【社労士解説】2026年度始動「子ども・子育て支援金制度」実務対応完全ガイド
- 坂の上社労士事務所

- 24 時間前
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少子化対策の抜本的強化を図る「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)」に基づき、令和8年度(2026年度)から「子ども・子育て支援金」の徴収が開始されます。
これに伴い、日本年金機構や健保組合における事務取扱いの詳細が明らかになりました。本制度は単なる「増税」や「保険料アップ」ではなく、日本の社会保障のあり方を根本から変える可能性を秘めています。
1.制度の背景と政府の狙い —— なぜ「医療保険」で徴収するのか?
1. 制度の目的と「社会連帯」の理念
「子ども・子育て支援金」は、すべての世代や企業が拠出し、社会全体で子育て世帯を支えるための仕組みです。最大のポイントは、「子育て世帯だけでなく、独身者や高齢者も含めた全員で負担する」という点にあります。これは、成長したこどもたちが将来の社会保障(年金・医療・介護)の担い手となるため、現在の現役世代や高齢者にとってもメリットがあるという考え方(受益者負担の拡張)に基づいています。
2. 医療保険制度を活用する3つの合理的理由
なぜ独自の税金ではなく、医療保険料と一緒に徴収するのでしょうか。政府は以下の3点を挙げています。
賦課対象の広さ:他の社会保障制度に比べ、加入者が最も広範であること。
既存スキームの活用:すでに「後期高齢者支援金」や「出産育児支援金」など、世代間扶養の仕組みが医療保険には組み込まれていること。
制度の持続可能性:少子化に歯止めをかけることが、結果として医療保険制度そのものを守ることにつながること。
3. 「支援金」と「拠出金」の決定的な違い
混同されやすいのが、既存の「子ども・子育て拠出金」です。
子ども・子育て支援金(新設):社会連帯の理念に基づき、従業員と事業主の両方が負担。
子ども・子育て拠出金(既存):事業主が「将来の労働力確保」のために全額負担。
2.実務・計算上の注意点 —— 「端数処理」と「0.23%」の壁
人事労務担当者が最も頭を悩ませるのが、具体的な給与計算実務です。
1. 令和8年度の支援金率は「0.23%」
被用者保険(健康保険等)における令和8年度の支援金率は、全国一律で0.23%と設定されました。計算式は以下の通りです。
支援金額(月額)= 標準報酬月額×0.0023
※賞与についても同様に「標準賞与額×0.0023」となります 。
2. 給与控除時の「合算」と「端数処理」のルール
今回の通知で最も注目すべきは、健康保険料と支援金を合算して徴収する際の端数処理です。
【原則的な計算順序】
1. 「一般保険料率」と「子ども・子育て支援金率」を合算する。
2. 標準報酬月額(または標準賞与額)に、その合算率を乗じる。
3. 出た額を折半(事業主と被保険者で分ける)する。
4. 被保険者負担分に端数が出た場合、50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円とする。
【社労士の目】
通知では「合算して折半」という流れが示されていますが、実務上、給与明細に内訳を記載したい企業も多いでしょう。その際、別々に計算して端数処理を行うと、合算計算時と1円単位で誤差が生じる可能性があります。システムの設定変更には細心の注意が必要です。
3. 納入告知書と給与明細の取扱い
納入告知書:健康保険料の内訳として支援金額を個別に記載する必要はありません(まとめて請求されます)。
給与明細:法的な記載義務はありませんが、政府は制度趣旨の周知のため、内訳を記載する取組への協力を求めています。
3.今後の動向と「子育て支援」の拡充内容
集められた支援金は、単に「貯蓄」されるのではなく、具体的な少子化対策メニューに充てられます。従業員へ説明する際、この「出口」の話が欠かせません。
1. 主な支援メニューのロードマップ
施策内容 | 実施時期 | 概要 |
児童手当の拡充 | 令和6年10月〜 | 高校生年代まで延長、所得制限撤廃、第3子増額 |
妊婦のための支援給付 | 令和7年4月〜 | 妊娠・出産時に計10万円の給付 |
出生後休業支援給付 | 令和7年4月〜 | 育休給付と合わせ手取り10割相当を支援 |
育児時短就業給付 | 令和7年4月〜 | 時短勤務中の賃金の10%を支給 |
こども誰でも通園制度 | 令和8年4月〜 | 就労要件を問わず柔軟に通園可能 |
自営業者の育児免除 | 令和8年10月〜 | 国民年金第1号被保険者の保険料免除 |
2. 今後の課題:負担増に対する従業員の納得感
令和8年10月からは、年金受給者からの特別徴収(天引き)の際にも、支援金に関する案内が追記される予定です。これは、全世代が負担者であることを象徴しています。 企業としては、単に「法律で決まったから引く」という説明にとどまらず、「育休中の手取り10割実現」や「時短勤務への給付」といった、従業員自身のキャリア形成に直結するメリットとセットで周知することが、労務トラブル防止とエンゲージメント向上の鍵となります。
企業が今すぐ準備すべきこと
給与計算システムの改修確認:「健康保険料率+支援金率(0.23%)」を合算して計算できるか、ベンダーへ確認。
給与明細のレイアウト検討:支援金を内訳表示するのか、合算表示にするのかの方針決定。
社内周知資料の作成:こども家庭庁のリーフレット等を活用し、「なぜ引かれるのか」「何に化けるのか」を事前にアナウンス。
本制度は、これからの日本の労働環境を支えるインフラです。正しい理解と適切な事務運用を通じて、子育てを社会全体で支える土壌を整えていきましょう。
*ご参考:子ども・子育て支援金制度の創設に伴う事務の取扱い等について
*ご参考:子ども・子育て支援金に関するQ&A
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