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【2025年賃金統計・超分析】名目賃金2%超えも実質は4年連続マイナス。人手不足と「働き控え」がもたらす日本経済の新局面

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分
賃上げ

2025年の統計結果は、日本の労働市場が大きな転換点にあることを示しています。名目上の給与はバブル期以来の伸びを見せているものの、家計の購買力を示す実質賃金は依然としてマイナス圏から脱却できていません。この「数字上の改善」と「生活実弾の不足」のギャップが生む、企業経営への影響と対策を詳細に解説します。


1. 賃上げの構造分析:33年ぶりの「名目2%増」が意味するもの

2025年の現金給与総額(名目賃金)は1人平均355,919円となり、前年比で2.3%増加しました。これは5年連続のプラスであり、2%を超える伸びが2年続くのは、実に1992年以来33年ぶりの快挙です 。

【分析】なぜ名目は上がったのか?

  • 歴史的なベースアップ(ベア)の浸透

    2024年、2025年と2年連続で春闘回答が5%を超えたことが、実際に企業の給与原資を押し上げました。特に、基本給にあたる「所定内給与」が2.0%増と、6年連続でプラスを維持している点は、賃上げが一時的なボーナスではなく、固定給の底上げとして定着しつつあることを示しています。

  • パートタイム時給の過去最高更新

  • パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内)は1,394円(3.8%増)と、過去最高水準を更新し続けています。これは、最低賃金の大幅引き上げと、深刻な人手不足による「採用単価の高騰」が背景にあります。

【実務上の注意点】

企業は、ベアを反映した「新基準の給与テーブル」への改訂を急ぐ必要があります。改正の経緯として、物価高に負けない賃上げを政府が強く求めている側面がありますが、実務では「固定費の上昇」をどう吸収するかが焦点となります。


2. 実質賃金の闇:物価上昇3.7%が「賃上げの果実」を飲み込む

名目賃金が2.3%増えたにもかかわらず、物価変動を除いた実質賃金は1.3%減となり、4年連続のマイナスを記録しました 。

【分析】インフレの質的変化

  • 食料品インフレの直撃

    実質賃金の算出に用いられる消費者物価指数は3.7%上昇しました。特に「令和の米騒動」によるコメ価格の67.5%上昇が、家計の購買力を大きく削ぎ落としました。

  • 価格転嫁のジレンマ

    産業界では人件費上昇分を価格に転嫁する動きが広がっていますが、それがさらに物価を押し上げる「インフレのスパイラル」に入っています。

【今後の動向】

2025年12月単月では実質賃金がマイナス0.1%まで縮小しており、2026年にはプラス転換が期待されています。政府の狙いは、電気・ガス料金支援や食料品減税案(検討中)により物価を下押しし、強制的に実質賃金をプラスに浮上させることにあります。


3. 「労働時間減少」に隠された、人手不足と「年収の壁」の深刻な対立

今回の統計で最も危機感を持つべき指標は、総実労働時間が月平均135.0時間と、前年比で1.4%減少している点です。

【分析】なぜ働く時間が減っているのか?

  • 「年収の壁」による就業調整

    賃金単価(時給)が上がったことで、皮肉にも「106万円・130万円の壁」に到達するまでの時間が短くなっています。多くのパートタイム労働者が、社会保険料負担を避けるために年末にシフトを減らす「働き控え」を選択した結果、労働供給がさらに制約される事態に陥っています。

  • 一般労働者の残業減少

    所定外労働時間(残業代)も2.6%減(月9.8時間)となっており、DX推進による効率化という側面と、コスト削減のための残業抑制という両面が見て取れます。

【対策と戦略】

  • 生産性の抜本的改善

    宿泊・飲食サービス業の時間当たり生産性は米国の8割弱に留まっています。労働時間が減ってもアウトプットを維持できるよう、マネーフォワード等のクラウドツールを活用した徹底的な業務自動化が急務です。

  • 柔軟な働き方の導入

    働き控え対策として、特定適用事業所の拡大に伴う社会保険加入のメリット(将来の年金増など)を従業員に丁寧に説明し、労働時間を延ばせる環境を整備することが、人手不足解消の唯一の道です。


超分析・総括:2026年、企業が生き残るための3箇条

  1. 賃上げとDXの同時進行

    単なる賃上げは利益を削るだけです。IT投資により「少ない人数、短い時間で稼げる構造」へ作り替えてください。

  2. 実質賃金プラス時代への備え

    2026年に実質賃金がプラスになれば、消費活動が活発化します。その際、人手不足で機会損失を出さないよう、採用力(求人広告の最適化)を今から強化すべきです。

  3. 社会保険制度改正への適応

    「年収の壁」への対応は、もはや待ったなしです。助成金(キャリアアップ助成金等)をフル活用し、短時間労働者の正社員化や処遇改善を戦略的に進めましょう。

日本の労働環境は今、激動の中にあります。この統計結果を「自社の立ち位置」を確認する鏡として、次の一手を打ってください。


*ご参考:毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報


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