最後に、企業経営者・個人事業主の方へ。今回の大綱合意で最もインパクトがあるのが、通称「ハイパー償却税制(大規模投資減税)」です。

これまで、工場や倉庫、オフィスなどの「建物」は、30年以上かけて少しずつ経費にする(減価償却)しかありませんでした。お金は最初に出ていくのに経費にならず、税金が高くなるのがネックでした。

今回の合意では、この「建物」も含めて「即時償却(一括経費化)」を認める方向性が示されました。

☛社労士前田の「経営判断」

例えば、利益が5,000万円出ている会社が、5,000万円で新社屋を建てた場合

  • これまで…初年度の経費はわずか。多額の法人税(約1,500万円前後)のキャッシュアウトが発生。

  • 2026年から…投資額5,000万円をその年に全額経費計上可能(予定)。利益が相殺され、法人税支払いを0円にできる可能性があります。

【結論】黒字企業にとっては手元資金を残す最大のチャンスであり、赤字企業にとっても「繰越控除」で将来の節税に使えます。大型の設備投資や社屋建設を計画している経営者様は、「着工・引き渡しを2026年4月以降(令和8年度)」にスライドできないか、今すぐ検討に入ってください。


2026年を見据えた行動を

今回の内容はあくまで「与党間の合意」であり、これから国会で審議され、法律として成立します。しかし、実務はこの「合意ライン」に沿って動くことが濃厚です。

  1. 働く人:「178万」に踊らされず、社保の壁を計算して働く

  2. 買う人:中古住宅は2026年まで待つ(165万円の得)

  3. 経営者:大型投資は2026年度へ先送りする

坂の上社労士事務所では、こうした法改正情報をいち早くキャッチし、企業の「守り(労務)」と「攻め(財務・助成金)」の両面からサポートを行っています。詳細なシミュレーションや顧問契約のご相談は、お気軽にお問い合わせください。


*ご参考:自民党と国民民主党との間で交わされた合意文書(自民党HP)


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