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【社労士解説】令和8年(2026年)10月施行「国民年金第1号被保険者の育児休業期間免除」の全貌~フリーランス・自営業者の子育て支援は新たなステージへ~

  • 執筆者の写真: 坂の上社労士事務所
    坂の上社労士事務所
  • 1 日前
  • 読了時間: 7分
育児休業 国民年金

多様な働き方が広がる現代において、長らく課題とされてきた「自営業やフリーランスと、会社員との社会保障格差」に、ついに大きなメスが入ります。2026年(令和8年)10月1日より、「国民年金第1号被保険者の育児期間における保険料免除措置」が施行されます。  

これまで、育児休業制度が整備されている会社員(被用者)とは異なり、自営業者やフリーランスには育児期間中の明確な支援措置が乏しい実態がありました。本改正は、この深刻な格差を是正し、社会全体で子育て世代を支援するための画期的な一歩となります。  

本記事では、制度導入に向けた準備を進める企業・個人の皆様へ向けて、社会保険労務士の視点から「制度の全容」「法改正の背景と政府の狙い」「実務上の留意点と今後の動向」という3つの視点で、深く、そしてわかりやすく解説いたします。


1.新制度の全容と圧倒的なメリット(制度の対象・期間・効果)

まずは、新設される制度の具体的な内容を整理します。この制度は、一言で言えば「子育て期間中の国民年金保険料を免除し、かつ、将来の年金額は『全額納付した』ものとして保障する」という非常に強力な支援策です。  

対象者と経済的メリット

  • 対象者

    子(実子・養子)を養育する国民年金第1号被保険者(自営業者、農業者、フリーランス、アルバイト、無職など)。  

  • 対象となる親

    母親だけでなく、父親(実父・養父母)も対象となります。  

  • 経済的効果

    月額17,920円(令和8年度予定額)の保険料が免除されます。  

  • 年金への反映

    免除された期間は、将来の基礎年金額を計算する際、各月が「保険料納付済期間」として算入され、満額が保障されます。  


免除対象期間の考え方(父親と母親の違い)

免除の対象期間は、原則として「子を養育することになった日から、子が1歳になる(1歳の誕生日の前月)まで」です。しかし、すでに存在する「産前産後期間の免除制度」との兼ね合いで、父親と母親で期間のカウント方法が異なります。  

対象者

産前産後免除期間

新設:育児期間免除の対象期間

合計の免除期間の目安

母親(実母)

出産予定月または出産月の前月から4ヶ月間   

産前産後期間に続く9ヶ月間   

最大13ヶ月間

父親・養父母

なし

出生日(または養子となった日)から最大12ヶ月間   

最大12ヶ月間

母親の場合は、既存の「産前産後免除(4ヶ月)」に引き続いて、今回の「育児期間免除(9ヶ月)」が適用されることで、子が1歳になるまで切れ目のない支援が実現します。なお、すでに保険料を前納している場合でも、対象期間の保険料は還付されるため安心です。  


2.法改正の経緯と政府の狙い(なぜ「所得要件」がないのか)

今回の制度設計において、最も特筆すべきであり、政府の強いメッセージが込められているのが「所得要件や休業要件を一切設けない」という点です。  

会社員(第2号被保険者)との決定的な違い

会社員の場合、育児休業を取得して「休業している(賃金が低下している)」ことが保険料免除等の前提となります。しかし、自営業やフリーランス等の第1号被保険者は、育児期間中であっても「完全に休業する」「仕事を減らして少しだけ働く」など、就業の有無や所得の状況が極めて多様です。  

多様な働き方を肯定する制度設計

政府は、この多様な実態を正確に踏まえ、「休んでいなければ免除しない」「所得が減っていなければ免除しない」といった従来の硬直的な要件を撤廃しました。所得の減少が生じない者も含め、第1号被保険者全体に対する「育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置」として位置づけたのです。  

これは、フリーランスという働き方が社会インフラとして定着する中で、国が「働き方にかかわらず、子育て世代を社会全体で支える」という方針を明確にした歴史的な転換点と言えます。なお、この財源には「子ども・子育て支援金」が充てられることになっています。

  

3.実務上の留意点と今後の見通し(専門家の視点)

どんなに優れた制度でも、適切に運用されなければ意味がありません。施行に向けた実務上の重要ポイントと、社会保険労務士としての今後の見通しを解説します。

1.申請手続きのDX化と「申請忘れ」の防止

本免除措置を受けるためには、対象者が自ら市町村長等へ届出(申請)を行う必要があります。ここで大きな役割を果たすのが電子申請(マイナポータル)です。  

  • スマホで完結

    マイナポータルを利用すれば、24時間365日、基本的に添付書類なしで電子申請が可能です。  

  • 紙の申請の場合

    「マイナンバーカード」の写しや、「産前産後免除該当届/育児免除該当届」などの提出が必要になります。出産前に届出する場合は母子健康手帳が、出産後の場合は出生証明書等(自治体で確認できない場合や別世帯の場合)が必要です。  

  • 手続きの簡略化

    新たな省令案により、仮に「産前産後期間免除」の届出を忘れていた母親が「育児期間免除」の届出を行った場合、産前産後期間免除の届出を省略できる規定が整備される予定です。これは行政側の事務負担軽減と、対象者の手続き漏れを救済する優れた措置です。  

2.状況変更時の厳格な届出義務

制度の恩恵が大きい分、要件を満たさなくなった場合のルールも厳密に定められています。以下のような事由が発生した場合は、速やかに届出を行わなければなりません。  

  • 第1号被保険者が、対象となる子と同居しなくなったとき   

  • 子が養子である場合において、離縁や養子縁組の取消しがあったとき   

  • 特別養子縁組の成立に至らず、家事審判事件が終了したとき、または児童福祉法の措置が解除されたとき   

これらは、制度の適正な運用を担保するための重要な規定です。単なる「別居」であっても免除の対象外となる可能性があるため、実務上は対象者への周知徹底が不可欠です。

3.付加保険料に関する取り扱い

国民年金には、将来の受給額を増やすための「付加保険料」という制度があります。育児期間中の基本の保険料(17,920円)は免除されますが、本人の希望により付加保険料のみを引き続き納付することは可能です。老後の資産形成を止めないための重要な選択肢となります。  


今後の動向と社会へのインパクト

2026年10月の施行に向け、システム改修や自治体での運用フローの整備が急ピッチで進められます。規則の公布は令和8年(2026年)7月下旬が予定されています。  

この制度は単なる「年金保険料の免除」にとどまりません。これまで「子どもを持つなら、育休・社会保険が手厚い会社員にならなければ不利だ」という社会の暗黙の了解がありました。しかし、今回の改正により、フリーランス・自営業者が安心して子育てに踏み切れる強力なセーフティネットが構築されます。ひいては、日本社会における「働き方の多様性」と「少子化対策」を両輪で推進する起爆剤となるでしょう。


令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります!(日本年金機構)


国民年金法施行規則の一部を改正する省令案について(概要)(厚生労働省)


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