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【2026年完全版】高額療養費制度が激変!社労士が紐解く「負担増」の真実と企業の生存戦略

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 10 時間前
  • 読了時間: 6分
高額療養費

現在、政府は医療費の自己負担を抑制する「高額療養費制度」の抜本的な見直しを含む、健康保険法改正案を特別国会に提出する準備を進めています。今回の改正は、単なる「値上げ」に留まりません。少子化対策の財源確保、世代間の不公平是正、そして「家計への配慮」を法律に明記するという異例の展開を見せています。

本記事では、この複雑な制度改正を、特定社会保険労務士の視点から3つの決定的な視点で分析・解説します。


1.制度改正の「全貌」と「経緯」——なぜ今、負担が増えるのか?

1. 異例の「家計への配慮」を法律に明記

厚生労働省は、がん患者や難病患者といった長期療養者の家計への影響を考慮することを、健康保険法の改正案に明記する方針を固めました。これは、本来「政令(政府の裁量)」で決めることができた医療費上限額の議論に、法律という強い縛りを入れることで、国民の不安を払拭しようとする政治的な意図が見て取れます。


2. 石破政権での「全面凍結」から、高市政権での「再始動」へ

今回の改正には複雑な政治背景があります。もともと石破茂前政権が2025年8月からの引き上げを予定していましたが、上限額を3回上回ると4回目以降の上限が下がる「多数回該当」の負担まで上げる案が含まれていたため、患者団体や野党の猛反発を受け、全面凍結に追い込まれました。仕切り直しとして発足した現在の第2次高市早苗政権は、衆院選での圧勝を背景に、この「宿題」を再起動させました。


3. 具体的な引き上げスケジュールとターゲット層

改正案では、2026年8月と2027年8月の「2段階」で上限額が引き上げられます 。

  1. 第1段階(2026年8月〜):住民税非課税世帯を除く4区分の限度額を約7%引き上げます。

  2. 第2段階(2027年8月〜):区分をさらに細分化し、さらなる上限アップを予定しています。

最も衝撃的なのは、年収約650万〜770万円の中間所得層です。この層の最終的な引き上げ率は38%に達し、家計へのインパクトは極めて甚大です。


2.政府の「狙い」と「今後の動向」——社会保険料軽減という大義名分

1. 「応能負担」へのシフト:資産を医療費に反映

政府は、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担や保険料の決定に、上場株式の配当所得などの「金融所得」を反映させる改革を断行します。これまで「所得」として把握しきれなかった資産家高齢者に対し、支払い能力に応じた負担(応能負担)を求めることで、現役世代の負担軽減を図る狙いがあります。


2. 「アメとムチ」:出産費用のゼロ化と市販薬の追加負担

改正案には、国民にとってプラスとなる施策も盛り込まれています。

  • 出産費用の無償化:正常分娩を公的保険で賄い、全国一律の単価を設定することで、妊婦の負担をゼロとする新たな給付制度を設けます。

  • OTC類似薬の追加負担:一方で、ドラッグストアで購入可能な薬と似た効能の処方薬(OTC類似薬)については、患者に追加負担を求める仕組みを構築します。2027年3月の開始が想定されています。


3. 世代間格差の是正:現役世代の保険料は20年で月2万円増加

みずほリサーチ&テクノロジーズの推計によると、40代〜60代の現役世代の社会保険料負担は、この20年間で1世帯あたり月額約2万円も増加しています。これに対し、70代の増加はわずか6,400円程度に留まっています。政府はこの「現役世代への偏り」を解消し、社会保障の持続可能性を維持するために、痛みを伴う改革に踏み切らざるを得ない状況にあります。


4. 野党の動向と「3割負担」への議論

衆院選で躍進した「チームみらい」や「日本維新の会」は、高齢者の窓口負担を原則3割に引き上げるべきだと主張しています。自民党内でも、2026年末にかけて3割負担の対象拡大を検討する見通しであり、今後さらなる負担増の議論が加速することは避けられません。


3.社労士が教える「実務上の注意点」と「企業の対策」

この改正は、企業の給与計算や福利厚生、従業員の健康管理に直結します。社労士として、特に以下の5点に注意を促します。

1. 高額療養費の上限変更に伴う「手取り額」の減少

上限額が上がるということは、高額な医療を受けた際の従業員の自己負担が増えることを意味します。特に年収650万円前後のリーダー層は、38%の引き上げにより、万が一の際のキャッシュフローが数十万円単位で変わる可能性があります。


2. 傷病手当金との連動

長期療養が必要な従業員に対し、会社は「傷病手当金」の申請をサポートします。しかし、高額療養費の上限が上がることで、手当金を受け取ってもなお医療費の支払いに窮するケースが出てくるかもしれません。企業は、健保組合が独自に行う「付加給付」の内容を改めて把握し、従業員に周知する必要があります。


3. 「OTC類似薬」の自己負担増とセルフメディケーションの推進

2027年3月から始まる予定のOTC類似薬の追加負担は、日々の通院コストに影響します。企業としては、従業員に対して「セルフメディケーション税制」の活用や、ジェネリック医薬品への切り替えを推奨することで、従業員の家計を守る啓発活動が求められます。


4. 証券会社・金融機関へのオンライン提出義務化の影響

金融所得を後期高齢者医療制度に反映させるため、金融機関には法定調書のオンライン提出が義務付けられます。これは個人情報保護やデータ管理の観点から大きな変化です。経営層の皆様には、自身の資産管理がどのように社会保険料に反映されるか、最新の税制・社会保険制度の理解が不可欠です。


5. 人事評価や福利厚生としての「医療費補助」の検討

今後、公的な医療安全網(高額療養費)が縮小していく中で、企業が独自に提供する医療保険(団体保険)や、医療費補助制度の重要性が増します。優秀な人材を確保し続けるためには、「会社が従業員の健康リスクをどこまでカバーするか」という視点を人事評価や福利厚生に組み込むことが、2026年以降の重要な経営課題となります。


変革の時代を生き抜くために

2026年の健康保険法改正は、戦後の社会保障制度が抱えてきた「年齢による区分」から、「能力に応じた負担」へのパラダイムシフトです。政府は少子化対策の財源として、2026年度から「子育て支援金」を医療保険料に上乗せして徴収し、2028年度には年1兆円を集める計画です。この追加負担を、高額療養費の見直しや高齢者負担の適正化でどこまで相殺できるか、その成否が日本経済の未来を左右します。


私共「坂の上社労士事務所」は、こうした複雑な制度変更をいち早くキャッチし、企業の皆様が迷いなく経営に専念できるよう、給与計算から就業規則の改定、さらには最新のITツール(マネーフォワード等)を活用した業務効率化まで、全力でサポートいたします。

これからの時代、社会保険の知識は「守り」ではなく、企業の競争力を高める「攻め」の武器です。お困りごとは、ぜひ当事務所までご相談ください。


坂の上社労士事務所/給与計算・就業規則・助成金・社会保険・労務相談・人事評価(東京都千代田区神田三崎町/全国対応)

マネーフォワード公認プラチナメンバー/マネーフォワード給与・勤怠 代表 特定社会保険労務士 前田力也

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