【完全版】令和8年度 現物給与価額改正のすべて:実務対応と戦略的視点
- 坂の上社労士事務所

- 3月26日
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令和8年(2026年)4月1日より、社会保険制度における「現物給与」の価額が大きく改正されます。この改正は、単なる金額のアップデートに留まらず、特に住宅に関する算定基準が「畳」から「平方メートル(㎡)」へと抜本的に見直されるという、実務上の「革命」とも言える内容を含んでいます。
本稿では、特定社会保険労務士の視点から、この制度改正の背景、政府の狙い、そして企業が直面する実務上の留意点を3つの視点で深く掘り下げて解説します。
1.制度改正の背景と「政府の狙い」——なぜ今、抜本的な見直しなのか?
今回の改正の核心は、「現物給与価額の現代化」にあります。
1. 時代遅れとなった「畳(じょう)」という単位の廃止
これまで、社宅や寮といった住宅の現物給与価額は、長年「畳一畳あたり」の単価で計算されてきました。しかし、現代の住宅設計において、和室が存在しない物件は珍しくなく、㎡表記が主流である現状との乖離が著しくなっていました。政府は、令和5年住宅・土地統計調査等の最新データを反映し、より客観的かつ現代的な指標である「総面積(㎡)」への移行を決定したのです。
2. 「居住実態」への厳格な適合
これまでの住宅価額の計算では、居間や寝室といった「居住用の室」のみを対象とし、キッチン、トイレ、浴室、廊下などは除外されていました。しかし、令和8年10月1日以降は、これらを含む「住宅の床面積の合計(総面積)」が対象となります。これは、生活空間全体の便益を「報酬」として捉え直すという、公平性の観点からの適正化です。
3. 社会保険料の適正な徴収
現物給与の価額は、標準報酬月額(社会保険料の算出根拠)に合算されます。実態よりも低すぎる価額設定を是正することで、本来支払われるべき賃金の実態を保険料に反映させ、社会保障制度の持続可能性を高める狙いがあります。
2.実務上の運用フェーズ——「固定的賃金の変動」という重要課題
本改正において、担当者が最も警戒すべきは「随時改定(月変)」のトリガーとなる点です。
改正スケジュールと適用ルール
令和8年4月1日〜:食事による現物給与価額の改正
令和8年10月1日〜:住宅による現物給与価額の改正
ここで重要なのは、これらの改正が「固定的賃金の変動」に該当するという点です。
☛実務のポイント:価額の変更に伴い、被保険者の報酬が「2等級以上」変動した場合、通常の昇給と同様に「被保険者報酬月額変更届(月変届)」の提出が必要になります。 特に住宅価額の改正(10月)は、計算対象面積の拡大により、多くの社員で算定額が上昇する可能性が高く、一斉に月変対象者が発生するリスクがあります。
給与締め日に関わらない適用
実務上のミスが起きやすいのが「計算期間」です。Q&Aによれば、給与の締め日(例:15日締め、20日支払い)に関わらず、4月1日から4月30日までの1ヶ月分を新しい価額で計算し、4月の給与と合算する必要があります。締め日での日割り計算は行いません。
3.高度な実務判断が求められる個別ケースの処理
企業の多様な勤務形態に合わせ、以下の3つのケースについては深い理解が必要です。
1. 勤務地と居住地が異なる場合の「適用地域」
社宅が千葉県にあり、勤務地が東京都にある場合、どちらの価額を採用すべきでしょうか。正解は、「勤務地(事業所)が所在する地域」の価額です。人事・給与管理がなされている場所の基準を適用するのが原則です。
2. 本社一括管理と支店勤務の例外
本社で人事を一括管理している場合でも、現物給与の価額については、原則として「それぞれの勤務地が所在する地域」の価額で計算します。これは、その土地の物価や家賃水準といった「生活実態」を反映させるためです。ただし、派遣労働者については、実際の勤務地(派遣先)ではなく、派遣元の事業所の所在地価額を使用するという特殊なルールがあるため、注意が必要です。
3. 食事代の「2/3ルール」と住宅の「差し引き計算」
食事の現物給与については、会社が一部費用を徴収している場合、以下の判定を行います。
本人負担額 < 価額の2/3:(現物給与価額-本人負担額) を報酬に加算。
本人負担額 ≧ 価額の2/3:現物給与はないものとして扱う。
一方、住宅についてはこの2/3ルールは適用されず、単純に「規定の現物給与価額-本人負担額(家賃等)」を報酬として加算します。
今後の動向と企業が取るべき対策
令和8年の改正に向けて、企業は以下のステップで準備を進めるべきです。
社宅・寮の総面積(㎡)の再確認
記簿や賃貸借契約書に基づき、令和8年10月適用の「総面積」を今から把握しておく必要があります。バルコニーや共同部分は除外されますが、廊下やトイレは算入されるため、正確な図面確認が不可欠です。
標準報酬月額への影響シミュレーション
特に都市部では住宅価額の上昇が見込まれます。社会保険料負担が増えることで、手取り額が減少する社員への事前説明や、会社負担分のコスト増を予算に組み込む必要があります。
給与計算システムのアップデート
「畳」単位から「㎡」単位への項目変更や、日割り計算ロジック(月途中入居の場合)の確認が必要です。
今回の改正は、単なる事務手続きの変更ではなく、企業の福利厚生制度そのもののあり方を問い直す機会でもあります。「現物給与」という形での支給が、税務・労務の両面で最適であるかどうか、改めて専門家とともに精査することをお勧めいたします。
*令和8年4月から現物給与の価額が改正されます(日本年金機構)
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